「偽りの名画」
著者:アーロン・エルキンズ
早川書房2005年(ハヤカワ・ミステリ文庫)
山本周五郎賞を取り直木賞候補になった原田マハ『楽園のカンヴァス』。ネットでこの本が元ネタだと指摘されていたので、興味を持って読んでみた。
主人公は米国サンフランシスコ郡立美術館の学芸員。イタリアの美術コレクターの蒐集品を展示するため、ベルリンへと飛ぶ。だがそこで絵画強奪未遂事件、さらには殺人まで起こる。背景には展示品の中に贋作の存在があるのか、ないのか--がポイントになる。
全体的には美術を題材にしたユーモア風味ミステリ・エンタテインメントである。もっとも、そこに述べられているウンチクはかなり広くて詳細なようだ。米軍主催の美術展をヨーロッパで巡回するというのも面白い(広報活動の一環か)。
『楽園のカンヴァス』はモネだったが、こちらの主人公の専門はフェルメールだ。いま日本でブームなんで興味のある人は読んでみると面白いかも。
読んでみると『楽園~』の元ネタというほどではなくて、「参考にした」程度だろう。私はあの小説の男女のロマンスが鬱陶しかったんで、どちらかといえばこっちの方が好感度高い。
作者のエルキンズは人類学者スケルトン探偵シリーズで有名。こちらの「美術探偵」もシリーズ化されたらしい。なお文庫は2005年だが、日本での初刊は1991年、オリジナルは1987年である。
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