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2011年9月25日 (日)

「ゴーストライター」:影のない男、影しかない男

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監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー
フランス・ドイツ・イギリス2010年

長らく公開を待たされたポランスキーの新作……じゃなくて、待っている間にもう次の作品が完成しちゃったのだから旧作になってしまった。
どうしてこれだけ日本公開が遅れたのか? ベルリン映画祭で監督賞を取り、ユアン・マクレガーやピアース・ブロスナンが出演となれば、映画マニアにも一般客にもウケはいいはずである。
スイスの映画祭で監督が拘留されちゃったからかpaper しかし、彼の犯した事件についてはとっくに判決が出ていて、その間も作品は公開されていたのだから、今さら逃げてた本人が捕まったからといって何が違うのかよく分からない。
大人の事情というヤツだろうかなっと(?_?)

ストーリーだけ見ると政治サスペンスのように思えるが、監督の主眼はそこにはないようである。
引退した元・英国首相--となれば、モデルはブレアだろうが、コワそうな奥さんがいるのはクリントンみたいだし、演劇をやってたというとレーガンを思い出させる。戦争捕虜を云々というのはブッシュのようだ。
P・ブロスナンがこの外見だけ明快で中身は不明emptyという政治家を演じていて、これがまたハマリ役というしかない。

この元首相の自叙伝のゴーストライターとなるのがE・マクレガーで、前任者は謎の死を遂げていて急きょ代役となり、米国にある別荘へ呼ばれて行く。

ミステリの部分は解明されてしまえば、そんなもんかという印象だ。観客が眠くなったりしないように(?)という配慮からか、後半に配置された車の追跡劇も、主人公の正体分かってんなら先回りしとけよとか、カーナビって目的地のインプット見られないのか(私は車持ってないのでよく分からない)とか、今イチ不明瞭である。

しかし一方で、別荘のある島の荒涼とした風景、悪天候の元で打ち寄せる波、吹き付ける風雨--そして別荘がまたモダン建築の極みみたいなコンクリート打ちっぱなし風で、周囲の環境すべてが落ち着かない。壁面にはゲルハルト・リヒターのような、沈鬱な大型の絵画が幾つもかかっているし、大きなガラス窓も眺めがいいというよりは、不安定な印象だ。
そうしたいずれもが、強迫的に不安感をあおるように観る者に押し寄せてくるのである。この窓越しの風景や悪天候は合成か? よく出来ている。

しかも、見ていて私は気づかなかったのだが、主人公は名前が明らかにされてないのだった。
ニッカリ笑顔の似合う影なき政治家の、陰のライターとなればこの顛末は必然であったか。

論理的な謎の部分は今イチでも、このどんよりとした暗いイメージの塊は秀逸だろう。また、マクレガーやブロスナン以外の助演陣も役にはまっていて、この雰囲気を盛り立てている。
古めかしいサスペンス映画風をなぞったような音楽も面白い。

都内では小さい映画館で二か所ぐらいでしかやってないせいか。満員御礼full 10分前に行ったら入れなかった(+_+)


論理点:6点
イメージ点:9点

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