「マージン・コール」:国滅びて山河なくローンあり
監督:J・C・チャンダー
出演:ケヴィン・スペイシー
米国2011年
*DVD
日本未公開作品。ネットのどこかで、リーマン・ショックを的確に描いていると褒めている文章を読んだのを、レンタル屋に並んでいるのを見て思い出して借りてみた。
ウォール街の投資銀行にリストラ請負会社の職員たちが入ってくる場面から始まる。銀行内でリスク管理を担当する部署ではその日、8割の社員が解雇された。
この時、ケヴィン・スペイシー扮する上司は陰鬱そうに涙目になっているが、それはリストラされた部下のためではなく、愛犬が死にかけているからである。
で、てっきり『カンパニー・メン』みたいな展開になるかと思ったらそうではなかった。そんな人間くさい話ではない。
一応、K・スペイシーの名がトップにクレジットされているが、実質的には彼が主役というわけでもなく、群像劇になっている。
クビにされた社員の資料から会社の危機が判明する。リスクを含んだ金融商品の損失額が会社の総資産を超えているというのだ。しかも、いつ火が燃え上がってもおかしくない状態である。これが発覚したら大騒動間違いなし。
早朝4時に開かれる会議に顔を揃える重役たち。迫りくる敵に取り囲まれもはや落城寸前といった風情だ。だが、主君ならぬ社長はここで恐るべき決断を下す。
これには驚いた。義理も人情もモラルもないとはこの事だ~
以前に見た『ゴモラ』ではイタリアのさびれた都市での犯罪組織の悪徳を描いていたが、こちらはニューヨーク、登場する人物は一流のスーツを来て高層ビルで働く高給取りだ。
しかし、やっている事は全く同じという恐ろしさ(@_@;)
もっとも、背景となっている時期は『ゴモラ』よりも前なんだよねえ。ということはこっちが本家(元祖?)か!
経済もので、色恋沙汰なしの一本勝負、しかも淡々とした群像劇となると味も素っ気もなさそうだが、そんなことはない。
社長のジェレミー・アイアンズ(生臭そうな雰囲気がイヤン(^v^))、係長(?)ポール・ベタニー、TVドラマでおなじみサイモン・ベーカー、お久しぶりなデミ・ムーア、朴訥としたスタンリー・トゥッチなど達者な役者を揃えている。いずれも「味」のある演技を見せていた。
また、映像も美しく、特に深夜から明け方までのニューヨークの様々な光景が素晴らしい。また、終始一貫して緊張感が画面から張りつめて伝わってくる。
結局、悪徳は栄えた。残るは悪を受け入れるか拒否して立ち去るか、だ。
そして冒頭の、部下ではなく愛犬に涙するという上司の非人間的に見える行為が、結末に至って実は人間性の発露に他ならなかったことが明らかになるのだった。
今年のアカデミー賞脚本賞にノミネート。
それにしても、登場する23歳若手社員の年収をざっと日本円で計算したら……二千万円ぐらい(>O<) 信じられん。
悪徳度:9点
社畜度:9点
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