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2012年5月 8日 (火)

「スーパー・チューズデー ~正義を売った日~」:あの人に一票!

120508
監督:ジョージ・クルーニー
出演:ライアン・ゴズリング
米国2011年

結論から先に言うと、あまり感心しない出来だった(-_-メ)
米国大統領選を題材にしているから、てっきりTVドラマ『ザ・ホワイトハウス』みたいな「なんで、こうなっちゃうの??」話(両方の候補とも中絶容認派なのになぜかそれが争点になってしまう謎)とか、そこまでやるかの駆け引き(投票が始まってからも猛烈な電話攻勢で逆転を勝ち取ろうとする)が出てくるかと期待してたら、全く違った。

これは別に政治でなくても、企業や学会を舞台にしても構わないような内容のサスペンス・ドラマである。
カリスマ的な魅力を持つリーダーと彼に心酔する理想主義者の若者、海千山千の補佐役……そして、後は死体が転がり出れば道具立てはオッケーだ。
ここではクリントンをモデルにしたとおぼしき大統領候補と若手広報官、ベテラン選挙コンサルタントという設定である。宣伝では主人公はG・クルーニー扮する政治家かのように見えたけど、そうではなくて広報官の方だった。

サスペンスにしては演出がもたついているし、顏のドアップの切り返しの連続で見てて疲れる。顔アップの多用はTV出身の演出家がよくやると聞いたことがあるが、少々監督としてのクルーニーの手腕に疑問を抱いてしまった。
謎が明確になる過程も歯切れが悪いので、その背景の理想主義の失墜というテーマもなんだかピンボケ状態だ。

さらに疑問なのは、キイパーソンとなる女子大生である。有力者の娘という設定だが、そんな人間を使ってはかりごとを企んだら、事が発覚した時に再起不能までに叩きのめされる恐れがあるんじゃないの。それだったら、貧乏な女学生に金でも握らせれば充分だと思うんだが……? 原作小説があるそうだけど、そちらではちゃんと説明されているのだろうか。
それと主人公の若者は既に何回も選挙スタッフとして働いている割には、ナイーブ過ぎるのも納得いかん。

主人公は役者としての評価急上昇中のライアン・ゴズリングだが、前半は人のいいおにーさん風、後半はしかめ面に終始。これはきっと監督の演出のせいと思われる。DVDが出たら評判の『ドライブ』を見ることにしよう。
脇を固めているのが、フィリップ・シーモア・ホフマンとポール・ジアマッティ。彼らならこのぐらいの演技はお茶の子さいさいだろう。

目立ったのはマリサ・トメイで、モラルなく貪欲な記者をエネルギッシュに演じていた。
また、ジェフリー・ライトは出番の少ない泡沫政治家の役だったが、この作品に出た他の誰よりも演説がうまかった。選挙の際には、彼に一票を投ずることにしよう。


監督支持率:40%
役者支持率:50%


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