「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」:パイがつなぐ「絆」
監督:テイト・テイラー
出演:エマ・ストーン、ヴィオラ・デイヴィス
米国2011年
良くも悪くも優等生的映画である。その点において褒めようと思えば幾らでも褒められるし、けなそうと思えばいくらでもけなせるだろう。
1960年代、公民権運動爆発直前の米国南部での黒人メイドたちの変化を描く。子育て・家事を任しながら差別的な待遇を平然と行なうという「過去の悪行」を忌憚なく描いたのは「偉い!」と声をかけたいところだ。
しかし、語り手は明らかにヴィオラ・デイヴィス扮するメイドであるにも関わらず、視点は大学を出て町に戻ってきたリベラルな白人娘のものという「二重基準」ならぬ「二重視点」なのはどういうことだろうか。なんだかどっちつかずの印象である。
また、終盤近くの老メイドのエピソードは、現代に生きるアフリカ系からは「今どきアンクル・トムか」などと批判されそうだ。
もっとも現代的な観点も出てくる。まず、登場する白人の若い妻たちは妻たちで、良い母良い妻たるべしという規範に苦しめられていること。
白人女性の中でも「成り上がり」妻は軽蔑され排除されていること。
男はあまりに影が薄く、徹頭徹尾女の物語であること。(でも、そのために社会構造としての差別は覆い隠されてしまったような)
結局、一番印象に残ったのはテーマよりも、高齢アフリカ系から若い白人娘に至るまで、女優層の厚さと巧さであった。
ヴィオラ・デイヴィスはオスカーの主演女優賞を取っても当然な演技。いや、M・ストリープにやるなというわけではないよ(^^;)
悪役を一人背負って立つブライス・ダラス・ハワードもお見事。その母親役は見た覚えがあると思ったら、シシー・スペイセクではありませぬか(!o!) 『キャリー』からはや幾年今度リメイクだってね~。
さて、舞台はミシシッピなのだが現在のミシシッピ州民はこの映画をどう見たのであろうか。
冒頭で「優等生的」と書いたけど、「●●パイ」の件は除く。バイはしばらく食いたくねえぞっと
最後にに紹介しとこう--アカデミー賞授賞式司会のビリー・クリスタルのジョーク「この映画を見終わったらとても感動して、黒人女性をハグしたくなったんだ。でも周囲を見回したらビバリーヒルズには黒人が一人もいなかったよ」
女優活躍度:8点
心のつながり度:5点
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