「マラン・マレの肖像」:時空を超える師弟共演
演奏:ヴィーラント・クイケン、上村かおり、クリストフ・ルセ
会場:上野学園 石橋メモリアルホール
2012年5月20日
ステージ上の人数と豪華さは比例しない。
いや「豪華」というと、語弊があるだろうか。「贅沢」とでも言い換えるべきか。奏者は3人きりでも、実に万華鏡のように様々に楽しめた時だった。
タイトルにマレとはあるが、彼と関わりの深いフォルクレとサント・コロンブも演奏された。しかし、この公演の主眼は音楽史的なことよりもクイケンと上村かおり師弟の関係が曲に投影されていることだろう。それをアシストするはC・ルセである。
中盤で演奏された「ラ・ラポルテ」はサント・コロンブが弟子と共にガンバを弾くための曲で、1番のパートを弟子、2番のパートを師匠が担当したという。そしてこの日もその通りに演奏されたのであった。
これだけチェンバロが入らず、まるで二者の密やかな対話のような曲だった。
フォルクレの組曲についてはこれまで散々聞いてたパンドルフォの録音は、かなり早くて強烈な印象があった。彼らの演奏はそれとはまったく違って、ゆっくりと重厚なものである。
途中にチェンバロ用の編曲版でルセが2曲独奏したが、それもまた手のひらでゆるやかにいつくしみながら転がすような演奏だった。
前半はこのフォルクレで終了したが、それだけで十分な聞きごたえが感じられた。
実は個人的にルセの昨年のチャリティコンサートではあまりノレなかったのだが、今回は全く逆。見直しました(^^;ゞ
マレは曲集第5巻の中から。なんとこれを作曲した時の彼と今のクイケンは同じ年齢なのだという。まさにここではマレそのものとなったように弾いていた。
最後は時間をさかのぼって若い頃の曲集の第1巻から。「メリトン氏へのトンボー」が終わった時、会場は静まり返り拍手がなかなか起こらなかった。
まるで、その最後の余韻を手放したくないというように。まだ終わらせたくないというように……。
フライング・ブラボーなどというものとは対極の世界である。
アンコールは2曲、マレとクープランだった。
チェンバロの装飾は実に見事。黒と金を使った蒔絵のような日本趣味で統一されている。。鍵盤の横の下部に引き出しみたいな取っ手が付いてるんだけど、ただの飾りだよね。ホントに引き出しになってたら面白いけど(^○^) なんでも、曽根麻矢子女史が演奏に使っているものだそうな。
ザ・ロイヤルコンソートの公演でも同じなのだが、上村かおりがパンフに書いている文章は、不思議ちゃん系のような名文というか、非常に印象深い。ちょっと引用。
「わたしが初めてヴィーラントとこの曲を弾いたとき、わたしはとても若くて、ヴィーラントの音楽の深い森のなかできょとんとしていたような気がします。」
ところで開演時間ぎりぎりの予定で電車に乗っていたら、なんとJRが止まってしまってすごーく焦った(@_@;) ようやく上野に着いて走った走った 職場に朝遅刻しそうになってもこんなに懸命に走ったことはないというぐらい。おかげで間に合ったけど
【関連リンク】
《バロックヴァイオリン 佐藤 泉 Izumi SATO》
上村かおりからのコンサートの案内が紹介されている。ルセはロンドンのリサイタルをキャンセルして来たとのこと。
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