「ゴモラ」:ロマンなき戦い
監督:マッテオ・ガローネ
出演:トニ・セルヴィッロ
イタリア2008年
どうもギャングとかマフィアものは好きではない。そのため『ゴッドファーザー』や『スカーフェイス』なんて名作として名高い作品だって見てないのだ。「映画ファンの風上にも置けねえ(`^´)」という人は、どうか風下に置いてチョーダイ(^人^;)
それなのになんでこれを見に行く気になったかというと、予告を見て面白そうだったからだ。
原作はイタリアでベストセラーになったノンフィクションである。カモッラというナポリを本拠とする巨大な犯罪組織を取材しており、著者は生命を狙われて海外へ逃亡を余儀なくされたといういわくつきのもんだ。
映画もドキュメンタリー仕立てで、五つのエピソードが並行して描かれる。
殺人は日常茶飯、女子どもであろうと平然と殺す。一見、普通の企業のような事業もやるが、そのやり口は汚く不正である。
一方、殺される側も同情できないヤツばかりだ。
この状況は「大地に根ざした悪」としか言いようがない。何物にも揺らぐことのない、まさに原初の昔から存在したような悪である。
少しでも良心のある人間はそこから退くしかない。この映画の中にも何人かそういう人物が登場するが、闘うわけではない。ただ、可能なのはその場から退場するだけだ。
ここにあるのは善と悪ではない。悪と弱者なのである。
かように、他のギャング映画にあるような「悪」にまつわるロマンティシズムを粉砕する。登場するチンピラの若僧二人が『スカーフェイス』に憧れてそのセリフをやたら口走るのは、きわめて象徴的だ。
だが、この映画の中の登場人物に憧れる--どころか、共感するヤツは世界中のどこにもいないだろう。
もっとも、完全ドキュメンタリー風なため劇的な盛り上がりなんかはないので(オマケに長い)、眠気虫が出現して沈没しそうになってしまった(^^ゞ
だからという訳ではないが、見ている最中は長~い悪夢のよう。逆に、見終わった後にジワジワ効いてくる。
それにしても描かれる都市の荒涼としているのに驚かされた。セリフを消して見てればとてもイタリアとは思えない。ラテンアメリカあたりの貧しい地域と言われても分からないだろう。
舞台となる集合住宅はさすがイタリアいう感じのモダンなデザインだが、老朽化して荒れ果てている。
あとカモッラが「年金」を配っているというのにもビックリ。国家と犯罪組織は類似しているというエンツェンスベルガー(だっけ?)の説を思い出してしまったぞ
カンヌで賞を取ったのに、4年も経って今頃日本で公開されたのはなぜか(?_?) 今の状況が似ているからだろうか。それとも、汚染物質処理(*_*;の話が出てくるからか。
いずれにしても悪は栄える……。
仁義度:0点
非情度:10点
| 固定リンク | 0
コメント
2週間ほど前にTV放映されたのを観ました。
ドキュメンタリー風映像で、役者も普通の人っぽい感じなので、仁義なき悪徳の栄えの凄まじさにリアリティありますね。
詩的な美しさが全く見られないすさんだ風景と、登場人物が皆、地中海の反対側から来た人たちとしか思えない風貌で、しゃべる言葉も訛が強くてイタリア語とは聞こえないので、ここって本当にイタリア?と疑ってしまうほど。ラテン・アメリカかマグレブが舞台みたいで。
同じ頃にTVでゴッド・ファーザー・パート3見たのですが、コレに比べるとまあ、なんとロマンチックな映画、と思ってしまいました。
投稿: レイネ | 2011年12月 5日 (月) 05時13分
出演者の中には塀の中にいた人とか、なんと指名手配中の人もいたとか……。
原作者が逃走中なのに、よく無事に映画を製作できたもんです。もしかして、原作の方がもっとスゴイ?
「ゴッドファーザー3」は確か「作られなければよかった続編」の投票で一位二位を常に争う作品らしいですよ(^o^;)
投稿: さわやか革命 | 2011年12月 8日 (木) 07時11分