「堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る」
講師:上野千鶴子、寺町みどり
会場:日比谷図書文化館コンベンションホール
2012年10月14日
会場は元都立図書館の地下ホール。150人定員だったが、参加申し込みは100人強だったようだ。見回すと若い人が多い。推測だが、図書館の若手職員とマンガ・同人系の表現の自由問題に関わっている人が多かったもよう。
冒頭、上野千鶴子は「4年も経っているのにこの問題について講演を頼まれたのはこれが初めて」と言っていた。講演依頼で一番多いテーマは「おひとりさま」で、理由は「無難だから」だそうだ。
タイトルになっている事件は、2008年匿名市民が市立図書館にBL本への苦情電話をかけたことにより、約5500冊の図書が書架から撤去され、さらに除籍されそうになったというもの。理由は「子どもに悪い」「過激な描写」など。最初、ネットの掲示板にこの話が投稿されたがどこの市の話か分からなかったという。
堺市だと判明してから情報公開請求をし状況を把握してから、住民監査請求を行った。これによって初めて事件が公になった。上野千鶴子がその代表者で、寺町みどりが実質な作業を担当したらしい。
問題なのは
*抗議は実際には一人の匿名市民と一人の議員によるものだった。特定の書名もあげられてない。
*図書館側の初期対応に問題があった。(他所の図書館にも幾つか同じことをしたらしいが、門前払いされた)その後も隠蔽に走った。
*実質的にBLでない本も入っている。表紙や特定の作家の作品全部とか、適当に選んだのではないか。
*背後にホモフォビアが存在する。
*図書館側は何をされているか認識しておらず、自発的に大量の本を集めて排除しようとしていた。司書は自分は被害者だと考えていた。「それでは一体誰が本を守るんですか?」と尋ねたら愕然としていた。
*その前に女性センターの資料室からジェンダー系の資料が排除されるという似たような事件があり、その時は著者たちが連帯したが、BL系ではそういうことは起こらなかった。また「非実在青少年」系もBLには熱心ではない。
基本としては、図書館にはあらかじめ「資料収集方針」と「資料除籍基準」があるのに、そのような圧力で簡単に特定図書を排除するのは市民の権利と財産を損なうということである。
図書館には様々な図書が存在するのが当然であり、自分と正反対の考えのものがあってもよい。上野千鶴子によると「図書館に『新しい歴史教科書』が入ってるのはOK。だって自分の金で買うのはヤダもん」だそうである(^O^;)
背後には一連のジェンダー系図書の排除運動と同じような動きがあったようである。(某宗教団体の影も……)
彼らはそれまでの市民運動の手法を学んで使っているが、対抗するこちらも同じように相手のやり口を研究しているとのこと。
住民請求というのは、請願や陳情よりも効果があるそうだ。ただ、公立図書館が指定管理になってしまうと情報公開請求できなくなってしまうという。
などなど質疑応答も含めて3時間近く続き、色々と聞きごたえあった。ただ、会場で熱心な意見が飛び交ったかというとそういうわけでもなかったのが、この問題の難しさを表わしていたのかも知れない。
エロい小説なぞこの世にゴマンとあれど、なぜか「BL小説」というと微妙な雰囲気になってしまうのは困ったもん。そういう意識も変えないとなあ……とも思ったのであった。
注-私個人の記憶による省略や間違いがあるので完全な記録ではありません。
| 固定リンク | 2
コメント