「アニマル・キングダム」:窮鼠の行く末
監督:デヴィッド・ミショッド
出演:ジェームズ・フレッシュヴィル
オーストラリア2010年
オーストラリア産のマイナーな犯罪映画?--ではあるが、昨年のアカデミー賞助演女優賞にノミネートされて作品自体も評判になった。
予告や事前の情報ではこんな印象→母親が急死したため突然、実家に戻る羽目になった高校生の若者。これまで付き合いを避けていた一族は実は、犯罪一家だった!
警察に協力を求められるも逡巡する若者。家族の絆か正義かどちらを選ぶのかっ
……しかし、実際に見てみたらかなり違っていた。
冒頭、若者がTVでクイズ番組を見ている。隣では母親が眠りこけている。
突然、二人の救命救急士が訪れ、母親に救命措置を取ろうとする。彼女はドラッグの過剰摂取で死にかけているのだった。だが、その間も若者はクイズ番組から目を離せない。
と、冒頭からこの映画は「まともな話ではない」宣言をしているのだった。
母親(主人公には祖母)と三人の息子、その友人から成る「一家」の犯罪行為自体はタイトルバックで簡単に示されるだけである。物語はその後に、警察から目を付けられ「仕事」もままならない状況から始まる。
一方、警察の悪辣振りにもビックリ(!o!) 日本の警察も(一部から)悪評高いが、いくらなんでもここまでやるかっ、てなもんである。どっちが犯罪者だか分かったもんじゃねえ~という状況だ。
唯一の例外はガイ・ピアース扮する刑事だけだ。
犯罪一家と警察という猛獣が死闘を続ける野生の王国では、それ以外の小動物なぞ蹴散らされて死ぬしかない。どちらのテリトリーに入ろうとそれは同じだ。
窮地に追い詰められた若者が取った道は……全く予想できなかった。よくよく考えれば、確かに生き延びるにはこれしかないという方法だろうが。とはいえ、その後は?
モラルもなく、仁義もなく、善悪もなく、日常と化した暴力の連鎖がストレートに描かれる、強烈な一編である。
ジャッキー・ウィーヴァー演じる祖母は、邪気なく邪気を発していて不気味。山岸凉子が昔の作中で母性をナメクジに例えていたが、そんな感じだ。
それにしてもガールフレンドのお父さん、いい人過ぎ~。ここまで来ると危険です。
客観点:8点
主観点:8点
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