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2012年8月12日 (日)

「ダークナイト ライジング」(字幕版):仮面の告白、あるいは美徳のよろめき

120812
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベイル
米国2012年

*物語の中心部分については書いてないですが、完全情報遮断したいという人は鑑賞後にお読みください。

待望のノーラン版「バットマン」の第三弾。
日本公開前から米国で映画サイトが炎上したとか大騒ぎである。日本でもネットで賛成派反対派が激突--って、原発問題並みですな
さらには不幸な銃撃事件まで起こってしまい……(T_T)

私はこのシリーズ最初は興味なかったのだが、なぜ見るようになったか理由は当時の感想に書いた。とある犯罪の報道がきっかけである。
続いて『ダークナイト』は大いに感動した。勢い余って二度目の感想も書いちゃったぐらい。ただ、私は「ジョーカー命」なファンじゃなくて、「ジョーカーがいなけりゃ駄作」なんて思ってはいないのでそこんとこヨロシク(^o^;)/

問題はその次にノーラン監督が作った『インセプション』。評判は高かったけど、これはもうどうしようもなくつまらなく感じた。複雑なSF的設定をすると、その設定の維持をするだけで大きな労力が必要で、枝葉末節な部分は放りっぱなし--ということが結構起こる。そしてその細かい部分がチリも積もって山となり、全体を崩壊させてしまうのである。
しかし、いくらなんでも『ダークナイト』の続編はそんなことないだろうと期待していたのだ。

結果は……『インセプション』ダメだった人はこりゃダメだね。逆に気に入ってた人は、こちらも面白いと思うだろう。
基本的に、エンタテインメント作品は見てる間は少なくとも騙し続けて、欠点があっても気付かせなければOKと考えているんだけど、この点かなり微妙である。

前半はまだいい。冒頭、袋かぶった犯罪者登場。袋の中を確認せずに飛行機に乗せるCIA大丈夫か(!o!)……というのはまあご愛嬌レベル。何をするかと思えば続いて死体へ空中輸血--多分、死者の素性をごまかすためという理屈は分かる。しかし普通こういう場合って歯形で照合するんではないの?
というような疑問は、空中飛行機解体ショーを見せてくれるという映像に目もくらみ、吹っ飛んで忘れてしまうのであった。

キャットウーマン(という名前自体は出て来ないが)の出没は充分カッコエエ。レズ気もあって、女も惚れる女とはこのことよねス・テ・キ(*^o^*)
で、乗っ取り騒動あたりまではいいんだけど、それから後半に突入すると急に失速して展開や設定のグダグダさ加減はもはや目を覆うばかり。これがB級~Z級アクションならともかく、一応A級目指しているんではないの(?_?) とても納得できねえ~(>_<)
でも映像の方は常に動いているから観ているとそんな事考えてる暇はないんだよね。

野獣版レクター博士みたいな悪役ベイン、登場した時は迫力あったものの、一体を市内引き廻して何をしたかったんだかこれまたよく分からない。
しかも野獣のはずが実は愛玩犬だったりしてこれまたガックリだ~
このシリーズの格闘場面については、過去に「ジョン・フォード映画の殴り合い場面でも見て研究して欲しい」などと書いた……自分でも忘れてたが(^^ゞ 今回、バットマン×ベイン対決は引きの画面は増えたんだけど、じゃあ迫力があるかというとそういうわけでもなかったのが困ったところ。

その他、ゴッサムシティの市民が云々とか言ってる割には集団対決の場に市民がいないのは変だとか、「穴」の設定はおかしいとか、地下にいた警官はなんでピンシャンしてるんだとか、言い出したらキリがないのでやめとこう。

結局のところ、全二作には存在していた「悪に対抗する市民」が登場しなかったこと(というか顔のある市民は一人もいない)と、なんとか結末を付けようとして無理だらけになってしまったということに一番の不満を感じた。善悪の葛藤と民衆の狂騒を対置させたかったのだろうが、「善悪」も「民衆」も描かれていなくてはいかんともしがたい。
そして、一体主人公は街や市民を愛していたのであろうか? 私には最後まで分からなかった。銅像になって飾られることが彼の希望だったのか 銅像なんてハトの休憩所にしかならんぞ(`´メ)

で、新たな主人公でまた三部作を作る気なのか その時には、ノーラン兄弟は製作に回って、監督と脚本は他のヤツに任せて欲しいね。
先日「三大映画祭週間」で見た『気狂いピエロの決闘』という作品が、物語の基本構造はかなり似ている(感想は後日)。どうせならこの監督さんを推薦したい\(^o^)/

それにつけても、マイケル・ケインの名優ぶりには改めて感じ入った。彼なら居酒屋のメニューを読み上げても客を泣かせることだろう。
トム・コンティとマシュー・モディーンはお久しぶり。
アン・ハサウェイはハマリ役 脚の長さもうらやまし~い(^_-)-☆ 猫娘単独エピを希望。
悪役ベインはトム・ハーディ……って、どこかで聞いたような(^^?) と思ったら『ブラック&ホワイト』とか『裏切りのサーカス』に出てた男優さんじゃありませぬか。全く分からなかった どの作品も別人のように違って見えるビックリだわい。

絶賛派批判派いずれにしろ、何か一言二言三言……言いたくなる作品なのは確か。そういう意味では「話題作」に違いない。


民衆度:3点
ヒーロー度:5点


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コメント

さわやか革命様 お久しぶりです。 ようやく見ている映画が出てきたので、注目しましたら、、あらら、 私と正反対の評価、、 私は最後まで引っ張られて、ENDで思わず拍手そそうになったのです。 困ったなあ、、インセプション見てなかったのですが、今日、借りてきちゃったんです。 あー、見るんじゃなかったなあ、、 でも、待てよ、 インセプション=ダークナイトライジング 同レベル って事は、また あの感動が味わえるのか、、やっぱり拝見して良かったと思う今日でした。 因みに、最近の順位でいうと、 1: 今作 2:プロメテウス 3,4が無くて、評価に値せずが トータルリコールとアベンジャーでございました。   長舌 失礼しました。

投稿: 八島秀二 | 2012年8月15日 (水) 22時08分

まあ、映画の評価も人それぞれでよろしいのではないでしょうか(^^)
「プロメテウス」は予告だとすごーく面白そうですね。期待です。もっとも、最近予告に騙されることが……(*_*;

投稿: さわやか革命 | 2012年8月17日 (金) 00時22分

すみません、レヴュー気付くのが遅かったです。皮肉を込めて言うならば、『ダークナイト』がノーラン版バットマンの‘本編’で『ビギンズ』はプロローグ、『Rises』はエピローグなのかもしれませんね。

描いているテーマも何もバットマンを借りてこなくてもできたこと。宮崎駿の『カリオストロの城』もそうですが、映画監督の世界で有名ヒーロー御一行を冒険させてみましたと見なせば、そんなものかなあ、と。

そして『カリオストロの城』越えを他のルパンⅢ世作品がいまだにできないように『ダークナイト』越えも至難の技になるのか?

まずはノーラン監督自身が『ダークナイト』越えができなかったことを図らずとも示してしまった『Rises』といえるのかもしれませんね。

投稿: ふりーで | 2012年8月28日 (火) 19時02分

いやもう、とにかく悪役ベインのふがいなさに絶句しました。女性映画ファン(の一部)から「かあいい(*^_^*)」とか言われている場合かと。

前作は「白熱教室」みたいな問答が面白かったんですけど、今回はそれが裏目に出たんですかね(^^?)

投稿: さわやか革命 | 2012年8月30日 (木) 10時50分

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