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2013年9月15日 (日)

「フルート・デュオの世界」:師弟壇差共演

130915
フルートの肖像 9
演奏:バルトルド・クイケン&前田りり子
会場:近江楽堂
2013年9月7日

チケットは即購入した。師弟共演にして、バルトルド・クイケンを近江楽堂(最大収容人数120人ぐらい?)で間近に聞けるなんてことはこの先ないだろうからだ。
私は夜の回の方に行った。

行った人は誰でもみんなそうだったと思うが、会場に足を踏み入れてビックリ(!o!) 真ん中にステージ台が置いてあって、その四方を囲むように客席の椅子が並べてあったからだ。
これまで三方を囲むというのはあったが、「完全包囲」は初めて。これも空調設備を直したたまものだろうか。以前のままだったら、真上から吹き付ける風が演奏者の脳天を直撃しかねない。

入場してきた客は楽譜台の置いてある方向から、前方となる方を推測して座っていった。当然後方の席は最後になってようやく埋まった(一応、完売)。だが、これが早とちりだったのは後で判明したのである。

演奏中は、バルトルドの足は怪我のせいで台の上に椅子を置いて座って吹いた。さらに身長差があるということでりり子女史はその脇の床に立った。しかも、一曲演奏することに向きを順番に変えて、全方向の聴衆にサービスしたのである! これには会場爆笑であった。

曲目は前半はオトテール、クープランのフランスものの二重奏、そしてバッハの無伴奏とである。
フランスものは抑制のきいた優雅な、まさに対話といった印象だ。バッハ独奏についてはプログラムにその曲名を見た瞬間に「もしかしてこれを演奏するのは!?(@∀@)」と期待するのが当然であろう。すると、それを見透かしたようにりり子女史が登場して「バルトルド先生のバッハが聞けると思った人、ごめんなさいm(__)m」と言ったのに笑ってしまった。

しかし独奏を開始するとそれまでの雰囲気とは一転、何やらキリキリと鬼気迫るものが彼女の背中から立ち上るのが感じられた(ちょうどこの時斜め後ろ方向の座席だったんで背中が見えたのである)。

休憩後のテレマン二重奏は打って変わって伸びやかな流れのようだった。草原を吹き抜ける二陣の風を連想した。
今度こそはのバルトルド独奏は、エマヌエル(息子)バッハのソナタだった。りり子女史の多分に緊張感を含んだ演奏とは異なり、ドッシリと落ち着いた趣きあり。
ステージの四方に客席を配置すると、向かい合う客席がよく見えて--時に見え過ぎて、目が合ったりして(^_^;) そういうことがあるのだが、この時にはちょうど私が座っている反対側の客席へ向いて演奏していた。見ているとそちら側の客の集中度がさすがにすごい 一様に食い入るような目つきでバルトルドを聴いているのであった。
一方、私のいる側は音的にも直接のインパクトがなくてちょっと残念無念であった。

ラストのフリーデマン(息子)バッハのソナタとなると、もはや二人の対話というのではなく剣戟の稽古のようだ。丁々発止で絡み合うという緊迫感あるものだった。

例によってりり子トークは怒涛の勢いで快調 バルドルドの生徒だったころの話も楽しかった。
またお願いしまーすと言いたいところだが、福岡の音楽祭も今年で終了とのことでは、彼らの来日の機会も減っちゃうかね(・へ・)


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