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2012年6月16日 (土)

イタリア映画祭2012 その1「大陸」:「自由」への脱出

120616
監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
出演:フィリッポ・プッチーロ
イタリア2011年

なかなか映画の感想を書く暇がない。平日は家に帰ってくるとクタッとなってしまって漫然とネットを眺めてるぐらいしかできず、さらにどうしてもコンサートの感想を優先してしまうのでますます遅れてしまうのであった。

で、ようやく「イタリア映画祭」である。昨年は震災の影響でゲストも来ない状況だったらしいが、今年はそんなこともなく連休中は賑わっていた。

最初に見たのが「大陸」だ。
長靴型のイタリアは元々南北格差が存在するが、これは長靴の先っぽにあるシチリアの小さな島の一つが舞台である。
漁業は先細りで、働き盛りの層は観光業に力を入れている。そんな中で、素朴な若者フィリッポは「旧世代」の祖父と漁に出る毎日だ。だが、その途中で小さな船に満員状態で乗っているアフリカからの難民に遭遇する……。

古くからの「海の掟」によれば、遭難しかかった者は誰でも助けるのが当然だ。一方、アヤしい難民が島をウロチョロしていれば観光業に差し支える。警察は難民を発見したら直ちに送還である。だが、送還してオッケーな状態ならそもそも難民が小さな船で危険を冒して渡ってくることもないだろう。
いずれの立場に立っても難しい状態が描かれる。

フィリッポ君は母親から自立したいお年頃。観光で来ている女子大生も気になるeye だからと言って、観光客相手の商売に励む叔父に共感しているわけではない。
そして一家が難民の母子に関わったことから、ますます問題は大きくなっていく。

観光客が遊ぶ美しい昼間の海、恐ろしい一面を見せる夜の海。のどかな島に走る分断と対立。
部外者の女子大生はフィリッポを非難がましい目で見るが、自分の乗るフェリーに、逮捕された難民が同乗して送還されていくのには無関心のようだ。
そして袋小路に追い込まれた時に彼はある行動を取る。

不安と絶望、希望と意志の双方を感じさせるラストは秀逸だ。観客の多くはそこに行き場のないカタルシスを得るだろう。

かなりよく出来た作品だと感じた。年間のベストテンに入れてもいいぐらいfuji しかし、日本でロードショー公開されたとしても、この題材でどれほどの人が見にくるかは微妙なところだ。
この映画はヴィスコンティの作品に影響を受けているらしいが(タイトルももじっているとか)私は恥ずかしながら見ていないのよ(+o+)

監督はシチリア島々を舞台にしたこれまで作品を撮っていて、フィリッポ君(役名と同じ)は元は--というか今でも島民で、たまたま知り合って出演するようになったという。普段は実際に父親と漁に出ているという。

さて、そのフィリッポ君が今回は来日。アフタートークに出てくれた。三つ揃いのスーツを着て映画よりもやや垢抜けた印象だったが(ただし髪型なんかは全く同じ)、話し始めると映画そのままの純朴な青年で好感度アップupなのであった。

でも本当ならばプロデューサーや監督にしてくれと言いたくなるような質問が続出。困ったね(-"-)
映画は実際に起こった事件を元にしていて、撮影前にも、500人もの難民が島に来たという事件が起こったという。
Q-地中海の魚は食べない。なぜなら死体を食ってるから--という話を聞いたことがあるが本当か?
A-実際に5か月前に漁で死体を目撃した。
Q-方言はかなり理解できないらしいが、この作品でも?
A-シチリア本島と自分の島も結構違ってる。
Q-難民がイタリア語を喋ったのには驚いたが。
A-僕も驚きました(^^;ゞ
Q-来日しても魚を食べない人がいるが、あなたは?
A-今日は和食を食べた。生魚は大好き\(^o^)/
 注:はっきり言って余計な質問である。魚食おうと食うまいと個人の勝手。じゃあ、お前は海外行って生水飲むのかと問いたい。

そして、ラストにまたもや変な質問というか宣伝というかannoy……「都会じゃなくて東北の某観光地へと是非行ってほしい」みたいな発言をする女が出現したのであった。
あんた観光会社の回し者か(`´メ)引っ込めpunchと言いたくなった。
しかし、フィリッポ君は断固「まずトーキョーをもっとよく知りたい」と宣言したのであった。若いモンならやっぱりピカピカした東京がいいですよね(^_-)-☆


【関連リンク】
《 Music for a while》「Terraferma  イタリア本土を目指すボートピープル」

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コメント

おお、日本ではイタリア映画祭で公開されたんですね。よかった。
リンクもありがとうございます。

難民を扱った映画としては例外的な叙情性があり、イタリア的なのかある種の楽天的展開で、フィールグッドというか救われた気分にさせるのが名人芸、と思いました。
映画祭では、フィリッポ君のインタビュー付きというのがいいですね。素顔も素朴で可愛い感じなのね。
質問内容がなかなか面白いインタビューではないかとわたしは思いますが。

投稿: レイネ | 2012年6月17日 (日) 03時35分

そちらの記事を事前に読んでなかったらこれを選んで見たかどうか、アヤシイところでした。題名がそっけないし--。ご紹介ありがとうです。
ただ、今後ロードショー公開されるかは微妙ですね。

フィリッポ君は映画そのまんまのクルリン金髪で、他の映画の監督さんたちと並ぶと小柄だし、本当にカワユイッ(*^_^*)て印象でした。
質問は、最初は役者のキャリアがどういう人なのか分からなくて出にくい感じでしたのよ。
一番、変な質問は割愛してあります(^^;) それと某観光地宣伝女はしつこくて二回も質問したのかな。あんた何者?って感じです。

投稿: さわやか革命 | 2012年6月18日 (月) 06時07分

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