三大映画祭週間2012「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」:怪物には怪作をぶつけてやれ
監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:トニ・セルヴィッロ
イタリア2008年
「三大映画祭週間」はカンヌ・ベルリン・ヴェネツィア映画祭の上映作品の中から、日本でロードショー未公開(映画祭などでは上映されているのもあり)のものを選んで紹介する企画。
この作品はカンヌで審査員賞を取っている。それがなぜに未公開(?_?)と疑問に思ったが、実際見てみてナルホドと納得したのが正直なところだ。
監督は今年『きっと ここが帰る場所』が公開されて評判になったパオロ・ソレンティーノである。
主人公はイタリア政界に首相として長年君臨してきた実在の政治家アンドレオッティだ。彼の陰謀術策の日々、そして遂に訴えられ、しかし無傷のまま政界を去るまでを描く。
こう書くと社会派っぽい作品かと思えるのだが、全くそうではない。
時間は前後し、今スクリーンに登場している場面はいつの事か混乱する。しかもタッチはオフビートで奇妙なユーモアがそこここに潜んでいる。悪辣な政治家を告発というような雰囲気ではない。音楽の使い方や前後の脈絡のなさはイメージフィルムのようだ。おまけにテンポがゆったりしているので、客席には眠気虫が出没していた。
私が見ていてなんとなく思い浮かべたのは、デレク・ジャーマンの晩年の伝記作品だった(『ヴィトゲンシュタイン』とか)。あるいは、政治家の伝記だからということもあるだろうが時制の混乱具合や私生活の描き方などは『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』がかなり似ているように感じた。『サッチャー』の方が製作は後だからもしかして真似したのか?
その一方、多分個々の政治家を演じる役者たちは恐らく実物とソックリなのではないか(実物知らないのでよく分からん(^^ゞが)。そういう点では実際の政治家を知っている、ある世代以上のイタリア人が見ると特別に面白いのかも。
もっとも、取材に来た(大物?)ジャーナリストを「お前の潰れかけた会社を救ってやったのは誰だと思ってるんだ」と恫喝する場面などは充分な迫力があった。それに個々の暗殺(主人公が指示したとされる)場面なんかは下手なアクション映画よりよくできている。
猫背で外見は貧相にして「陰鬱で冷淡で無表情」、そして魔王の如く国を支配--このような怪人物を描くのは、却ってこういう手法がピッタリなのかも知れない。
いずれにしても、この映画自体も怪作であるのは間違いないだろう。
日本の政治家だとナカソネあたりが当てはまるか? 今、彼を描く勇気のある映画作家は日本におるかな(@∀@)
政治度:6点
政治家度:8点
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