「アーティスト」:人生の上りと下り、どちらが早い?
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ
フランス2011年
今年のアカデミー賞は、この作品と『ヒューゴの不思議な発明』が多くの賞を獲得したわけだが、両者ともに古の映画を題材にしている。
サイレントからトーキーへ……激動の移行期には、名著「ハリウッド・バビロン」によると、多くの俳優が没落した。昨日までは燦然と輝くスターが、あっという間にただの人である。その原因は、声質がヒドイとか訛りが抜けないというものがほとんど。
確かにお嬢様の役の女優が、ガラガラ声で田舎訛りだったらマズイのは道理だ。
この映画では主人公は「トーキーなんて芸術ではない!」というもっと高尚な理由で(現在でも新しい技術に対して「3Dなんて見世物に過ぎん」という意見があるのは事実)、拒否して人気を失う。
逆に溌剌とした魅力でスターの階段を駆け上る若い女優は、そんな彼をそっと陰で見守るのであった。そういう女心にはほだされて泣かされちゃうのう(T_T)
もちろん忠犬アギーの活躍には、犬嫌いの私も涙である。
そんな物語をサイレント仕立てで描くという、これはアイデアの勝利であろう。二度と同じ手は使えないよ。
フランス映画と言っても、字幕は英語だし、脇を固める役者陣も英語圏の人多数。結末も含めて完全にハリウッド讃歌なのであった。が、こちらは『ヒューゴ』と違って、映画史に興味のない人でも楽しめるだろう。
見ていて、サイレントだと演技の方法がかなり違うという印象がした。当時、俳優が入れ替わったというのはそういう点もあるかもしれない。
映像的に凝っているために、逆に話は素朴な恋物語である。従って、観客は映画マニアと恋愛ものファンに分かれるようだ。正直、私は恋愛ものは苦手だがそんな私σ(^-^;)でも楽しめましたよ。
そのせいか女性割引の日に行ったら、大半が女性一人客であった。
ジェームズ・クロムウェルが地味に活躍していたんで、マルコム・マクダウェルも後半もっと出てくるのかと期待してたら、そのまま終わってしまったのは意外というか残念というか……(+_+)
客観点:8点
主観点:6点
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