「シュガーマン 奇跡に愛された男」:感動に国境なし
監督:マリク・ベンジェルール
スウェーデン・イギリス2012年
今年のアカデミー賞を見事獲得したドキュメンタリー。
1970年代初めに二枚のアルバムを出したものの売れずに終わったシンガーソングライターのロドリゲス……だが、彼の音楽はなぜかアパルトヘイト下の南アフリカで爆発的なヒットとなっていたのであった
素性も現在の境遇もはっきり分からない彼を、南アフリカのジャーナリストが探っていくというのが出だしだ。
だが話が進んでいくにつれ、なんだか既視感が--『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』に似ているのだ。
今はパッとせず、くすぶっているミュージシャンが遠い国(日本と南アフリカ)で熱狂的に迎えられライヴを行なう←ここがクライマックスになる。
ただ『アンヴィル』の方は素直に感動できたんだが、どうもこちらは違う。
映像がないのになんとかドキュメンタリーに仕立てようと無理している印象あり。影絵アニメみたいのでごまかしているけどどうなのよ(^^?)
三人の娘たちは出演してるけど、奥さんの事は全く話にも出ない。どうなってんの
南アフリカでレコードが売れた金はどうなった?という問題は尻切れトンボ。
などなど不完全燃焼な部分が多い。
反アパルトヘイトを支えた曲になったというのは感動的な話だし、彼の曲や歌は印象深いし、さらには当人の人柄もよさそうだが、なんだかドキュメンタリー作品として見ると『アンヴィル』の二番煎じ的なイメージが勝ってしまうのであった。
賞をあげるのなら同じくアカデミー賞にノミネートされた『壊された5つのカメラ』の方を選びたい。
破壊されていったカメラの映像を見せていくという手法が新鮮だし、ラストの映像が心に残る。それにアカデミーに招待されて米国に来たのに、空港で送還されそうになったというトラブルに遭ったご苦労さん料の意味も含めてだ。
ロドリゲスの歌は確かにホセ・フェリシアーノを思い浮かばせる。ただ、声やサウンドはもう少し後にブレイクしたジム・クローチにも似ている。デビューが少しずれていたら売れていたかもしれない。
奇跡度:8点
ドキュメンタリー度:6点
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