「思秋期」:いつかまた春が来る……といいな
監督:パディ・コンシダイン
出演:ピーター・ミュラン
イギリス2010年
子どもっぽい人間が歳取れば、なんとか落ち着いた大人になるかというと、そういう訳ではないらしい。わがままな老人になるだけだ。
この主人公もその一人だろう。昼間から酒を飲み、自分の子どもぐらいの年齢のチンピラとケンカし、折角親切にしてくれたチャリティ・ショップの女性にわざわざイヤミを言いに店を再訪するのである。これでは好きな女の子の髪の毛をわざと引っ張る小学生と変わらない。
そんな男が身近に、自分よりも困難と苦境にある人間に気付いて初めて自分を真摯に顧みるようになる。その先にあるのは不幸か幸福か……
中心の役者三人の演技が大きく比重を持つ作品だ。P・ミュランのプッツン暴走中年も大したものだが、純粋さと切羽詰った様子が混合したような女の不可解さをオリヴィア・コールマンがうまく表わしている。
美男美女の美しいロマンスとは全く異なる話である。周囲は暴力に満ち寒々とした世界だ。地味ながらよく描いたものだと思う。
ただ、自身も俳優である監督の脚本や演出の力量を疑うものではないが、なんか作り物めいた感触をなんとなく感じないこともない。それだけが不満である。
中年プッツン度:8点
犬愛護度:3点
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