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2011年7月 9日 (土)

「能楽堂でバロックオペラ」:死者のすり足

110709
ペルゴレージ「リヴィエッタとトラッコロ」
シャルパンティエ「アクテオン」
企画・演出:伊香修吾
音楽監督:桐山健志
会場:セルリアンタワー能楽堂
2011年6月18・24・25・26日

渋谷に向かうと山手線が止まっている。それで湘南新宿ラインに乗ったら、どの改札で出るのか混乱(@_@;) セルリアンタワーではビルの入口がよく分からず、能楽堂への行き方も不明。分かりやすい看板でも出してくれ~annoy
ようやく開演時間ギリギリにたどり着いたという次第。なもんで、事前に解説タイムがあったらしいが全く聞けなかった。

そして、汗をかきかき(~_~;)着席してからようやく、私は能・狂言をこれまで生で一度も見たことがないことに初めて思い至ったのであった……。
遠い外国の古典作品に親しみながら、自国の古典芸能には全く興味なし。どうか非国民と呼んでチョーダイ♪ヽ(^^ヽ)♪

「能・狂言のスタイルでバロックオペラを」とサブタイトルが付いたこの企画、まず最初に演じられたのは「狂言風オペラ」と銘打たれた「リヴィエッタとトラッコロ」である。
器楽演奏者は客席の一部をつぶして中央前方に位置し、チェンバロもそこに置いてある。編成はヴァイオリン3人、オーボエ1人、通奏低音はチェロとチェンバロだ。
さて、どうやるのかと思っていたら、驚いたことに衣装や所作は完全に狂言のまま演じながら歌手が歌っちゃうのであった。

兄をだました詐欺師をとっ捕まえようと男装して待ち構えるリヴィエッタにソプラノの臼木あい。衣装を着けて歌いながら動き回るのも大変だが、長時間正座してる場面もあって私だったら立ち上がれないわい(←自分を引き合いに出すなdash)なんて思ってしまった。
一方、女装して善人から金をふんだくろうと企むトラッコロは、善竹富太郎という人。バリトンかしらん、でも発声がオペラ歌手っぽくないよなあと思ってたら、なんと本職の狂言師であった(+o+) 音大のミュージカル学科で教えてるというからなるほど「歌う狂言師」なのね。

で、また男女の追いつ追われつの関係からバカップル誕生へと至るという、この軽~いspaコミカルな内容がまた狂言という形式にピッタリだったのには感心した。

30分の休憩を挟んで、後半は成立年代を半世紀遡る「アクテオン」であった。
内容はギリシア神話の一エピソード、ジュピターがエウロペと浮気していると知った妻ジュノーが、その血を引く若者アクテオンに復讐して恨みをはらすという物語だ。
祖父の妹の不倫のとばっちりを受けて、王子は狩の最中にうっかり女神ディアナが水浴びしている所を目撃してしまい、姿を鹿に変えられて自らの猟犬たちに食い殺される。(一部始終を舞台の一角でジュノーは眺めている)

ここでは、4人の歌手たちは紋付袴姿で脇(地謡座という場所らしい)で座ったまま歌い、舞台に出てくることはない(出入りも切戸口という小さな戸口から)。中心となる演者3人は面をつけ、狩猟仲間や猟犬を子方(子役)がやるという、音楽と演技の完全分離である。
しかし、これも歌手にとっては大変だったかも。演奏会方式でやるのとはわけが違う。全く身振りなどの一切の身体表現が封じられた状態なのだから。声一つが全て、ゴマカシはきかないのであるよ。
とはいえ、野々下由香里、波多野睦美、上杉清仁、根岸一郎という顔ぶれであるゆえ、そんな心配は無用だろう。

シャルパンティエの歌や器楽は流麗で饒舌だが、一方で演者の動きは極めて抑制されたものである。
鹿に変えられた嘆きが切々と歌われるのを背景に、面を付け替え角をはやしてアクテオンは再登場し、水面に映った自らの姿をじっと注視する。
互いに融和するのではなく、異なった立場からそれぞれ一切退くことなく対峙するガチンコ勝負のようであった。その間に生ずる激しい異化と同化impact
一回だけ能管が登場して演奏する場面でもそれは同じだった。互いのスタイルを全く崩すことなく、そのままに弦やチェンバロと「共演」していたのである。

最後に器楽が終章を演奏し終わると、会場は「無音」となった。「沈黙」ではなくまさしく「無音」というのがふさわしい。その中を死者となったアクテオンが退場していく--。

もっとも……私はどうも一番大切なところを見逃してしまったようだ。なぜかというと、前半の狂言でもそうだったのだが、舞台上で演者が重要な演技をする立ち位置があるようなのだが、私の座っている席からだとちょうど柱の陰になって見えなかったのである。これについてはガックリだー(+o+)
ただし、楽器奏者からはこれまでに体験したことがないほどに近い位置。思わず、後ろから楽譜覗き込んで歌っちゃったりしてnotes(迷惑なヤツ^^;)

歌手は特に女性陣が力演。紋付袴で髪を後ろに束ねていると、野々下さんなんかタダでさえ細っこいから、遠目にはりりしい少年のように見えましたのよheart01(*^o^*)ポッ
彼女には本領発揮のおフランスものゆえ、清廉にして厳格なディアナをキリリと好演。一方、ジュノーというのはいくら亭主が浮気したからって、大して関係もない若者にまで八つ当たりをするのはどうも大人げないと思ってしまうのが普通だろう。しかし、波多野さんがドトーのような怒りと憎悪をもって歌えば、女神としての矜持を傷つけられたゆえと大いに納得し、思わず「キャーshockお許し下せえ」とひれ伏してしまうのであった。


日本の古典芸能とバロック音楽のコラボというのは、数は多くないがこれまでも幾つかあって、ほとんどは和洋折衷の妥協の産物というか、「とりあえずやってみました」感が大きくて、今回もそれほど期待していたわけではなかった。
がしかし、その予想を大きく裏切るものであったといえよう。どちらかがバランスを崩せば相手の表現スタイルの本来持つパワーに吸収されてしまう--正しくガチンコ対決dangerだったのである。

ああそれなのに(@_@;)私の見た回は客席が六分ぐらいの入りだったのは残念であ~る(満席だった回もあったらしいが)。
でも「オペラ@能楽堂シリーズVol.1」となっているからには、また次があると考えてよろしいんすよね。期待してまーす(^_^)/~


【関連リンク】
《くまった日記》
桐山さんのブログより。会場はこんな感じでしたな。


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