「ピナ・バウシュ 夢の教室」:去る人来る人
監督:アン・リンセル
出演:ピナ・バウシュ
ドイツ2010年
ヴェンダースの『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』と併映する形で公開されたドキュメンタリー。過去にBS放送でやったことがあるらしいが、完全に見落としていたようだ。ヴェンダースの3D作品は敬遠して、こちらを見に行った。平日の午前中なのに、結構客が入っていたのは驚いた。
十か月間、週一回、シロートの十代の若者たち40人を集めてピナ作品の「コンタクトホーフ」を踊らせるというプロジェクトのドキュメンタリーである。
似たような趣向の作品は過去にサイモン・ラトルが指揮した「春の祭典」での『ベルリン・フィルと子どもたち』というのがある。ただし、主要な踊り手ではなく群舞に入っているような(中には全くやる気のない)子をそれぞれ取材して、どちらかというと教育問題寄りの作品だった。
こちらに登場するのは自ら応募してきて、ダンスはしたことがなくても演劇やラップなど一応自己表現をしようとする意欲のある若者たちだ(もっとも「学校の先生に勧められて来た」という子も^^;)。
だが、ピナ作品ったらバリバリの難解モダンなイメージではないですかっ(!o!) 大丈夫なんだろうか?と心配になるのは仕方がない。
そういう子たちの中の5~6人に焦点をあてて家族や自分のことをインタビューしている。が、中心になるのは練習場面だ。
男女の愛憎を描く作品ではあるが「彼氏、いるわよ~」な子から「恋愛てまだしたことないから分かんない。愛してるといったら家族かな、モジモジ」みたいな子まで様々である。
ピナ・バウシュが直接指導するわけではなく、教えるのは中年のベテラン女性ダンサー二人だ。基本的な動作から踊りの解釈まで根気強く指導していく。
ピナは何回か顔を見せるだけだ。ただし、本人が登場する時間は『Pina』より長いという噂である(^_^;)
印象深かったのは、女の子たち数人が並ぶシーンを踊るのを配役決めのために見ていて語った言葉だった。「ここは、昔オペラ座でオーディションを受けた経験を元に振付けたのよね」……そうか、彼女もかつて若々しい十代でオペラ座の舞台に立とうとするダンサーだったのか なんだか後のイメージから想像もできないが。意外といえば意外、当然と言えば当然ではある。
見ていて私も若者たちと同様、解釈困難な「コンタクトホーフ」に初歩から付き合って分かるような気になった(多分)。
だが、柔軟に素早く何事も吸収できるのは若者の特権である。オバハンオジサンではこうは行かぬよ( -o-) sigh...
ダンスファンに限らず、自己表現を志す若いモンにも推奨。
それにしてもピナ・バウシュの放つ鋭いオーラは迫力あり。長年付き合っているはずのダンサー二人からも彼女を前にした緊張感が伝わってきた。
若い者はまだ未来も元気もあってええのう度:8点
難解度:4点
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