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2012年2月25日 (土)

バロック・オペラ ラモー「プラテー」:カエルの嫁はカエル

120225
プロローグと三幕のバレエ・ブフォン
演出・振付ほか:錦織佳子
会場:渋谷区文化センター大和田 さくらホール
2012年2月8日・9日

これはジョイ・バレエステューディオという団体がプロデュースする公演とのことである。最初チケットを発売した時に、歌手はともかく器楽の方のメンバーが全く名前が出ていなかったのでどうしようかと思ったが、とにかくチケットを買ってみることにした。

この作品は1745年にルイ15世の息子の結婚式のお祝いに上演され、その後オペラ座でもやったとのことだ。45年ヴァージョンは日本初演らしい。
内容はお祝いごとにふさわしい能天気な喜劇で、一杯機嫌で見るのにちょうど良いようなストーリーだ。

ギリシャ神話の神やら精霊やらが登場し、農民たちをバックに人間に教訓を与え神々を風刺する芝居を作ろうと歌うのがプロローグ。
続いて全三幕で、最高神ジュピテルを妻ジュノンのコワ~い嫉妬から守るための策略が描かれる。策謀したのはギリシャ王のシテロンとジュピテルの使者メルキュール。
シテロンに一方的にラブコールを送る沼の精霊の女王プラテーを利用しようというのだ。彼女は醜くて滑稽なのだが、自惚れが強い。ジュピテルが結婚を望んでると騙すと、コロッと信じてしまうのであった……。

プラテーはあらかじめお笑い担当な役どころに設定され、女王にもかかわらずテノール歌手が歌う。いつも妖精やカエルをお供に連れては騒がしく登場する。子役のカエルがカワユイ
そうして他の精霊やら神様が入り乱れて出現してはドタバタ劇を展開。言葉遊びみたいな歌もあるし、にぎやかなもんである。
バレエ・スタジオが主催ということで、もっとダンスの場面が多いかと予想していたら、意外にも原点に忠実で正統派のバロック・オペラだった。踊りの場面はバロック・ダンスにするか迷ったらしいが、クラシック・バレエで振付けてあった。

ただ、ドタバタな喜劇として宴席にはいいかも知れないが、ストーリー的には結婚詐欺みたいな話なんで、正直、結婚式にはどうよ(-"-)という気がした。新郎新婦はどういう気分で見てたのかね。

歌手については、主役プラテーの武井基次という人がやけに歌も踊りも達者だのうと感心して見てたら、ミュージカルの「レ・ミゼラブル」に出演してるような歌手らしい。なるほど……。
他はオペラをやっているような人がほとんどだが、表現力はあれど歌の水準が今イチな人や、歌も演技も無念な人など様々だった。

大きなセットや、群舞やコーラスも登場してかなり大規模の公演だった。客席は満員で、バレエの関係者と武井氏のファンが中心だったもよう。古楽ファンはあまりいなかったようだ。
こういう珍しい演目が見られるのはありがたい。また是非よろしくお願いしまーす。

事前には知らなかった器楽のメンバーは、音楽監督(と打楽器も)は武久源造。チェンバロは野澤知子だった。他の編成はヴァイオリン2、ヴィオラ2、トラヴェルソ2、オーボエ・チェロ・コントラバスが各1。コンミスは阿部まりこ、チェロは懸田貴嗣が入っていた。こちらも本格的にヴェルサイユ・ピッチでの演奏だった。
全体的に表情豊かで、特にプラテーの演技に伴う滑稽なサウンドも忌憚なく表現して楽しませてくれた。ヴァイオリン・パートはご苦労さんである。

問題は会場の造りで、ステージの高さが低い所に、最前部の椅子を外してロープを張ってピットを急ごしらえしていた。そのため前方の座席は奏者と全く同じ高さで見る羽目になって、ステージ上が奏者に隠れて見えない部分があったようだ。
コントラバスが邪魔になって、字幕が全く見えないという人の話も漏れ聞こえてきたし--。音楽専用ではない(多分)ホールなので、ここら辺の使い方は難しい。

あと、上演中非常に暑くて汗だく(-_-;)になってしまった。寒い日だったのでサービスのつもりかね。なんとかしてくれい。


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コメント

あ!ご覧になられたのですね。
この公演、確かに事前情報が少なすぎましたよね・・
客席はバレエの生徒さん(子供)で一杯なのではないか・・と想像してしまいました。

話は違いますが・・「ロデリンダ」。
私もベルタリードってどうなのよ?って思いました(笑)
耳で聴いていただけだと結構カッコイイのかと思ったのですが・・

投稿: アルチーナ | 2012年2月27日 (月) 13時41分

客席は関係者と思われる中高年齢層と若い女性がほとんどでした。夜の回のせいか子どもはあまりいなかったですね。

「ロデリンダ」の王様は……ある意味、王様らしいと言えば王様らしいかも。

投稿: さわやか革命 | 2012年2月29日 (水) 07時02分

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