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2012年12月 8日 (土)

「危険なメソッド」:反省なき天然

121208
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:キーラ・ナイトレイ、ヴィゴ・モーテンセン、マイケル・ファスベンダー
イギリス・ドイツ・カナダ・スイス2011年

予告ではあたかもフロイトとユングと女性患者ザビーナの三角関係みたいな話のように見せていたが、実際は違っていた。
主人公はあくまでもユングであり、彼とザビーナとの関係を中心にフロイトとの師弟関係も描かれるというものである。

錯乱状態でユングのいる精神病院へ運ばれてきた若い娘ザビーナ。療法を進めるうちに隠されたマゾヒズムが明らかになる。やがて男女の仲へと進んでしまう。
一方、緊張しつつユングはフロイトと対面する。後継者と認められ「息子」とまで呼ばれるが、やがて神秘主義への傾倒からフロイト先生と決別してしまうのであった。

これらがほとんど対話劇として進められる。やたらと対話が多いなと思ったら、元は戯曲だったのだ(映画脚本も同じくC・ハンプトンが担当)。

裕福な妻の庇護の下でぬくぬくと過ごすユング、学会での勢力争いに汲々とするフロイト、患者の立場から自らも医者への転身を図るザビーナ……三者の思惑がそれぞれにぶつかる。
背景となる建築や小道具、衣装も当時の風情を忍ばせ、クリムトやエゴン・シーレの絵を見るようだ。だが、普通のコスチューム・プレイとはやや趣が違い、その水面下のドロドロとした人間の心理が微妙なバランスで潜んでいるのであった。そういう部分はクローネンバーグっぽいと言えるだろう。

見終わって思ったのは「ユング……勝手な男(`´メ)」ということである。ネットの感想で「天然無礼者」と評していたものがあったが、まさに言いえて妙だ。
周囲に対し傍若無人に振る舞い、しかも全く自分でそれに気づいていない。
フロイトが同じユダヤ人であるザビーネに対して「アーリア人を信じるな」と警告する場面があるが、三人のその後を見るとまさにその通りにユングだけは安泰なのであった。

しかし正直なところ「だからって、それがどうなのよ」と思ってしまったのも事実。現代の人間にとってあまり響くものがない。
もっとも、そう感じたのはこういうトラブルに遭遇して、上の空だったせいかもしれないが。

超が付くくらいの熱演はキーラ・ナイトレイだ。もう観客は冒頭から度肝を抜かれてしまうだろう。フロイト役のヴィゴ・モーテンセンは「えっこれがヴィゴ(^^?)」と驚くぐらいの貫禄で、別人のよう。
マイケル・ファスベンダーは「も、もしかして地か?」と思ってしまうほどな勝手男ぶりを見せていた。それよりも、私は彼のお肌がツヤツヤツルツルとしてキレイなのに感心してしまった。最近、めっきりシワが増加してきたので、ぜひとも手入れの秘訣を知りたいところである。


男女葛藤度:8点
師弟葛藤度:7点


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コメント

この映画でしたのね、危険な目にあったのは。。。

ユングって、妻の財力で好きなことが出来て苦労知らずの根っからのボンボンですよね。そういう特権を意識しないかのように振舞えるというのが、天然たる所以かもね。

キーラちゃんは熱演ですが、顎がはずれそうな表情の発作シーンは、途中からワンパターンに思えて。。。
彼女主演の新作『アンナ・カレニーナ』を水曜日に鑑賞予定です。予告編見ると、全編、劇場を文字通り舞台にしてしまっているというアイデアが素晴らしく、映像の作りもすごく凝っていて期待大!

投稿: レイネ | 2012年12月 9日 (日) 18時07分

キーラ・ナイトレイは熱演が過ぎて思わず引いてしまう人も多数のようで……。
「アンナ・カレーニナ」はこちらでも予告やってましたな。公開はまだ先みたいですが。

クローネンバーグの新作を早く見たいもんです。

投稿: さわやか革命 | 2012年12月11日 (火) 07時16分

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