「第九軍団のワシ」:異文化の長城を撃て
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:チャニング・テイタム
イギリス・米国2010年
ローズマリ・サトクリフは児童文学の作家として有名。日本でも多くの著作が翻訳されているが、内容がファンタジー味はなく純然たる歴史小説なのでホイホイと映画化はされないようだ。
それが地味ながら公開というので見に行ってみた。地味と言っても、監督は『ラストキング・オブ・スコットランド』のケヴィン・マクドナルドだし、役者も決してマイナーではない。
時は西暦2世紀、現在のスコットランドとイングランドに当たる地域が舞台である。かつてローマ軍の軍団を指揮しながら消息を絶った父親の名誉回復のために、ローマ人の若者が未開の地へと足を踏み入れる。
その境界には、万里の長城のような「ハドリアヌスの長城」というのが建っているのであった。こんなのあったとは知らなかったぞ。
冒頭で、昔の西部劇のインディアンよろしく襲撃してくるブリタニア人へのローマ人の戦い方など見ていてかなり面白い。もっとも、肉弾戦を接近してしかもカメラを振って撮るものだから、観客の眼では捉えられない映像多数だ。
中盤以降は、奴隷の若者を連れて壁の向こうへ潜入するが、未開の地では逆に自分が奴隷にされてもおかしくはない。「主従」関係は英国ものには頻出するが、体格のいいチャニング・テイタムと小柄なジェイミー・ベルの組み合わせとなれば、フ女子の妄想を呼び起こしても仕方ないだろう。その関係が逆転したりするとあっては、ますますもって妄想に花
が咲くってもんである。
主人公は異文化の民族と接するが、何の葛藤もなくまた戦闘が始まってクライマックスになっちゃう。そして、なんと「努力・友情・勝利」で終了するのであった。
???あれ、サトクリフってこんなだったっけ?と不審に思ったけど、やはり原作とはかなり違うらしい。なんてこったい\(◎o◎)/!
ハイランド地方の荒涼とした光景は美しく、歴史ものとしての映像もよく出来ているが、「西部劇史観」をそのまま引きずったようなストーリーはどうかと思うのであった。
それと、馬に乗ってのスタントはかなりのものを役者たち本人がやってて驚いた。
ドナルド・サザーランドが主人公の叔父として特出。映画に貫禄あるイメージを与えていた。
敵のアザラシ族の王子を演じていたのは、なんと『預言者』で主演してたタハール・ラヒムとのこと。全身白塗りしてたんで全く分からなかった……(^_^;
それにしても遠方の植民地でも闘技場作ったりして、ローマ人てとことん享楽的だったんだなあ、という印象だ。
いつか原作を読んでみたい。
戦法度:7点
多文化度:5点
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