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2012年7月12日 (木)

「裏切りのサーカス」:男たちの大英帝国

120712
監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:ゲイリー・オールドマン
イギリス・フランス・ドイツ2011年

どうも小説にしても映画にしてもスパイものは苦手だ。007だってロクに見たことはないが、それよりもシリアスなタイプの作品。陰々滅滅、ウツ展開で見てると気が滅入ってくる。『エロイカより愛をこめて』で少佐が英国に出向中に、後任者が過去のスパイたちの末路を話して聞かせて、部下たちをパニック状態に陥れたようなパターンである。

な訳で、ル・カレの原作は高名だけど未読のまま映画を見に行ってみた。ゲイリー・オールドマンがアカデミー賞にノミネートされた記憶も新しい。
当然のことながら、物語は東西冷戦下の時代が舞台。英国情報部とソ連国家保安委員会は熾烈なスパイ合戦を繰り広げているのであった。
そんな中、英国側上層部に二重スパイが潜んでいるという情報がもたらされたのであった。

諜報部の面々を演じるは渋い男優ばかり。若手の二人もカッコエエ
しかしこの映画には致命的な欠点がある。それぞれの人物の出自とか過去の因縁等が全く描かれていないため、個々を見分けるのは役者の顔ぐらいしかないのである。さらに氏名と顔が一致しないうえに、コードネームまであるから会話に出て来ても誰が誰やらハテナ印続出(?_?)
要するに、誰が二重スパイになっても大して変わりはなく、見ていてどうでもよく感じられてしまうのであった。
結局、男優たちの顔やシックな衣装を見て、古めかしい街並みや小道具の数々を眺めているうちに終了してしまった。これは謎解きよりも「雰囲気」を味わう映画なのか。

しかし、原作小説はお懐かしや『アナザー・カントリー』と同じ事件をモデルにしているとのこと。くしくも、『アナカン』では「ストレート」なマルクス主義者の優等生を演じていたコリン・ファースも出演している。
となればこれは決して謎解きではなく、同様に「男たちの絆」を描いたといえるだろうか。有名パブリック・スクールから諜報部までずっと続く付き合いの中で背負って立つ大英帝国--。
いや、それどころか敵国のスパイも長い付き合いでいつも同じ知った顔、となればこのギョーカイも世界を股に掛けながら、実は狭い関係でできているようである。

従って個々の登場人物の背景が描かれていなくても当然なのだ。どうせ、みんな同じ顔なのだから。


謎解き度:4点
「絆」度:8点


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受信: 2012年11月23日 (金) 17時54分

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