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2013年3月19日 (火)

「ゼロ・ダーク・サーティ」:恐るべきは女の直感?

130319
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェシカ・チャステイン
米国2012年

言うまでもないことだが、ドキュメンタリー映画とドキュメンタリーっぽい映画は違う。あるいは、白とも黒とも断定的に描いていないからと言って中立とは限らない。曖昧な灰色かも知れない。見終わってそんなことをグダグダと考えたくなる映画である。

911の黒幕オサマ・ビンラディンの行方を探し求めるCIAの女性分析官がパキスタンに派遣される。最初は拷問もいやいや眺めていたものの同僚が自爆テロの犠牲になるなどして、拷問オッケーokな「過激派」に変貌していく。

冒頭、テロリストへの拷問シーンが続いてゲンナリするが、実際はこんな生ぬるいもんではないらしい。さらにオバマ政権になって拷問が問題になり中止したところ、情報が集まらなくなったという。しかし、本当に止めたかどうかは怪しいもんである。

それらすべてが淡々と描かれていくので娯楽色は皆無に近い。事前には迫力ある戦争映画もしくは戦争アクションかと予想していたけど、正直見ていて楽しいとか面白いというものではなかった。下手すると眠気虫sleepyに取っつかれるだろう。

圧巻なのは、海軍特殊部隊による真夜中のビンラディン暗殺の件りだろう。実際の作戦通り40分(?)で描いていて、軍オタな方々も満足するような実録風の作りになっている。(ヘリが墜落してたとは知らなかった)
もっとも現実面から見れば、深夜に他国に武装ヘリで侵入し丸腰の市民を勝手に殺害(女にも容赦ない)となると、何様のつもりだ(*`ε´*)ノ☆と言いたくなる。ならず者国家たぁどこのことよpunch

さらに不可解なのは、ヒロインがビンラディンの遺体袋を開けて顔を見て本物かどうか確認する場面である。これ実際にこんなことしたの? 外見がクリソツな影武者だったらどうすんのよ(?_?) それとも映画を盛り上げるための虚構か。

そこに至るまでの追跡劇はヒロインの仏頂面の怒り--その強引さはもはや「ヒステリック」と言っていい--によって支えられ、殺害後は「女の涙」で締めくくられるというこの物語をどう解釈したらよいのか。
所詮、これはすべて「女のヒステリー」に還元されるような出来事であるという、女性監督による韜晦なのだろうか。

だが、それにしては登場する米国側は誰もかれもカッコエエshine 上は小汚い言葉遣いのCIA長官から下は海軍の兵士まで、ダメダメな奴とか腰抜けとか無能は一人もいない。みんな国を支えるためにまじめに仕事をしている(ようだ)。
一方、テロリスト側は少し拷問されただけでゲロっちゃうような軟弱な卑怯者ばかりである。
くしくも、この実録風劇映画と対を成す娯楽映画風戦争ドキュメンタリー『アルマジロ』が少し前に公開されている。こちらを見たら、この中に登場する兵士になりたいとかカッコエエなどと思う者はいるまい(よほどの軍オタを除いて)。
その一点をもってしても、『ゼロ・ダーク・サーティ』がプロパガンダ映画だと言われても仕方ないだろう。


ところで、拷問でヘビメタ曲を大音量で流している場面が出てきた。実際の拷問で使われたバンドってもし知ったら怒らないか? それとも「お国の役に立った」と喜ぶのだろうか。
もっとも、ヘビメタに限らず「ブランデンブルク協奏曲」や「ミサ曲ロ短調」だってデカい音で流せば拷問に使えるわな。


拷問点:4点
暗殺点:8点


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コメント

観て大分経ってから、この映画は、プロパガンダの体裁をとってるけど実は巧妙な反米映画なんじゃないか、という気がしてきました。つまり、アメリカ女性監督による気骨ある内部告発というわけで。
もしくは『ハート・ロッカー』で見られたように、戦時の緊張感は生理的快感もしくは中毒になってしまうのと同様、戦争は人間にとって必要悪であるというシニカルな達観。そう思わないと、あまりに信憑性に乏しい情報に基づいて、大掛かりな軍事行為を行ってしまうのが恐すぎる。。。しかも、片付けてから死体の顔だけで判断するなんて。。。
ところで、ライフ・ファインズが賞金稼ぎの外人傭兵としてチラッと出演してるのがよかった。
近年のアメリカ映画としては、よく出来てる部類なんじゃないかしら。

投稿: レイネ | 2013年3月20日 (水) 01時58分

ビンラディンはCIAのスパイだったそうです。
もう要らないから、殺しただけでしょう。

投稿: 六代目久米仙人 | 2013年3月20日 (水) 07時02分

レイネさん、この映画見たんですね。

|アメリカ女性監督による気骨ある内部告発というわけで。

『ハート・ロッカー』もそうでしたが、監督の意図をどちらに取るか意見が分かれるようです。そもそもどっちにも取れるような作り方になってるので正直判断がつきません。
ただ、戦争ものは反戦・好戦、イデオロギーに関係なく基本的にほとんどは「快戦」映画であるという観点からみれば、この作品は「快」度が高い方に傾いていると感じましたな。


|ビンラディンはCIAのスパイだったそうです。

この数年前にとっくに死んでいる、という説もあるそうですね。

投稿: さわやか革命 | 2013年3月23日 (土) 10時23分

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