« 「フランケンウィニー」(2D吹替版):わが友よ永遠なれ | トップページ | 「アルマジロ」:医者と兵士は三日やったらやめられない »

2013年1月26日 (土)

ヘンデル「アルチーナ」(演奏会形式):雪にも負けず魔女にも負けず

130126
第10回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン
演奏:三澤寿喜指揮キャノンズ・コンサート室内合唱団&管弦楽団
会場:浜離宮朝日ホール
2013年1月14日

ヘンデル・フェスに前に行ったのはホグウッドが指揮した時「ヘンデル・オペラの名アリア」である。
三澤寿喜は以前は解説なんかに出てきただけだったのに、最近は指揮もやっているようだ。

さて、この日は関東以北は大雪の日。雪国の人にしたら大したことはないだろうが、雪がまるで集中豪雨のように降っているのなんて生まれて初めて見た(!o!)--というぐらいに降っていた。
幸い最寄りの私鉄は走っていたので(エライ!)都心までたどり着けば、後は地下鉄で会場前まで外に出ずに行くことができたのであった。
交通の混乱のため15分以上遅らせて開演したが、客席は6割程度の埋まり具合だったようだ。

さて、『アルチーナ』は1730年代のヘンデル先生の代表作といえるぐらいに大当たりだったそう。
英雄と呼ばれた騎士ルッジェーロは魔女アルチーナの魔法によって島に虜にされてすっかり腑抜けに そこで婚約者ブラダマンテは男装して後見人と共に島に潜入。だがアルチーナの妹にして同じく魔女のモルガーナに一目ぼれされてしまうのであった(ありゃりゃ)。
さらにモルガーナに突然フラれてブチ切れ状態の恋人や、アルチーナによって獣に変身させられた父を捜しに来た少年がからむ。

以前、『ロデリンダ』を見た時にも感じたのだが、ヘンデルの男の主人公ってロクなの少ないんじゃないのか? このルッジェーロも登場時は「アルチーナたんがいない(;O;) どこへ行ってしまったの~」みたいな様子でウロウロしてるじゃありませんか。
さらに婚約者が変装してたのを明かした後もなんだか煮え切らない態度。いけませんなー。
当時はカストラートが歌ったこの役、ここでは波多野睦美が担当。ど~しようもない男を好演でした。でも「ヒルカニアの岩石の洞窟に」ではキリッと雄々しく歌い上げたんでありますのよ(*^o^*)

タイトルロールは野々下由香里で、「ツンデレ」の逆の「デレツン」みたいな役柄。最初は年上女房みたいな感じで優しかったのが、裏切りの確証を得ると未練を残しつつも段々とコワくなってくるという--。さすがの貫禄で二面性をモザイク状ににじませていた。

魔女モルガーナは高橋薫子という人だった。歌を聞くと古楽系の人ではないという感じた。声量はあるし歌いまわしも巧み(こちらトーシロなんで単なる印象ですが)だったが、完璧に出来上がり過ぎてて、この人他の役をやっても同じようなのでは?などと思わせるのが難であった。
解説を読むと、この役は劇の中で喜劇担当なのだが、あまりコミカルなイメージではなかった。(三澤氏の意向か?)
また、広瀬奈緒の少年役は、小柄でリリカルなソプラノなのでまさに適材適所といえた。

演奏会形式のため歌手は出番の時だけ正面に立ち、後は脇の席に座って控えていた。合唱団は3曲だけあるので1幕と3幕に登場。
コンミスは杉田せつ子。自分のグループでは爆奏気味な彼女だが、なんと意外にも煽り立てるようなヘンデル先生のオーケストレーションによく合う所があった。第2幕に他の楽器は沈黙してアルチーナと二人だけになる曲では、やや不気味っぽく弦の音が響き、ジワジワと迫ってきた。
もう一人の立役者はチェロの懸田貴嗣だったといえよう。2人の魔女がそれぞれ失恋を嘆く歌のバックで弾いて、それがまた泣かせるんだよねー。これからは懸田氏を「泣かせのチェロ」と呼ぶことにしたいぞ。

先ほども述べた「ヒルカニア~」はテンポよく勇壮な曲。ポイント投入されたホルンが調子よく乗せてくれた。前の方に座ってたガイジン客がラテン乗りで身体を揺らしていたのがおかしかった(^^♪

ということで、大雪の中めげそうになったが、結果は行ってヨカッタ\(^o^)/であったよ。

先日映画の『レ・ミゼラブル』を見たのだが、それとつい比べてしまって「ヘンデル先生の曲って、本当にキャッチーだなー」と思ったのだった。
まあ、短い歌詞(波多野睦美によると、単語数はダウランドの十分の一だそうな)を長々と繰り返すというのもあるだろうけど、やはり聴衆観客の心をグワッとわしづかみにする所があるですよ\(◎o◎)/!
それに対し『レ・ミゼラブル』の曲は難しい。--えーと、これは技巧の事じゃなくてですね、キャッチーさにおいて、ということです。
まだまだヘンデル作品はこれからも時代を生き延びていくと感じたのであった。

さて、来年は『サウル』をやるそうだ。
会場で配られたチラシの中にアレグロ・ミュージックのチラシが入っていて、来日予定のアーティストが載っていた。それによるとE・ガッティの演目は「バッハを中心」とあるではないか(!o!) えー、折角のコレルリ・イヤーなのにやってくんないのー
2014年の秋はラ・ヴェネクシアーナの『ポッペア』が これは大期待よ。


| |

« 「フランケンウィニー」(2D吹替版):わが友よ永遠なれ | トップページ | 「アルマジロ」:医者と兵士は三日やったらやめられない »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ヘンデル「アルチーナ」(演奏会形式):雪にも負けず魔女にも負けず:

« 「フランケンウィニー」(2D吹替版):わが友よ永遠なれ | トップページ | 「アルマジロ」:医者と兵士は三日やったらやめられない »