「ラージとキアブレラ」:三途の川も歌次第
南蛮ムジカはバリトン歌手の辻康介主催のユニット。昨年も夏に同じ会場で公演をやった。
今回もやはりフランチェスコ・ラージの特集である。
ラージはモンテヴェルディの『オルフェオ』初演時にタイトルロールを歌った歌手にして、作詞作曲、楽器もこなしたという才人。当時の宮廷では人気スターだったらしい。
この日のコンサートは、同時代の詩人キアブレラの詩にラージが曲を付けた作品が中心である。昨年と同様に佐藤亜紀子(キタローネ、バロックギター)と根本卓也(チェンバロ)が共演。
3人は当時の宮廷風の衣装で登場した。いずれの曲も切々とした愛しい女に捧げる歌ばかりで、中にはもう崇拝して足元にひれ伏さんばかりの歌もあった。辻氏によるユーモア交じりの曲の解説が会場を笑わせる。
照明はレトロな電球なんで、ローソクとは行かないまでもなんとなく、当時の雰囲気もこんなだったかねと感じることしきりだった。
合間には、カスタルディ(初めて聞く名前)作のリュート曲独奏もあった。何やら極めて技巧的で難しそうな印象だ。一方、チェンバロ・ソロは珍しやジェズアルドの唯一の器楽曲というものだった。
後半は「オルフェオ」関連の曲を中心に。一曲だけモンテヴェルディの歌劇から、冥府の川の番人カロンに聞かせる「強大な霊よ」をやった。
辻氏によると、通常の楽譜以外に歌手のラージや器楽奏者が派手な即興を交えて演奏した当時の譜例が残っているのだという。で、それにならってこの日の演奏も即興演奏でやるとのこと。辻氏は指揮をしながら歌い、リュートとチェンバロがそれに合わせてこれでもかというように派手な装飾を入れまくったのであった。まさにド迫力としか言いようがない。特に佐藤女史はグッジョブでしたのよ(*^^)v
歌劇ではカロンはこの歌を聴きながら寝てしまうという筋書き。でも、辻氏もトークしてたが、こんなド派手な演奏ではとても寝られません!
ラストは一転してラージ作ではないがキアブレラの詩による、酒場で酔っ払って女をくどくというような俗っぽい歌を歌って終わった。
滅多に聞けない曲がほとんどで、しかも楽しかった。来年もまたよろしくお願いしまーす。
ただ、開演が夜7時半というのはちょっと微妙だ。家へ着いたら11時近くになってたもんね……
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