「ニッポンの嘘~報道写真家 福島菊次郎90歳~」:全身写真家
『プロメテウス』と『プンサンケ』があまりに詰まらなかったので、ガックリしてもう劇映画を見るのにウンザリしてしまった。それで、よしっ(`´)ドキュメンタリーを見ようと思って行ったのがこれだ。
一見すれば犬と暮らすじーさん。年齢は90歳。しかし、その正体は激動の戦後史を撮り続けたカメラマン福島菊次郎である。
いや、激動の戦中戦後を生き抜いてきた--と言うべきか。戦争中はバリバリの軍国少年で、彼の所属した部隊は8月1日まで広島にいたという。
戦後は一転、一人の被爆者の写真を撮り続けプロのカメラマンとなり、その後成田空港闘争、安保、全共闘、水俣、祝島、ウーマンリブ……と一貫してフリーの立場でメインストリームでない側の取材を続けてきたのであった。
映画は時代順に彼の作品をその写真集の中の文章と共に紹介するとともに、現在の彼のインタビューを交えて構成されている。
冒頭、カメラマン志望の若者たちに「(取材する)問題自体が法を犯したものならば報道カメラマンは法を犯しても構わない」と説く福島氏は、過去に自衛隊や軍需工場に目的を偽って取材を敢行したという過去がある。
その直後に暴漢に殴られ、さらには家に放火されるという、まことに過激な人生を送っているのだった。
また昭和天皇や「平和都市」ヒロシマへの忌憚ない批判も続々と飛び出す。
「中立な立場の取材などありえない。だからつまらない記事になっちゃう」というのは真実の一面をついているといえるだろう。
その話の中で、今まで知らずに私が驚いたのは広島の「原爆スラム」である。投下直後から、家を失った人々はバラックを建てて住み始めた。その人々を追い出して更地にして作られたのが平和公園だったのだという。うむむ(+_+)
そして、3.11を経て福島へ。日常は足元もややおぼつかない感じだが、カメラを握るとエネルギー注入されるのか、シャキ~ンとなって被災地の光景を撮りまくるのであった。
90歳のじーさんのだから今は枯れた印象であるが、若い時はかなりエネルギッシュな人物だったに違いない。だーって、60歳の時に三十も年下の若い女性と孤島で暮らした--なんて、スゴ過ぎですよ。
というわけで、このドキュメンタリーを見て私も少しエネルギーを貰った。まだまだ長生きして写真を撮り続けて欲しいです。
ところで、ウーマンリブを撮った作品の中で、四人の女たちが服を脱いでヌードになっている光景がある。あの中で左端のサングラスをかけている女は田中美津ではないか。確か本人の回顧で、山中でウーマンリブの大会があって、服をすべて脱いだがサングラスだけは取れなかったと書いていたと記憶している。その時の写真だろう。
ダテに長生きしていない度:9点
愛犬度:8点
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