「アルバート氏の人生」:人生の三点セット「金」「嫁」「店」
監督:ロドリゴ・ガルシア
出演:グレン・クローズ
アイルランド2011年
グレン・クローズはしばらく映画で見かけないなーと思っていたら、TVドラマの仕事が多かったようだ。ケーブルTVでたまたま見た警察ものでは署長役をやっていた。
この映画は以前、舞台でやっていたものを映画化したとのことである。とすれば、かなり思い入れがあったのだろう。その甲斐あってか、昨年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。
舞台は19世紀のアイルランド、ホテルでベテラン給仕として働く中年男アルバートが、実は女だった!--当時、身寄りのない少女が一人で生活するには男に成りすますしか他に方法がなかったのである。
という事実が明らかになる冒頭はよかったのだが、その後がなんだかグダグダになってくる。
身近に「男装した女」と「普通の女」の「夫婦」を発見したアルバートは、自らのライフプランを思い描く。自分の店を持ち、そこには自分の「妻」を置き……。
ここで私の頭の中はデッカイ印で埋め尽くされた。長年男装していたからって、セクシュアリティの対象も女になるのかっ(?_?)
そもそもそういう指向があったから、男として生きる道を選んだのだろうか?
それとも、長年自分を隠して他者と交わりを断って生きてきたから「愛」とか「家庭」というものが全く理解できないのか?
その行動原理は明確には描かれていない。
長い間、ウェイターとして客を観察してきたから観察眼はあるだろうと思って見ていると、実際はアルバートは空気を読めず他人との関係を築けず「痛い」行動をする人物であることが明らかになる。
中盤以降の彼(彼女)がイタさを発揮する部分は、なんだか他人の痴話ゲンカを眺めているようでグダグダ感が高まってしまうのであった。
マイク・リー監督の『家族の庭』でも非常にイタい中年女性が登場するが、かなり粗忽でどーしようもない印象だからアタタタ(^O^)と笑ってしまう。しかし、アルバートはそもそもの境遇が悲惨なので簡単に笑う訳にはいかない。こちらの顏が引きつってしまうようだ。
で、顏を引きつったままラストを迎えるのであった。困ったね。
役者たちの好演は疑いようもないが、結局何を描きたかったのかは私には不明のままだった。
特に女優陣は脇も含めて達者なもん。グレン・クローズとジャネット・マクティアがアカデミー賞にノミネートは当然だろう。主演女優賞は『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』のメリル・ストリープに行ってしまったが、正直なところG・クローズに譲ってやってくれよ、あんた三回目だろうと言いたくなってしまった。
若手のミア・ワシコウスカも健闘である。
男優については、ジョナサン・リス・マイヤーズはどこに出てるんだと思ったが、子爵役だったのか。全く気付かなかった(^^ゞ ブレンダン・グリーソンは余裕の演技か。
そして粗暴で金はないが野心だけはある若者を演じるは、アーロン・ジョンソン……って、ええっ(!o!)『キック・アス』の主人公かい これまた気付かなかった。いや~、あのヘナヘナした若いモンがすっかりたくましくなってご両親もお喜びでしょう。これから公開の『アンナ・カレーニナ』に出てるのね。こりゃ期待ですな。
男装度:9点
女心度:不明
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コメント
男装・女装趣味とかトランスジェンダーには基本的に好意的なんですが、トレイラーでのグレン・クローズが妙にキモいのでパスしました。
>役者たちの好演は疑いようもないが、結局何を描きたかったのかは私には不明のまま
そういう印象を持って、映画見る気がしなかったんです。
>アーロン・ジョンソ・・・あのヘナヘナした若いモンがすっかりたくましくなってご両親もお喜びでしょう。これから公開の『アンナ・カレーニナ』に出てるのね。こりゃ期待ですな。
『ノーウェア・ボーイ』に主演したのが縁で23歳年上の女流監督と結婚して、二人の姓をくっつくてテイラー=ジョンソンに二人とも変えました。現在22歳にして姉さん女房の連れ子二人と自分の子供二人の四人の父親で、頼もしい限りです。
『アンナ・カレーニナ』では、必殺流し目の女たらしの役よ。
投稿: レイネ | 2013年2月 4日 (月) 07時05分
|グレン・クローズが妙にキモいので
まあ、これはそもそもキモい人物という設定なので、仕方ないでしょう。対するにJ・マクティアの男役は完璧。男前でカッコエエです(^o^)
22歳で4人の子持ちというのはすごいもんですね(・・;)
「キック・アス2」にも主演するんでしょうから、各方面でひっぱりだことということなのね。
投稿: さわやか革命 | 2013年2月 5日 (火) 06時59分