ティーファクトリー「文体の獣」:田園と都市の狭間で死す
作:ピエル・パオロ・パゾリーニ
演出:川村毅
会場:テアトルBONBON
2012年10月13~21日
映画監督&詩人パゾリーニの戯曲を本邦初演するシリーズ、私が前回見たのは『豚小屋』だったが、あまりの難解さに退散状態(ーー;)でその後は行ってなかった。しかも「次はパゾリーニの映画を見てから出直したい」と書いたが、相変わらず見ていないままなのである
それなのに今回行ったのは、江戸糸あやつり人形座の結城一糸が共演するから。どんなもんかと見に行ったのであったよ。
作品はパゾリーニの自伝的戯曲。ただし主人公の故郷はチェコスロヴァキアの村に設定されている。
とはいっても、明確なストーリーがあって盛り上がるような内容ではない。過去の思想家や作家が出現してきては主人公の前で一説ぶったり論争したりする。その合間に彼の母親や幼なじみの少女、親友などが登場して半生をたどっていく。
途中で背後のスクリーンにパゾリーニの実際の年譜や発言が現れて、これは本で言えば脚注みたいな感じか。
「革命」とか「共産主義」とか「ファシスト」などという言葉が頻出し生硬な印象である。それに、そもそもこれらの言葉のイメージ自体が当時とは全く違ってきてしまっているのでなんだか、空中に書かれた見えない文字を眺めているような気分になった。
語っている若い役者さんに「あなた共産主義についてどう思いますか」などと尋ねたくなってしまった。
演出はラストで現代と通じる場面を付けたとおぼしいが、なんだかとってつけた印象がなくもない。どうせだったら、「資本」と「革命」が言い争う場面はどつき漫才でやったらどうだろうなどと思ってしまったよ(^_^;)
劇中でも引用されていたが(チラシにも載っている)、この戯曲の序章に書かれた毒舌(「イタリアという国はますます馬鹿で無知になっていく」など)の方が印象に残ったのだった。
人形が演じていたのはパゾリーニの中年時代と天使だったが、果たして効果的に使われていたのかは不明である。
ということで、またも難解さに敗退状態であった。
劇場は中野の狭い商店街の一画にある集合小ホールビルに入っていた。周囲は下町臭くていい雰囲気。同じ下町でも二十三区の東側とはだいぶ違うのう。
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