「アルゴ」:エイリアンの国にて
監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック
米国2012年
*タイトルの一部変更と追加あり
これまでベン・アフレックの監督作は『ゴーン・ベイビー・ゴーン』と『ザ・タウン』と見てきたが、この新作は一番エンタテインメントとして完成度が高いと言えるだろう。
舞台は1979~80年、イランで実際に起きた米国大使館人質事件である。冒頭、当時のニュースの再現があって、怒り狂ったイランの民衆が大使館を取り巻き、やがて中になだれ込む場面が描かれる。
大使館員たちを人質に--だが、実は6人だけこっそりとカナダの大使の私邸に逃げ込んでいたのだった。
その6人を米国国務省がひそかにどうやって国外脱出させるのか……という実際にあった事件のウラ話である。
そのために虚構のSF映画を製作する話をでっちあげるというのがミソだ。イランでロケするという設定である。
当時はちょうど『スター・ウォーズ』が大ヒットした直後。A級からZ級まで様々なSF映画の企画が柳の下のドジョウを狙って立てられ、そして実際に幾つかは作られたのである。もちろん、日本でも作られましたね\(^o^)/ そういう時代背景が描かれていて懐かしい--って私もトシだのう。
元CIAの主人公が工作のためにイランへ乗り込むあたりから、もうハラハラドキドキしっぱなしとなる。あんまりハラドキw(☆o◎;)wするんで心臓に悪い。あ、血圧高い人にも悪いぞ。
逃走劇が片付いて一件落着の瞬間には思わずホッと全身の力が抜けるほど。そのせいか、「もう分かったからいいや」と言わんばかりに、席を立って出て行った客が数人いた。映画はまだ続いているのに、だ。
ちゃんと最後まで見てから映画館を出て思い返してみると、なんだか後に何も残っていないような気がした。ハラハラドキドキしてそれだけで終わってしまったような印象だ。「映画万歳」な部分があるにしてもね。
それで連想したのは数か月前に見た『プロメテウス』である。
もちろんあの映画みたいに話の筋が全く脈絡なくて前後関係が爆走--なんてことはないが、煽り立てるようなハラドキ感が長々と続くというのはかなり似ている。
とすれば、作中に登場するイラン人たちはまさにエイリアンであろう。集団で言葉も通じず、怒り狂いまくしたて、またある時は猜疑心に満ちた視線で陰険に詮索する彼らは、凶悪な異星人なのだ。
それに相反するメッセージが併存しているのも気になる。一体、監督はイランの革命をどう考えているのか? 評価しているのなら民衆をエイリアンの如く描くのはどうよということになる。
過去の実話で社会性があり映画ネタが登場するこの映画は、ハリウッド受けして今年のアカデミー賞に絡むのは確実である。またこれまでの監督作品で一番世評も高いようだ。
しかし私は、ベン・アフレックは詰まらぬモンを作ってしまったのう(@_@;)と言いたいのである。
ところで、作中に登場するニセSF映画の原作はロジャー・ゼラズニイの『光の王』だそうだ。もっとも、もしかしたら現実の事件の方で使われた脚本のことかもしれない。私は『光の王』は未読なのでよく分からないんだけど(^^ゞ
ハラドキ度:7点
米国の大義度:4点
【関連リンク】
「ペトレイアスCIA長官はなぜ突然辞任したのか」
中東のウラでCIAまだまだ活躍中
| 固定リンク | 0
コメント