「情熱のスペインバロック」:知ってそうで知らなかったスペイン
エミリオ・モレーノ氏を迎えて
演奏:東京藝大古楽科の皆さんほか
会場:近江楽堂
2012年7月27日
先日のBCJの定期公演にさりげなく、これまで見たことのない外国人メンバーがヴィオラに入っていたのだが、それがこのエミリオ・モレーノだった--というのは後で気付いた
彼は「17~18世紀のスペイン音楽、ボッケリーニ音楽のスペシャリスト」ということで、現在はカタルーニャ高等音楽院古楽科主任であり、今年度東京藝大の古楽科の特別招聘教授になって来日しているらしい。
この公演はいわば、藝大の古楽科教員が中心になって歓迎コンサートをやったという形のようだ。
近江楽堂のような小さな会場でやるにしては、豪華共演陣である。歌手は野々下由香里、鈴木美登里。器楽は若松夏美、鈴木秀美、山岡重治、大塚直哉、佐藤亜紀子--などなど。モレーノ氏を入れると12名だ。近江楽堂でこんなに大勢出演したのは見たことがない。
18世紀初頭のスペインは王位の継承権争いで、二つの王都が存在するという状況になったという。もちろん、背後にはヨーロッパ全体をめぐる覇権争いがあった。それによって文化の世界にもあらたな流行が生まれ、音楽ではフランス音楽とオーストリア経由でイタリア音楽が並立するようになったという。
コンサートではモレーノ氏がヴァイオリンのトップでその伊・仏型の双方を演奏。デュマジュールという作曲家のモロに優雅な仏風組曲をやった後に、ヴェネツィア出身のカルダーラのオペラからアリアをという次第だ。後者は鈴木美登里が激情たっぷりに歌い上げた。解説によると「1708年にスペインで発表された初のイタリア風オペラ」とのことである。
また、かの地のオペラでは当時から女声ソプラノが男役を演じて歌っていというのも驚きだ お国柄でこうも違うのか。
ホセ・デ・ネブラという作曲家のオペラから、野々下由香里がそんな男役の歌を一曲、滔々と歌った。シンフォニアではリコーダー二本が絡んで、弦も色んな奏法を披露。
公演のクライマックスは同じくデ・ネブラのギリシア悲劇を元にしたオペラからの数曲だった。野々下&鈴木(美)が幾つもの役を演じて二重唱をやった。この二人は昔のBCJの定期公演では同じ舞台に立っていたと記憶してるが、こうしてオペラの歌曲をデュエットするのは聞いたことがない(多分)。やはり劇的な曲調で大いに盛り上がった。
背後にカスタネットが入るのがまたスペインらしい。実際、当時の歌手たちは鳴らしながら歌ったそうだ。
豪華共演陣で、未知のスペイン・バロックのことを色々学べたという、大いに有益なコンサートであった。またよろしくお願いしまーす。
ただ唯一の難点は、近江楽堂はチェンバロ一台でも十分に響くホールなので、十数人となるとかなり響き過ぎだったことである。
開場するのを待って行列してたら、結構コンサートホールと間違えて並んでる人がいた。全く違うので気を付けましょう(^O^)
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