「華麗なるギャツビー」:お隣りが華麗過ぎるのですがどう対処したらいいでしょうか
監督:バズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ
米国2012年
「ギャツビー」は過去何回か映画化されているらしいが、見るのはこれが初めてである。1974年版は若い頃のロバート・レッドフォードがどうも苦手なんで、パスしていた。今回もディカプリオがやはり苦手なんでやめておこうと思ったが、予告を見て面白いかなと思って行ったのであった。
ついでに、バズ・ラーマン監督の作品も見るのは初めてだ。
結論から言ってしまうと、期待は裏切られた。原作もこんな話で、米文学を代表する小説なのかい?……と戸惑いモードになってしまったのである。
ヒロインのデイジーは「悪女」ということらしいが、キャリー・マリガンはとてもそんなようには見えない。清楚なお嬢様というイメージで、自分の母親、そして自らが属する階級の価値観に忠実であるだけに思える。それだけにラストの手のひら返しがあまりに唐突過ぎるような(?_?)
主人公は登場する時に花火と星をバックに背負って登場するが、その時に傍観者のニックの独白(原作から引用?)をかぶせる。これは危険な手法である。映像で表現する自信がないからテキストを援用したんだろうなんて余計な憶測を呼ぶか、或いは映像とテキストの印象が相反していたらその場面は崩壊してしまう。
あの場面は無理やり演出家の意図通りに持ってこうとしてるなー(観客がどう受け取るか関係なく)、とそれをまず第一印象として思ってしまった。
ギャツビーは常に謎の人物なので、凡人である観客が理解できるのは語り手のニック以外にはいない。デイジーの夫も描かれているまんまで心理的なものについては不明。
デイジーは主人公の粗暴な部分に驚いて逃走したかのように描かれているが、亭主の方がよほどマチズモの塊のように見えるからなんだか説得力がない。
それで、唐突だけどなんとなく『タイタニック』を連想してしまった。あの映画にノレる人ならこちらにもノレるだろう。それと、俳優ディカプリオのファンかどうかで評価が違ってくるのも同様だ。
予告では素晴らしく見えたパーティ場面、これが一番の期待外れ。なんだか美しいだけで、豪華な舞台のショーとかエンタテインメント・パークの健全なパレード(ご家族で楽しめます)を見ているよう。これがバズ・ラーマンのテイストなのか。
ケン・ラッセルを引き合いに出している人がいたが、とんでもない(-_-メ) ケンちゃんだったらもっとケバケバ派手で俗悪で退廃的で、辛辣に空虚なバカ騒ぎを見せてくれるだろう。で、最後は……なぜか純愛に至るのよ(←ケンちゃんなら)。
かような理由により、全体的に幻想的でないファンタジーを見せられているという気分だった。
禁酒法時代のばか騒ぎ&悪行だったらTVドラマの『ボードウォーク・エンパイア』の方が遥かに見ごたえがあるだろう。
それから、階層の低い若者が虚業で莫大な富を獲得して身分の高い女に憧れる--というのは先日見た『コズモポリス』と全く同じパターンである(結末まで似ている)。
アメリカ近現代(男性)文学の主要テーマというのは百年近く経過しても不変ということなのだろうか。
もっとも、主人公を取り巻くのが豪華なパーティでなくてストリートの暴動だというのが大きな違いかもしれない。
純愛度:6点
退廃度:5点
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コメント
わたしも先週観ました、2Dで。3D上映のロードショー公開はとっくに終了しているので、ミニシアターで。
レッドフォードとミア・ファロー主演のを高校時代に観てデフォルト化してるのと、レッドフォードもディカプリオも好きな部類の俳優、ということからさわやか革命さんのご感想・視点とはやっぱり異なりますね。
新旧映画2作で描かれたデイジーは「悪女」ではなくて、悪意やその他の意志の弱い「無垢な」女性だと思います。甘やかされて育ったお金持ちのお嬢様で親や夫に庇護がないと生きられない、世の女性からは反感を買うタイプ。ギャツビーのような男にとっては俺が守ってやりたい、と思わせる可憐な女性でしょうね。最後に彼女の取った行動も彼女の性格や生まれ育った環境から判断すれば納得いきます。(お金がすべて)
パーティーの騒ぎ方や邸宅がまるでディズニーランドみたいで、カリカチュアなのかマジなのか不明なほど成金趣味なのがいかにもMTV世代を感じさせて面白かったです。音楽もそうですが、成り上がりヒップホップ・スターの悪趣味そのもので。
ディカプリオの表情がレッドフォードそっくりに見える箇所がいくつかあって不気味なのと、受け狙いのクサい演技にちょっと引けてしまいました。それに対して自然な演技のマリガンとマグワイアは上手い!
全体としてはティーンや20代向けという感じなので、子供に薦めるにはいい映画でしょう。
投稿: レイネ | 2013年7月14日 (日) 19時38分
3D効果がスゴイ!という噂を聞いたんですが、やはりウン百円余計に払うのは癪なので私も2D版で見ました。
ネットでかなり感想が上がっているので読んでみると、原作のヒロインは「悪女」(それも米文学史上最悪の)で、前作のミア・ファーローはホントに嫌な悪女を演じていた。でもマリガンはそんな感じではない--という意見が多かったのですよ。
前作を見てないんで私には判断付きませんが。もっとも、今回のデイジーもどうしようもない悪女で原作のイメージに最も近い、なんて書いてる人もいるから他人の意見は当てにならないかもですねー。
パーティ場面はもっと俗悪でエグイのを期待していたんで、残念でした。レイティングを調べたら「G」なんですね。それでは健全なものしか見せられないでしょう。
|全体としてはティーンや20代向けという感じ
ええ~、それだったら役者の方の世代も「トワイライト・サーガ」ぐらいにしないと(^_^;)
投稿: さわやか革命 | 2013年7月15日 (月) 22時15分