「ソハの地下水道」:ドブの中の日々
監督:アグニェシュカ・ホランド
出演:ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ
ドイツ・ポーランド2011年
地下が暗けりゃ地上もまた暗い--というような、実話に基づいた映画である。
時は1943年、ポーランドで下水道の修繕管理をしている男が、ゲットーから逃走路を作ろうとしているユダヤ人にバッタリ遭遇。報酬目当てで、内部を知り尽くした下水道に彼らを匿うのであった。
何せ下水だから暗くて臭いは、ドブネズミは徘徊するはで大変なもんである。匂い付き映画じゃなくてヨカッタぜい。そんな中に小さい子供を含めて数家族が暮らすのである。当然、日常の些細なことでいがみ合いも起こるしストレスはたまる。
主人公も含めて登場人物はみなごく平凡な庶民であり、善人や立派な人物というわけではない。
しかし、金が目的だった主人公も段々と情が移ってきてしまい、無償でさらに危険を冒して助けるようになるのであった。
面白いのは彼の奥さんで、ユダヤ人が連行されるのを見て「かわいそうな人たちよね」なんて言ってたのが、夫がやっていることを知ると腹立てたりして、いかにも一般市民の反応はこんなもんだろうなと思わせる。
ドイツ軍占領下だから、町中にはドイツ兵がウロウロ、市民の密告もあるかも知れず、地上も地下も安心はできぬ。
結末は戦争の終了と重なるが、その後のポーランドのたどる道を思うとまた気分が暗くなるのであった--(~_~;)
かように暗い話を145分も見せ続ける手腕には脱帽だろう。
監督のアグニェシュカ・ホランドは以前に『秘密の花園』を見たことがあるが、最近は米国でTVドラマの演出を専らやっているもよう。久々の長編映画のようだ。
ポーランド出身だけあって、ポーランドなまりの英語作品なんかにせず、単純なお涙頂戴ヒューマニズム作品にもしなかったのはさすがである。
庶民の立場から見たホロコーストの一面という点で高く評価できるが、ただ、やっぱり暗いんだよね……
闇度:8点
光度:5点
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