「ルート・アイリッシュ」:「兵士」の行く末
監督:ケン・ローチ
出演:マーク・ウォーマック
イギリス・フランス・ベルギー・イタリア・スペイン2010年
ケン・ローチが描くイラク戦争--それは民間軍事会社と傭兵の存在に踏み込んだものであった。
この分野も「官から民へ」だろうか、物資補給などの後方支援から護衛、偵察、はたまた拷問指導までこの手の企業は様々な分野に進出しているのであった。正式な軍隊ではないから国際法や条約に縛られることなく、しかも現地の法律に従うこともない。まさにやりたい放題らしい。(過去の関連記事)
英国人の主人公は、兄弟のように仲が良かった親友と共に軍事会社に雇われていたが、一人帰国している間に親友がイラクで戦闘に巻き込まれ死んだのを知る。
彼はその原因を探ろうとするが……という話だが、その中心は謎解きではない。
親友の死の謎よりも、徐々に明らかになる主人公の真実の姿こそがこの映画の描きたかったことだろう。彼は親友の妻(と観客)に対して自らの経験した戦争について語るが、その幾つかが嘘であるのが、後半の彼自身がなす行動で明らかになっていく。
心理状態は描くが内奥までは踏み込まず、その内部の荒廃は行動だけが語る--という二重の表現を演出と役者の演技がうまく成立させている。
そして最後に至って、戦争の最も恐ろしい部分は主人公自身だったということが明らかにされるのだった。うーむ、この二重構造は難易度高い技だといえよう。
そして、こんなに救いのない結末はないというぐらいに暗かった。
ところで、他の人の感想では触れているのは見当たらなかったのだが、この映画の最も怖いのは拷問シーンだった。だって……あれ本当にやってるよね(>_<) 見せかけやCGじゃないよ。
信じる「正義」のためになんの躊躇もなく行われる暴力……それを目の当たりにした。戦闘シーンをほとんど出さず、この場面を観客に突き付けたのである。
見終わった後、あまりの恐ろしさに気分が悪くなってしまった。
どうでもいいことだが、隣の席の男がポップコーンをずーっと食ってて、30秒おきぐらいに袋に手を突っ込んでその度にビニールの音を立てるのにはマイッタ(>_<) なぜにケン・ローチの映画でポップコーンを食う 巨大ロボットが格闘するような音のでかい映画ならともかく。
アート系単館ロードショーをやるような映画館ではポップコーンを販売停止にしてもらいたいぞ(-_-メ)
荒廃度:9点
恐怖度:9点
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