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2013年3月12日 (火)

「奪命金」:貯めるも必死、使うも必死

130312
監督:ジョニー・トー
出演:ラウ・チンワン、リッチー・レン、デニス・ホー
香港・中国2011年

ジョニー・トーの新公開作。タイトルが意味不明で(前売り券買う時に苦労した)てっきり銀行強盗の話かと……(・・;)
実際のところは、金を奪う話じゃなくてヒトの命をも奪う金というモノの物語なのだった。

ギリシャの債務危機によってユーロ直滑降的下落、世界を揺るがす金融危機によって窮地に追い込まれる三組の人々が描かれる。
事前のあらすじだとこの三組がつながっているようだけど、実際にはバラバラでほとんどオムニバスに近い。

一つはお人よしのヤクザが羽振りのいい親友に兄貴分の保釈金を工面してもらったが、直後に株の下落によってあっという間に窮地に陥った親友と共に右往左往するというエピソード。
それから、金融商品担当で成績不振のためクビ寸前の女性銀行員が、虎の子の貯金を殖やそうとしたオバサンに高リスクの商品を売りつけてしまう。
そして、その二つのエピソードに共通する事件を担当する刑事の妻が、マンションの購入を決めた途端に金融危機のニュースが……となる。

もっと有機的に三つの物語が絡んでいるのかと思ったが、そういうことはなくてその点物足りなかった。一つ一つの話に文句はないけど、続けて並べられてしまうとやや冗長で、J・トーのファンだけに通じるような内輪向けの作品かなと思えてしまった。

一番面白かったのは女性銀行員のエピソード。隣の窓口では同僚が株が下落するさなかに「こういう時こそお買い得なんですよ」と平然と売りつけているのを見て焦る。しかし、そこまで厚顔な真似をする勇気はない。
だが最後は、働く女子ならみな思わず喝采する結末がちゃんと待っているのであった。


金が命度:7点
命が金度:5点

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ジョニー・トー御大。一年に一回でもジョニー・トーの作品を大画面で観られるこの幸せ。 良かったなぁ〜これは。ジョニー・トーらしい、でもジョニー・トーにしては軽めのテイストで。私の中ではジョニー・トー最高値ではないにしても、人を唸らせる、しかも軽快な作り。 ただし、こなれ過ぎていて小綺麗な感じが、のめり込む所まで連れて行ってくれなくてそこは残念。 「人生なんて、勝つか負けるかの2択しかない。」 「アベノミクス」が説かれるまで、つまりこの作品が公開される2013年まで、日本も不景気真っ... [続きを読む]

受信: 2014年1月16日 (木) 11時30分

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