「エッセンシャル・キリング」:負のアクション・ヒーロー
監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:ヴィンセント・ギャロ
ポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー2010年
逃げろ逃げろ逃げろ...((((((((( ((;-o-)
ひたすら一人の男が逃げる様子を描いた映画である。なんとそれだけでほぼ全編が説明できてしまうという……。
他の部分はほとんどないと言っていい。そもそも台詞が極端に少ない。ギャロ演じる主人公に至っては一言もしゃべってないようだ。
冒頭、アフガニスタンの荒涼とした岩山で、現地の人間らしき男が逃げ回る。米軍に捕えられて拷問された後に、悪名高きグァンタナモ米軍基地に送られるかと思いきや、着いた先は雪の中。はて、ここは東欧か北欧か(?_?)
そして今度は雪に覆われた森林地帯を逃げ回る羽目になる。時折、幻想のように妻子らしき人の姿が浮かび、そしてコーランの一節が聞こえるだけだ。
見ていて、この男は逃走し続けてどうするのだろうと思ってしまった。言葉も通じぬ遠い異国の地で、家族の元に戻れる当てもなくどうする気なのか。
監督は『ランボー』(と『サクリファイス』)を引き合いに出しているらしい。確かに、名も知らぬ地で殺人もいとわず逃げ続ける男の姿は、ハリウッド映画を裏返したアクション・ヒーローとでも言うべきものである。やってること自体はほとんど同じだといえよう。しかし、誰も彼を褒めたたえてくれる者はいない。
雪に覆われた山河の光景や、ラストの白馬の姿は極めて印象的である。ただ、前作の『アンナと過ごした4日間』でも「川を流れる牛」と同様、そういう映像の使い方を「あざとい」と感じる人がいるかも知れない。
いずれにしろインパクトあり強烈な作品なのは確か。不良ジイサン監督にまたもしてやられたという印象だ。
V・ギャロはヴェネチア映画祭で主演男優賞を獲得したそうだが、演技がどうのこうのというより文字通り「ごくろうさん<(_ _)>」賞ということだろう。
監督不良度:9点
アクション非情度:9点
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