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2013年1月

2013年1月27日 (日)

「アルマジロ」:医者と兵士は三日やったらやめられない

130127
監督:ヤヌス・メッツ
デンマーク2010年

「衝撃のドキュメンタリー」という宣伝文句はよく使われるが、これほどそれに相応しい作品はないだろう。
そもそも、こんな内容がよく公開できたなという場面が幾つも出現する。軍が公開を許可したのも驚きだが、映されている兵士たちもよく認めたなと思ってしまう。

デンマーク軍の若い兵士たちがアフガニスタンへ派遣される。「平和活動」が名目だが、実際は最前線でタリバンを一掃するのだ。
兵士の一人は涙モードの母親になぜ志願したのかと問われて「サッカーと同じで、習ったら実際にやってみたいから」と答える。

直前の出陣祝いパーティではストリッパーを呼んでアレしてコレしてのバカ騒ぎ。とても親や恋人には見せられません(・へ・)
基地に到着するとしばらくは戦闘もなくて退屈な日々が続く。ここではアダルトビデオが夜のお相手だー。

しかし、ある日突然攻撃が これはマジに驚いた。突然銃声が鳴り響き、弾丸が傍をかすめていく。迫力あり過ぎだと思ったら、兵士たちのヘルメットに小型カメラを付けてもらって撮影してるようだ。道理でと納得である。
何回かの戦闘のうちに怪我人や死者も出てくる--。
弛緩と緊張が交互にやってくるというのは、ベトナム戦争のルポでよく読んだことがあるが、まさにそんな日常だ。

敵への憎悪が募り、戦闘の興奮にうかされ、混乱の中で酩酊状態となる。映像の迫力や緩急を心得た編集によって、そんな兵士たちの内心に見る側も苦も無く同一化してしまう。しまいには「やっちまえ~!(^^)!」と声をかけたくなるのだった。
その中で軍法会議ものの事件が起こる。その経緯についても、これまたよくぞ公開を許可したものだ。

ナレーションはなく、一貫して冷徹に事実をとらえている印象だ。兵士たちの行動についても何の価値判断も付け加えられてはいない。全ては観客側に任せられている。
ただ、謎なのは映像はそういうタッチなのに、付けられている音楽が娯楽映画並みに扇情的なのである。な、なんで……(?_?)
音楽全部カットせいと言いたくなるが--それとも、わざと虚と実を混乱させるために娯楽作品を模してみせたのか?なんてうがった見方をしたくなってしまうほどだ。

観客で女性は数名のみ。題材が題材なんで軍事ヲタ風の男性が多かった。
いかなる立場であろうと、刺激的、興奮的なドキュメンタリーには間違いない。

【追記】
ところでアルジェリア人質事件について、政治家が被害者のことを「企業戦士」と呼んだのには驚いた。
「戦士」というからには「戦争」がありそれに参加しているはずである。
しかし、それはどのような戦争なのか?防衛なのか、侵略なのか?
何かを収奪しているのか、それとも収奪されているのか。
いみじくも政治家の言葉によって、国民が姿なき戦争に参戦していることが明らかにされたといえよう。


愛戦度:9点
平和度:3点


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2013年1月26日 (土)

ヘンデル「アルチーナ」(演奏会形式):雪にも負けず魔女にも負けず

130126
第10回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン
演奏:三澤寿喜指揮キャノンズ・コンサート室内合唱団&管弦楽団
会場:浜離宮朝日ホール
2013年1月14日

ヘンデル・フェスに前に行ったのはホグウッドが指揮した時「ヘンデル・オペラの名アリア」である。
三澤寿喜は以前は解説なんかに出てきただけだったのに、最近は指揮もやっているようだ。

さて、この日は関東以北は大雪の日。雪国の人にしたら大したことはないだろうが、雪がまるで集中豪雨のように降っているのなんて生まれて初めて見た(!o!)--というぐらいに降っていた。
幸い最寄りの私鉄は走っていたので(エライ!)都心までたどり着けば、後は地下鉄で会場前まで外に出ずに行くことができたのであった。
交通の混乱のため15分以上遅らせて開演したが、客席は6割程度の埋まり具合だったようだ。

さて、『アルチーナ』は1730年代のヘンデル先生の代表作といえるぐらいに大当たりだったそう。
英雄と呼ばれた騎士ルッジェーロは魔女アルチーナの魔法によって島に虜にされてすっかり腑抜けに そこで婚約者ブラダマンテは男装して後見人と共に島に潜入。だがアルチーナの妹にして同じく魔女のモルガーナに一目ぼれされてしまうのであった(ありゃりゃ)。
さらにモルガーナに突然フラれてブチ切れ状態の恋人や、アルチーナによって獣に変身させられた父を捜しに来た少年がからむ。

以前、『ロデリンダ』を見た時にも感じたのだが、ヘンデルの男の主人公ってロクなの少ないんじゃないのか? このルッジェーロも登場時は「アルチーナたんがいない(;O;) どこへ行ってしまったの~」みたいな様子でウロウロしてるじゃありませんか。
さらに婚約者が変装してたのを明かした後もなんだか煮え切らない態度。いけませんなー。
当時はカストラートが歌ったこの役、ここでは波多野睦美が担当。ど~しようもない男を好演でした。でも「ヒルカニアの岩石の洞窟に」ではキリッと雄々しく歌い上げたんでありますのよ(*^o^*)

タイトルロールは野々下由香里で、「ツンデレ」の逆の「デレツン」みたいな役柄。最初は年上女房みたいな感じで優しかったのが、裏切りの確証を得ると未練を残しつつも段々とコワくなってくるという--。さすがの貫禄で二面性をモザイク状ににじませていた。

魔女モルガーナは高橋薫子という人だった。歌を聞くと古楽系の人ではないという感じた。声量はあるし歌いまわしも巧み(こちらトーシロなんで単なる印象ですが)だったが、完璧に出来上がり過ぎてて、この人他の役をやっても同じようなのでは?などと思わせるのが難であった。
解説を読むと、この役は劇の中で喜劇担当なのだが、あまりコミカルなイメージではなかった。(三澤氏の意向か?)
また、広瀬奈緒の少年役は、小柄でリリカルなソプラノなのでまさに適材適所といえた。

演奏会形式のため歌手は出番の時だけ正面に立ち、後は脇の席に座って控えていた。合唱団は3曲だけあるので1幕と3幕に登場。
コンミスは杉田せつ子。自分のグループでは爆奏気味な彼女だが、なんと意外にも煽り立てるようなヘンデル先生のオーケストレーションによく合う所があった。第2幕に他の楽器は沈黙してアルチーナと二人だけになる曲では、やや不気味っぽく弦の音が響き、ジワジワと迫ってきた。
もう一人の立役者はチェロの懸田貴嗣だったといえよう。2人の魔女がそれぞれ失恋を嘆く歌のバックで弾いて、それがまた泣かせるんだよねー。これからは懸田氏を「泣かせのチェロ」と呼ぶことにしたいぞ。

先ほども述べた「ヒルカニア~」はテンポよく勇壮な曲。ポイント投入されたホルンが調子よく乗せてくれた。前の方に座ってたガイジン客がラテン乗りで身体を揺らしていたのがおかしかった(^^♪

ということで、大雪の中めげそうになったが、結果は行ってヨカッタ\(^o^)/であったよ。

先日映画の『レ・ミゼラブル』を見たのだが、それとつい比べてしまって「ヘンデル先生の曲って、本当にキャッチーだなー」と思ったのだった。
まあ、短い歌詞(波多野睦美によると、単語数はダウランドの十分の一だそうな)を長々と繰り返すというのもあるだろうけど、やはり聴衆観客の心をグワッとわしづかみにする所があるですよ\(◎o◎)/!
それに対し『レ・ミゼラブル』の曲は難しい。--えーと、これは技巧の事じゃなくてですね、キャッチーさにおいて、ということです。
まだまだヘンデル作品はこれからも時代を生き延びていくと感じたのであった。

さて、来年は『サウル』をやるそうだ。
会場で配られたチラシの中にアレグロ・ミュージックのチラシが入っていて、来日予定のアーティストが載っていた。それによるとE・ガッティの演目は「バッハを中心」とあるではないか(!o!) えー、折角のコレルリ・イヤーなのにやってくんないのー
2014年の秋はラ・ヴェネクシアーナの『ポッペア』が これは大期待よ。


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2013年1月19日 (土)

「フランケンウィニー」(2D吹替版):わが友よ永遠なれ

130119a
監督:ティム・バートン
米国2011年

昔々、小さな田舎町ニューオランダにヴィクターという孤独な少年が暮らしておりました。隣人はやたらと厳格そうな町長だけど気にしない(^^♪ 新しく来た理科の先生はマッド・サイエンティストみたいだけどやっぱりキニシナイ クラスメイトは変な奴ばかり。どうやら町でまともなのは彼の優しいパパとママだけのようです。
ところがある日、愛犬スパーキーが不慮の死を遂げてしまいます。嘆き悲しんだヴィクターは何とか生き返らそうと墓を掘り起こしてしまうのでした……。

吹替版で見た。その時にかかった予告の種類を見る限り、映画館側は子供向け作品と設定しているようだったが、客席には子供は二人しかいなくて、後はみんな大人だった。
というか、「絵」が全体的にコワ過ぎでしょう 小さいお子ちゃまは喜ばないんじゃないの。

でも、スパーキーかあいいです。特に生きてた頃より復活後のツギハギ縫い目だらけになってからがもっと可愛い。背中に縫い付けられた、お母さんのものとおぼしき水玉模様フキン(?)もチャーミングだ 犬嫌い派な私も骨を投げてやりたくなっちゃう。おまけに飼い主思いの健気なヤツ。シッポ振るとたまに取れちゃうのが難だけどね(・・;)

過去作品のパロディや引用が満載なんだけど、分からないのが結構あった。グレムリン(大好き!)やガメラぐらいはさすがに分かるが……。コロッサスって何(^^?)

結論はやっぱり「愛」!なんですね。今までのT・バートン映画ではあまり愛は報われなかったように思うけど。
主人公の両親がエエ人で良かった(^v^) 監督の理想の両親像かしらん。

130119b

可愛くてキモくて怖くてホッと心温まるお話でした。字幕版でウィノナ・ライダーの歌聞きたかったなー。
ところで、夏になったらスパーキーの犬小屋は冷蔵庫にした方がいいかも。腐っちゃったら大変だ~(^^;)


猫愛好度:4点
犬愛好度:9点

←ご主人様ラブ


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2013年1月18日 (金)

日本インターネット映画大賞外国映画部門へ投票

既に締切過ぎとなっていますが……すいません

[作品賞投票ルール(抄)]

選出作品は3作品以上10作品まで
持ち点合計は30点以下。ただし投票本数が3本の場合は30点(10点×3作品)とする
1作品に投票できる最大は10点まで
《日本インターネット映画大賞》

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【作品賞】(3本以上10本まで)
  「ムサン日記~白い犬」   8点
  「ルルドの泉で」   7点
  「大陸」   4点
  「マージン・コール」   3点
  「ミヒャエル」    3点
  「気狂いピエロの決闘」   1点
  「少年と自転車」   1点
  「もうひとりのシェイクスピア」   1点
  「フランケンウィニー」   1点
  「黙殺」   1点
【コメント】
映画祭とか企画上映とか未公開DVD鑑賞とかそんな作品が半数になってしまった
「大陸」はイタリア映画祭で見て、確かによく出来たいい作品だと思うが、だからといって日本でロードショーやっても客が入るとは思えないのが問題である。
もっとも、「博士の異常な愛情」や「ベニスに死す」だって当時は一、二週間で打ち切りだったんだから、公開されることに意義があるのかも。
ドキュメンタリー枠は「壊された5つのカメラ」で決まりかと思ったが、「黙殺」の平原をひたすら掘り続けるブルドーザーの映像があまりにも絶望的かつ虚無的でこちらにしてしまった。ドキュメンタリーもエキセントリックな人物や事態を追うだけでなく、やはり印象的な「絵」が欲しい。


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【監督賞】              作品名
   [パク・ジョンボム] (「ムサン日記~白い犬」)
【コメント】
ポスターがはがれているシーンや「アメイジング・グレイス」の使い方など、ただ者ではない印象である。

【主演男優賞】
   [ヒュー・ジャックマン] (「レ・ミゼラブル」)
【コメント】
狼男だけじゃないんだぞっと。

【主演女優賞】
   [ロビン・ライト] (「声をかくす人」)
【コメント】
もう「ショーン・ペンのヨメ(だった)」とは呼ばせない、堂々たる演技であった。

【助演男優賞】
   [ヒューゴ・ウィーヴィング] (「オレンジと太陽」)
【コメント】
記事にも書いたが、こんな名優だったとはおみそれしました。ごめんm(__)m

【助演女優賞】
   [レア・セドゥ] (「ルルドの泉で」)
【コメント】
一番悩んだのがこの賞。これからの期待こめてってことで。

【ニューフェイスブレイク賞】
   [パク・ジョンボム] (「ムサン日記~白い犬」)
【コメント】
例年、子役は除外。彼は監督ではなく、主演男優として投票する。

【音楽賞】
  「ジェーン・エア
【コメント】
ゴシックホラーっぽい雰囲気が音楽によってかなり出ていた。

【ブーイングムービー賞】
  「プロメテウス
【コメント】
学習能力皆無の登場人物たちを見て、ひたすら「なんじゃ、こりゃ~(~o~)」である。

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【私が選ぶ○×賞】


 【最優秀オタク賞】
  「ピープルvsジョージ・ルーカス
 【コメント】
濃ゆいオタクがいっぱい。特典映像の「ロー&オーダー」パロディの結末に思わず感涙した。

【最優秀犬映画賞】
  「ムサン日記~白い犬」
【コメント】
「ヒューゴの不思議な発明」?「アーティスト」?冗談ではない。犬嫌いの私も号泣ですよ。年末の「フランケンウィニー」の猛追をかわしてみごと受賞。来年今年は猫映画の登場に期待したい。

【最優秀ロボット賞】
   [マイケル・ファスベンダー] (「プロメテウス」)
【コメント】
「新スタートレック」のリメイクが作られるなら、是非ともデータ役をお願いしたい。

【最優秀女子会映画賞】
  「サニー 永遠の仲間たち

【最優秀男子会映画賞】
  「裏切りのサーカス

【最凶邦題賞】
  「声をかくす人」
【コメント】
全くもって意味不明。

【ちゃぶ台ひっくり返し賞】
  「マンク~破戒僧~
【コメント】
この賞は、見終ってあまりの結末に思わず「なんじゃ、こりゃ~。観客をなめとんのか!」(ノ-o-)ノ ~┻━┻ガシャーン と、ちゃぶ台をひっくり返したくなる気分になる映画に与えられる栄光ある賞である。
ヴァンサン・カッセルがきれいなネーチャンと黒ミサを……(^Q^;)ハアハアという期待は完全に裏切られた。恨んでやる~

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 この内容(以下の投票を含む)をWEBに転載することに同意する。
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なお、ついでに恒例で2ちゃんのベストテンを貼っておこう。こちらは日本・外国作品一緒である。
こう見てみると「桐島」の最強ぶりがうかがえる。レンタル出たら見ようかしらん。
ベストとワースト双方で高得点を得ている「ダークナイト~」はやはり話題作に違いない。

1位 (1004点 66票) 桐島、部活やめるってよ
2位 (*797点 61票) ダークナイト ライジング
3位 (*785点 66票) ドライヴ
4位 (610点 40票) 別離
5位 (609点 52票) アルゴ
6位 (567点 40票) 裏切りのサーカス
7位 (543点 42票) アベンジャーズ
8位 (497点 38票) アーティスト
9位 (470点 39票) 007 スカイフォール
10位 (455点 38票) 最強のふたり

ワースト
1位 (-89点 21票) ダークナイト ライジング
2位 (-62点 19票) ハンガー・ゲーム
3位 (-40点 12票) プロメテウス

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2013年1月13日 (日)

「もうひとりのシェイクスピア」:監督不詳、或いはエメリッヒは二人いた!?

130113
監督:ローランド・エメリッヒ
出演:リス・エヴァンス
イギリス・ドイツ2011年

今宵、劇場で「アノニマス(作者不詳)」と題された芝居が始まる。
舞台に現れた案内人がシェイクスピアの謎について語る。自筆原稿が存在せず、遺産もろくに残さなかった。一体この人物の正体は?
と、舞台で始まる劇がそのまま映画へとつながっていく趣向だ。

その正体は、オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィア。高名な貴族だが、道楽にかまけて財産を食いつぶし、政略結婚の妻とは不和である。
貴族としては芝居なぞ公にはできないので、ロンドンで評判のベン・ジョンソンをとっつとかまえて彼の名で上演するように命令する。しかし、作家にも五分の魂。彼が拒否して「作者不詳」で上演すると芝居は大ウケ。そこへ、大根役者のシェイクスピアが「俺が書いたことにしろ」としゃしゃり出るのだった。

ろくでなし、ごくつぶし、逝ってよしなシェイクスピアが観客から喝采を受ける姿を、バルコニー席から見おろすエドガーの心境は複雑である。そして、また同じ作家としてのベン・ジョンソンの胸中も……。
さらに、若いエリザベス女王と出会った少年時代のエドガーの回想が交錯する。そこから宮廷に潜む陰謀が絡んでくる。

脚本はかなり面白く出来ている。あらゆる方面に才能がありながら、劇作への欲求と貴族としての地位に引き裂かれてきた男の悲劇がよく描かれている。
実際のオックスフォード伯がどんな人物だったのか知らないが、ここでは才能が有り過ぎたままそれを生かせなかった男である。現実を顧みず虚構の世界に没頭する。
そして、主人公は「剣」ではなく「ペン」すなわち虚構を描く言葉で世界を変えようとする。しかし、終盤でそんな二項対立自体が無に帰してしまうのであった。

最後の謎解きが性急過ぎるのと、人名がこんがらかってしまうのが難だ。エリザベス朝の貴族や文人の名前ぐらいさらっておいた方がいいかも知れない。

歴史ものとしても色々見ごたえがある。薄汚れたロンドン、粗末な芝居小屋、謹厳な貴族の館、錬金術師でもいそうなエドガーの書斎。雪中の女王の葬儀の様子などは特殊効果を大いに活用か。
現代の人間にすればシェイクスピアは古典だけど、当時の市民にとってはまさにリアルタイムな話だったというのもよーく分かった。
あと、本当に平土間では立ったまま見てたんかね。あんな長い芝居を見てたら疲れて足が痛くなっちゃう……
唯一の不満は音楽。当時のものはリコーダー吹きがちょこっと出てくるだけだった。

主役のリス・エヴァンスは傲慢な貴族にして不本意な人生を送った男という複雑な両面性を見せている。エリザベス女王はヴァネッサ・レッドグレーヴ。若い頃を実の娘が演じるという特殊技を使用だが、老醜のエリザベスを容赦なくさらすという女優魂を展開。女王の下着姿って珍しいね。デヴィッド・シューリスは判別付かなかった(^^ゞ
なお青年時代のエドガーを始め、イケメン男優多数登場。そちらに興味のある方は要チェックであろう。

だが、ここで問題は監督である。なんとローランド・エメリッヒ(!o!)
あの、大味娯楽破壊活劇専門のエメリッヒですよっ
(゜o゜) → (;一_一) → (^○^;)

すいません_(_^_)_ペタッ おみそれしました。
予告見て面白そうだなとは思ったんだけど、もう監督の名前見ただけで止めちゃったりして……。でも思い直して見に行ってヨカッタ
久々に知的好奇心をくすぐられるエンタテインメントを見せてもらったという気分になった。やればできる監督、エメリッヒである。

鑑賞後は芝居を観に劇場へ行きたくなること間違いなし。


演劇度:9点
陰謀術策度:8点


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2013年1月11日 (金)

「レ・ミゼラブル」:熱唱・熱演・熱映画

130110
監督:トム・フーパー
出演:ヒュー・ジャックマン
イギリス2012年

言わずと知れた人気ミュージカルの映画化。舞台は見たことないが、豪華出演陣な配役にも惹かれて見に行った。
元々のユゴーの原作は文庫本5冊の長編小説である。普通なら2時間半強で収まらないだろう。

というわけで、やはり見た印象は「大河ドラマの総集編」だった。3幕構成で物語がどんどん進んでいく。そのせいか意外に歌が頭に残らない。アン・ハサウェイはオスカー主演女優賞に最も近い所にいるという評判だが、印象に残っているのは彼女が熱唱している姿であり、音楽ではないのだ。
おまけに泣きながら歌う曲が結構あって、それもなんだかなーと思わざるを得ない。

あと他の感想でも多くの人が指摘していることだが、顔のアップの場面がやたらと多い。ソロで歌っている人物をクローズアップするのはスポットライトを当てているような効果があるかもしれないが、映画の「絵」としてはどうよという気分になる。

とはいえ、美男美女が繰り広げる激動の歴史絵巻ミュージカル、見ごたえあって正月にお屠蘇気分で鑑賞するにはうってつけの一本であった。(もっとも私が見たのは大みそかだったが) 千円(サービスデイだったんで)だったんで十分に元は取れたと言えよう。
終わった後は、劇場版を見てみたくなった。

ヒュー・ジャックマンは元々歌って踊れる役者だったのではまり役というところか。狼男以外の代表作が出来て良かったね(^_^)v
無意味に胸毛を見せるシーンがあるのはファンへのサービスかな

コゼット役のアマンダ・セイフライドは歌えるとは知らなかったが、すごーく線の細いソプラノ。舞台版もこういうタイプの歌声の女優さんやるの?
そもそも蝶よ花よと育てられた娘(悲惨な子ども時代はともかく)で、そのまま玉の輿へ直行という役柄はあまり面白みがない。これじゃ惚れた男に尽くしても報われぬエポニーヌ役の方が分がいいのは仕方ないだろう。

ヘレナ・ボナム=カーターは亭主役のサシャ・バロン・コーエンともども変な役をやらせたら右に出るモンはいないですな。
それと、ボーイソプラノの子役少年が歌が(演技も)うまくて感心。


革命度:5点
純愛度:7点


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2013年1月 6日 (日)

「ホビット 思いがけない冒険」(3D字幕版):テンコ盛り状態であと二杯お腹に入るか?

130106
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イアン・マッケラン、マーティン・フリーマン
米国・ニュージーランド2012年

『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚がいよいよ公開。当初は二部作でギレルモ・デル・トロが監督のはずだったが、スケジュールがずれ込んで降板した。残念である。
でピーター・ジャクソンが監督復帰で、しかもなぜか三部作になったのであった。
長尺の『指輪物語』が三部作になるのは道理だとしても、こちらの原作『ホビットの冒険』は完全に児童書で話は単純で短い。三部作って無理じゃないの? 大ヒットを当て込んで三倍稼ごうというのだろうか。
2D字幕版を見たかったが、近くでやっている映画館がないので3D字幕版にした。

物語の冒頭が『ロード・オブ・ザ・リング』1作目と同じ日に設定されているのは意外だった。歳取ったビルボはともかくフロドまでも登場するとは驚き。一作目の製作から10年以上経っているが、そこは得意の特殊効果で役者の経年変化は幾らでも修正可能なのであ~る
そのビルボが若い頃の冒険を回想を始めるという設定だった。

原作はかなりノンビリのどかな調子で進んでいくのだが、映画の方も同じようなテンポである。ドワーフたちが歌ったり、トロル三人組に料理されそうになったり--それに加えて、活劇や戦争の場面ははるかに長く力が入りまくってテンコ盛り状態だ。。
なるほどこれでは長尺三部作になってしまうのも当然だろう。あと二作もこんな風に長い戦闘場面がそれぞれ最低三回は入るかね。見る前からお腹いっぱい状態である。
もうこうなったら続編はミュージカルでやってもいいぞ。

それと、女性の登場人物はガラドリエルしか出てないが、このまま男だけの物語で突っ走っていくのか(?_?) 原作ではガラ様さえも出て来なかったと記憶してるが……。まあ、フ女子は喜ぶかもな(@∀@)

美術や衣装は相変わらず見事なもんである。ドワーフの髭の編みこみ(?)など細かいところまで凝っている。
音楽はトラッド色がより濃くなって嬉しい。
悪役の造型は一層リキが入っていて、トロルやらゴブリンやらオークやら醜悪な面々の悪相ぶりには、作り手側の喜びをヒシと感じざるを得ないほどだ。またゴクリ、じゃなかったゴラムの表情豊かさも一層の磨きがかかっていて感心した。

主役のビルボはTVドラマの現代版『シャーロック・ホームズ』ワトソン役で人気のマーティン・フリーマン。立派な主人公……と言いたいところだが、話の展開上、終盤以外は傍観者的な立場の場面が多くて、まだそんな感じではない。飄々としている部分は好感だけど。続編での活躍が期待だ。
この一作目での中心人物は、ドワーフの王子トーリンだろう。リチャード・アーミティッジがそれこそ堂々と演じている。

3Dは予想したよりも見やすく、かなりの迫力があった。画面に向かって何かが飛んできて思わず目をつむってしまったことも二、三回あり。
また映像は高画質の技術が開発されたそうだが、なんだかビデオっぽい質感で良し悪しといったところである。

『ロード~』であれほどもめた字幕問題は、今回はあっさりと原作準拠でなんの問題なしだった。「いとしいしと」も出てくるしね。なんでも吹替えの方はさらに瀬田貞二節が炸裂しているそうである。
思えば『ロード~』三部作は、ファンにとっては字幕問題で余計に熱が上がった側面もあった。字幕を全文書き取りした人がいたり、当時は全盛期だった2ちゃんねるでさかんに熱い議論が戦わされていたものだ。
私は三部作が進むにつれて熱がどんどん下がってしまい、『王の帰還』に至ってはDVDも買わなかった。

今回の映画化でよかったのは、ドワーフにもイケメンがいるんだと判明したことである。これまでのイメージだと、髭モジャ過ぎて男女の区別もつかないとか、そんな噂だったのだ。これは画期的であるよ\(◎o◎)/!
逆に不満なのは、サルマンの扱い方が軽すぎることだ。畏れ多くもクリストファー・リーが健在で再び演じてくれたというのに、こりゃなんだ
このころの設定ではまだガン爺は格下の魔法使いでサルマン様の方がずっと偉いはずである。それをないがしろにしおって、許せんな(*`ε´*)ノ☆ 断固抗議したい。

エルロンドは「影が薄い」というのがジョークになっていたが、今回もやはり薄かった。こちらのシリーズでは後でもっと濃く活躍する場面が出て……くるといいね(^^)

一応、三部作最後まで見るつもりである。ただ、上映時間はこれ以上長くするのは勘弁してほしい(出来れば戦闘場面やアクションを短くしてくれい)。
米国を初め海外では大ヒットしているらしいが、日本ではふがいない結果になっているようだ。日本はますますガラパゴス化が進んでいるのかね? まあ三百年鎖国してた国だし世界の大勢には影響ないだろう。


ドワーフの髭の濃度:9点
エルロンドの影の濃度:3点

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2013年1月 3日 (木)

「マリー・アントワネットに別れをつげて」:女たちのベルサイユ

130103
監督:ブノワ・ジャコー
出演:レア・セドゥ
フランス・スペイン2012年

ヒロインは王妃マリー・アントワネットの朗読係の若い娘。本を選んで読んで聞かせるのである。王妃ともなると朗読係がいるんだ、へー(・o・)と驚く。
舞台はベルサイユ宮殿。折しもフランス革命の発端となる暴動が起こる。その三日間の物語である。

暴動が起こったといっても今のようなテレビ・ラジオやネットがあるわけじゃなし、噂のようにヒソヒソ話で曖昧に伝わってくるだけだ。宮殿の使用人たちの間でも同様に伝わり、みなソワソワし始める。

王妃は既に中年期に入り若さと美しさが失われつつあるのを気にしている。代わりにポリニャック夫人を寵愛するが、それの描き方は完全に同性愛だ。聡明さと誠実さを持ち合わせていても、その使い方を完全に間違えている中年の王妃をダイアン・クルーガーがよく演じている。
彼女に心酔している読書係の娘はそれを嫉妬を持って眺めていることしかできない。

それなのに、王妃はヒロインに王宮を脱出するポリニャック夫人の身代わりを演じろと命じるのであった。惚れた相手から恋敵のために犠牲になってくれと言われているのである。
しかし一方、王妃に愛されている人間に変身するというのは願望の成就でもあるので、その意味では皮肉な成り行きなのだった。

予告では、ここからさてどう話が展開するのか(~o~)という印象だったのだが、実際はもう終盤になってこの場面が出てくる。終わり方は唐突で、「ええっ、これでもう終わりなの(゜o゜)ポカーン」となってしまった。
劇中のセリフでわざわざヒロインの出自が謎であることを触れていながら、結局それについては何も明らかにされない。こりゃ、肩すかしだわい

実際のベルサイユでロケしたとのことで、鏡の間も登場する。衣装や小道具も豪華。あとは王侯貴族よりも裏方である使用人の日常が描かれているのが興味深い--というようなコスチューム・プレイとしての面白さはあったが、ストーリーの方は不完全燃焼のままに終わってしまった。
他の人の感想で「起承転結の結がない」(←フランス映画の特徴らしい)というのを見かけたが、まさしくそんな感じだ。

主役のレア・セドゥは『ミッション:インポッシブル』で悪女役をやって注目されたそうで、『ルルドの泉で』では箸が転げてもコロコロと笑い転げそうな健全な女の子を演じていた。が、ここでは一転陰にこもった内気な娘に見事変身している。若手女優の注目株に間違いなしだろう。

日曜の昼間に見に行ったのだが、客席が閑散としていて驚いてしまった。公開後まだ一週間なのに……(・・;)
劇場常連のオバサン客の姿がほとんどなく、歴史ものが好きそうな中年夫婦と、ベルばらファンぽい若い女の子たちと、レア・セドゥかヴィルジニー・ルドワイヤン(ポリニッャック夫人)目当てとおぼしき男性客(ヌード見られるし)ぐらいしかいなかった。
後でネットで検索してみるとどうもベルばらのファンは「女たちの話」というのが気に入らなかったらしい。やはりイケメンが出てないとダメなのか。


【関連リンク】
《Music for a while》より「Les Adieux a la Reine」

女たち度:8点
起承転結度:5点

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2013年1月 2日 (水)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 1月版

新しい年が来て嬉しかったのは遠い過去だったような気がします。
マイナーなコンサートも段々とチケット取りがメンド臭くなってきてしまったです。

*14日(月)アルチーナ(ヘンデル・フェスティバル・ジャパン)
演奏会形式だけど衣装を着たりするのかな。上演は3時間半か4時間ぐらい?
なんと今月チケット取っているのはこれだけ。

他にはこんなのも。
*12日(土)レクチャー&コンサート チェンバロの魅力(大塚直哉)
*14日(月)ミサ・ロム・アルメ(ヴォーカル・アンサンブル・カペラ)
*18日(金)F・クープランの全景2(中野振一郎)
*19日(土)メランコリア ハックブレットの世界(小川美香子)
*22日(火)ナポリの夜課(山内房子、杉田せつ子他)
*25日(金)アンサンブル・アルタイル

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2013年1月 1日 (火)

今年のカレンダーは

これだ!

130101

手前のオバサン職員がゴム手袋をはめているのが気になる(^o^)

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