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2013年9月 1日 (日)

「25年目の弦楽四重奏」:めぐるよめぐる片思いの輪

130901
監督:ヤーロン・ジルバーマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン
米国2012年

私の守備範囲はもっぱら古典派より以前の音楽なので、正統的な弦楽四重奏はほとんど聞いたことがない。なので、この分野には全くの無知な者の感想である。
25年間続いた四重奏団がベートーヴェンの難曲の演奏会を前にして、解散の危機に陥るというのが発端である。突然、リーダー格で一人だけ年長のチェリスト(C・ウォーケン)が病にかかったために脱退すると宣言したのだ。
それをきっかけに元々あったトラブルやらいさかいの種が噴出する。

メンバーの内、二人は夫婦であり、その仲にもひびが入る。他にもオレは第二ヴァイオリンばかりじゃなくてこの際、第一もやりたい!とか。これで解散だ、いや別のチェロを入れて存続だとか、収拾がつかなくなる。しまいには、殴り合いまで勃発である。

こうなると、ロックバンドの解散・脱退騒動と大して変わりはないではないか。まあ同じ人間がやってることだから、そんなに違いはないってことかね。
それを考えると、紆余曲折あれど50周年のストーンズはすごい\(◎o◎)/! ZZトップは40周年で三人のメンバーは不動だ。

同じグループ内の夫婦や兄弟のような身内がいるのも問題である。縁の切れ目がグループの分かれ目となる。夫婦ならいざとなれば別れればいいが、兄弟姉妹となると泥沼に揃ってブクブク……

この映画の大きな売りの一つはそうそうたる面子が演奏家たちを演じていることだろう。ウォーケンの他に、フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナーと名優揃い。一人マーク・イヴァニールという人は知らなかったが、気難しい孤独な芸術家をうまく演じている。それぞれ演奏場面も立派なもんである。もっとも、実際に楽器をやっている人が見たらどう思うかは分かりませんが。
娘役のイモージェン・プーツはいかにもオヤヂが鼻の下を長くしそうな美人の娘っこを演じて、役者の平均年齢を下げるのに貢献している。

C・ウォーケンはつくづく歳を取ったなあ、なんて思って見てしまった。だが、よくよく考えたらあの「年寄り」感は演技のたまものではないのかっ それを考えるとさすが名優だとますます感心だ。

このように材料は極上品を揃えたのに、料理法の方は平凡である。キーナー扮する母親が腹を立てて娘をひっぱたく場面は定型通りで、見た瞬間「ひっぱたくぞやっぱりひっぱたいたか」としか思えなかった(^o^;) チェリストが亡き妻を回想する時に、映像として実物を出すのはベタ過ぎである。
演出面をもう少し何とかしてほしかった。

一貫してニューヨークの街が舞台となっているが、アクション映画やTVドラマに登場するようなゴタゴタした場所とは全く異なる、落ち着いた印象の街並みばかり登場する。もっとも、東京だってピンからキリまで色々だから驚くことではないかね。

四重奏団の名前は「フーガ」というらしいのだが、これはメンバーが片思いの連鎖をしているということを示しているのだろう。とすれば、その先頭は誰なのか。


音楽内幕度:8点
恋愛内幕度:5点

【関連リンク】
《やくぺん先生うわの空》

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