「スペインの光の中のビクトリア」:日本人の知らないビクトリア
日本ルネサンス音楽普及協会第45回例会・没後400年記念演奏会
演奏:杉本ゆり&ラウデージ東京
会場:東京山手教会
2011年8月27日
この日はビクトリアの命日ということで、企画されたコンサートらしい。
ビクトリアというと先日聞いたコンサートのように、アカペラで美しい教会音楽を楽しむという印象であるが、この日は甚だしく違った。
スペインという土地の文脈の中でビクトリアの音楽を聴きなおしてみるというものである。従って彼の作品自体は全体の2割以下?ぐらいしか演奏されなかった。こいつはちょっと意外である。
スペインは長いこと他宗教に寛容なイスラムの支配下にあり、当地の教会は独自の典礼を発達させてきたが、イスラム勢力が去った後はローマ教会が統一された形式の典礼を押し付けてきたとのことである。しかし、ローマの眼から隠れてその後もと当地の典礼は生き残ってきたそうで、ビクトリアはスペインに帰国してからは愛国的と言っていいような内容の聖歌を作ったという。
コンサートはサンチャゴ・デ・コンポステラの写本、スペイン神秘主義、マリア信仰……といったキーワードでスペインの過去、同時代の曲とビクトリアの作品を並列的に鑑賞。アカペラあり、器楽曲ありといったかなり広範囲なものだった。
合唱は一声部3~4人、器楽は最大5人という編成である。
祖国との深い関わりという点から浮かび上がってくる新しいビクトリア像はかなり新鮮で驚きであった。ただ、歌詞の内容を見ると確かにスペインの守護神ヤコブや郷土のことを多く歌っているが、曲だけ聞いていると他の曲との関連性はそれほど目立たないような印象を受けてしまった(シロート耳には)。
とはいえ、この作曲家の知られざる一面を教えてくれたコンサートであった。
指揮(と構成も?)を手がけた杉本ゆりは曲間に詳しい解説も交えて熱演だった。
会場はかつてジァン・ジァンが地下にあったのでも有名な教会だが、外側からは想像できないほどに広くて驚いた。数百人は入る中規模ホール並みである。ただ、入口直ぐに恐ろしく急勾配の階段があってとてもバリアフリーとは言えない。
地味なプログラムのはずだが、その会場がほぼ満員だったのでこれも驚き(!o!) 日本ルネサンス音楽普及協会ってそんなに会員多いのか。
終わって外に出ると目の前に渋谷公園通りのドトーのような喧騒が……。全くの別世界であった。
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コメント
コンサートにお越しくださりありがとうございました。企画・監修の杉本ゆりです。あの教会は、年配者にはつらいのがネックですね。山手教会の牧師と実家ぐるみで親しいということもあり、今回泣きついて会場をお借りしました。夏にルネサンス楽器に負担の少ない会場がなかなかなくて。次回はバリアフリーです。よかったらまたお越しください。
投稿: 杉本ゆり | 2011年9月 7日 (水) 11時32分
わざわざコメントありがとうございます。
あの会場はそういう経緯があったんですね。
また次回、都合がつけばうかがいたいと思います。
投稿: さわやか革命 | 2011年9月 9日 (金) 06時15分