「プンサンケ」:いかにして私はシネパトス前で倒れ伏したのか
予告では、38度線を股にかけた運び屋を主人公にしたハードボイルド風のサスペンスもののように思えた。
しかし、実際見てみると全然違った。……というより立派にトンデモ映画の部類に入るといっていい。
主人公が境界線の鉄条網を越えて、南北で離散した家族の間をビデオメッセージを運び、さらに小さな少年も一緒に連れてくるという冒頭のエピソードは快調。これは期待できる!と思っていたのだが……
ところが次に、南に亡命した政府高官の愛人を連れてくるという段になると、その女がやたらに「いやん」とか「キャッ」とか連発するではないか。しまいには主人公に対し「あなたは女性への接し方を知らない<`ヘ´>」とか言って怒って一人で走り出すと、当然ながらトラップの針金に引っかかって警報のサイレンが鳴り響くのであった……。
最初の男の子の方がよっぽど人間としてよく出来ているように思えるのだがどうよ?
それとも……こ、これは絵に描いたようなツンデレ(~o~;)
依頼主の韓国情報部が報酬を支払わないので、主人公は高官と彼女を拉致するが、どうしたことかいつの間にか高官の命ずるままに観光ドライブツァーの運転手となって、二人でイチャイチャするところまで見せつけられるのであった。
宣伝文句に「おまえはどっちの犬だ」とあるが、これでは「お前はどこの運転手だ」である。
その展開から予測できるように、主人公と女はひそかに惹かれあうのだが……というメロドラマ・ストーリーは見ていてどうでもよくなってくる。
二人が縛られたまま北側の工作員ボスに蹴倒されて、その倒れたままキスしようとする場面なぞ必涙のはずなんだが、なぜか笑いがこみ上げてきてしまうのだった。
これまで『ダークナイト ライジング』や『プロメテウス』を散々ケナしたが、少なくとも見ている間は退屈ではなかった。ところが、この映画は設定がトンデモな上に、見ていてさっぱり面白くなくて退屈なのだった。勘弁してくれ~(`´メ)
格闘場面の撮り方や、北と南の情報員を狭い部屋に閉じ込めて闘わせてそれを見物するというのを見ると、『ダークナイト』の影響を受けているようだが、これじゃ悪しき亜流の見本でしかない。困ったね
背景に、現実に会いたくても会えない家族がいるのに両国の政府が何もしないという民衆のいらだちがあるのだろう。しかし、主役のユン・ゲサンのファン以外は見てもしょうがないという印象に終始した。正直、金と時間を返してほしい。
いやそれとも、私のような夢もロマンも信じてないような人間が見ようとしたのがいけなかったのか? だとすれば不徳の致すところである。
あまりにガックリした私は、数年ぶりに行った銀座シネパトスの前の地下街でしばらく倒れていたのだった┏(-_-;)┓
キム・ギドクが製作総指揮と脚本を担当。彼の復帰後第一作であり、監督もギドク組の人らしいが、一体これで大丈夫なのかっ(@∀@) でも、つい先日ベネチア映画祭でグランプリ獲得したのだから、きっとその後復調したんだろう。
それにしても亡命高官ってあんな我がまま言い放題なんかね?
南北友好度:5点
トンデモ度:9点
| 固定リンク | 0
コメント