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2012年6月12日 (火)

「ドイツ室内楽の楽しみ」:威勢のよいテレマン、忠実なバッハ

120612
ジョシュ・チータム氏を迎えて
会場:近江楽堂
2012年6月6日

いつも地味ながら聞きごたえありのコンサートを主催してくれる「木の器」、今回はジョシュ・チータムという若手ガンバ奏者をゲストに宇治川朝政(リコーダー)と福間彩(チェンバロ)の3人で、バッハとテレマンの曲を演奏した。

なんでも二人がオランダに留学していた時に卒業演奏(という言い方でいいのか?)を一緒にやったとのこと。それから7年後に再び共演なったということらしい。チータム氏は先日のLFJでも来日してたそうな。ガンバ以外にコントラバスなども弾くらしいので、演奏団体の一員として来たのだろうか。

リコーダーと言ったら、なんたってテレマン(^o^)bということで、ソナタが3曲演奏された。いずれも宇治川氏のリコーダーは冴えて、3人のアンサンブルは溌剌とした魅力を発揮した。珍しくもトレブル・ガンバを使用した曲もあった。

テレマンでは支えに回って着実な演奏を聞かせてくれたチータム氏、バッハの「ガンバとチャンバロのためのソナタ」ではその腕前をフルに披露……のはずが、少し弾いたところで異様な音がして演奏中断。なんとガンバの弦が切れてしまったのだった。ヴァイオリンでは見たことあるけど、ガンバでは初めて目撃(!o!) 驚いてしまったぞ。
なんでも、空調を止めていたので湿度が高くなって切れてしまったそうである。空調を入れて弦を張り直してようやく最初から演奏を再開した。

しかしその真価は、無伴奏チェロ5番をガンバで独奏した時に発揮された。チェロだといささか硬質で重厚に聞こえるのが、何やらしみじみと感じ入る音楽に変わっていたのだった。
特にサラバンドはガンバのかそけき響きが浮遊感をもたらしてホニャ~と夢見心地になってしまった(眠気虫に食いつかれたのではありませんぞ^_^;)。これ以上大きな会場だったら聞き取ることさえできないだろう、小さくしみいるような響きだった。まるでガンバ特有のきしみやうなりさえも予め作曲されていたかのように美しい。
楽器、会場、奏者、そして曲自体--どれ一つの要素が欠けても成り立たなくなってしまう完璧な世界だった。もちろん、客席はシンと聞き入っていた。

ところで、この曲が始まる直前に宇治川氏は客席で一緒に聴こうと、会場にいた知り合い(チェロの武澤氏?)に近くの席が空いているか尋ねて座ったのであった。その時「また泣いちゃったりして(@∀@;)」と冗談で言っていた。おお、以前のコンサートでの涙事件のことですね。自分でネタにするとはさすがである(何が)。

テレマンの合奏曲は楽しかったし、この同じ日にはミドリ・ザイラーの無伴奏公演があって大好評だったらしいが、それを聞き逃しても気にならないほどに満足できたコンサートだった。

チータム氏にはこれからの活躍を期待しますぞ。そして宇治川氏と福間女史にはまた楽しい企画をお願いしますです(^人^)

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