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2012年7月26日 (木)

「なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか」

120726
見捨てられた原発直下「双葉病院」恐怖の7日間
著者:森功
講談社2012年

先日、エネルギー政策についての意見聴取会で電力会社の社員の発言が話題になった。「放射能で亡くなった人は1人もいない」というのだ。
しかし、放射能ではないが原発事故のために亡くなった人々はいる。

福島第一原発から4.5キロの位置に高齢者用の施設と病院があり、そこには436人がいた。寝たきりの老人も多数である。
震災の翌日に役場の手配したバスに乗り半数近くが避難するが、その後が来ない。続けて出発できると思っていたので、病院長他数人しかスタッフがいない状態のままである。いつの間にか周辺地域は避難完了している。ようやく自衛隊が来たのは14日になってからだった。
しかしそこで、原発で水素爆発が……。

詳しい状況が分からぬまま自衛隊の後続の部隊は来ず、さらに唯一残っていた指揮官がスタッフの自家用車を借りてなんと逃走danger 90人もの患者が取り残されたままになってしまったのだった。
先に避難した患者もたらい回しにされるなどして、結果として50人もの死者が出た。震災によってライフラインが途絶しただけだったらこんな事態にはならなかったろうと思える。
原発事故によって避難命令が出て、周辺が混乱に陥ったのは大きい。さらに役所と警察と自衛隊の間の連絡がほとんど取れていなかったことも。

しかも、不可解なことに県は、病院関係者は患者を見捨てたまま誰一人いなかった、とマスコミに発表したのである。病院に対し非難の雨アラレが降り注ぐ。
何か事件が起こるたびにこういう状態になるのは日本だけなのか?(そして1か月も経てば当事者以外には忘れ去られてしまう)

著者はフリーのルポライター。実際に病院長の話を直接聞くまでは悪人だと思っていたという。しかし、一過性のマスメディアの報道が顧みない事実の掘り起こしによって、その本領が発揮されたといえるだろう。
「過疎の地」にそのような大規模な高齢者用の病院や施設があるのかにも、さりげなく触れている。


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