「メアリー&マックス」:紐育中年男の手紙
監督:アダム・エリオット
声の出演:トニ・コレット、フィリップ・シーモア・ホフマン
オーストラリア2008年
友情、障害、オーストラリア、実話……と言えば『英国王のスピーチ』 いえいえそれだけじゃあない。このクレイアニメ作品もそのまま当てはまっちゃうのであった。
しかしながら方向は正反対なのである
ひょんなことから、オーストラリアはメルボルンに住む小学生の女の子とニューヨークの中年男が文通を始める。
少女メアリーはいじめられっ子で母親はアル中、父親は家庭から逃避。中年男マックスは肥満症でアパートにひきこもってアニメ番組を見るのが大好き。二人の共通点は孤独だ。
二人の手紙のやり取りはユーモラスである。そのうちに、マックスは単にヲタクな中年男なのではなく発達障害であることが分かってくる。
メアリーは彼の長~い手紙に勇気づけられるうち、勉強していつか彼の病気を治したいと思うようになる。
『英国王~』は障害をなんとか治そうとする話だった。ところが、驚いたことにこちらは治らなくて結構というか、治さないでくれという話なのだ。もちろん、公の場に出る王様とアパート暮らしの男じゃ立場が違い過ぎだが……。とにかくマックスは自分が「正常」になる必要はないと思っている。
二人の間に齟齬が起こり、文通も友情も途絶えてしまう。
監督は過去にオスカーの短編アニメ部門を受賞しているとのこと。これは長編第一作らしい。クレイアニメによって描かれる世界は極めて「変」\(◎o◎)/!の一言。ヘタウマのマンガをそのままアニメ化したようだ。登場する金魚やら鳥やら猫など、なんとなく谷岡ヤスジを連想した。
メルボルンのメアリーの世界はセピア色で、一方マックスの世界は完全モノクロ。唯一の例外は頭につけてる花(?)と舌が真っ赤である。
よくもこんな世界を作り上げたものだ。
物語はナンセンスな笑いと共に非常に感動的でもあるのだが、いかんせんアニメーションがあまりにも不気味で毒気に満ちているのに加えて、全編にわたりナレーションが覆い尽くすという過剰ぶり。見てて(聞いてて)その過剰さにくたびれ果ててしまった。
そのせいか、映画館内はため息が時折もれていた。私の隣のおにーさんなんか10分おきにため息ついてたぞ。なんで(?_?)
ということで、私もマックスにならって市長に苦情の手紙を書こう。「前略、この映画はナレーションが多過ぎます。映像で描写するだけではいけないのでしょうか。何とかしてください--」
ところで、冒頭に監督からの震災についての遠回しなメッセージが付けられていて、はて?親日家なのかしらん--と思ったら、見ているうちに理由が分かった。なるほどね……
不気味点:8点
健康点:5点
【関連リンク】
http://umikarahajimaru.at.webry.info/201105/article_2.html
監督について
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