ラモー「レ・パラダン 遍歴騎士」:「華麗なる失敗作」への挑戦
上演:ジョイ・バレエストゥーディオ
演出・振付:錦織佳子
指揮:武久源造
会場:練馬文化センター大ホール
2013年9月27日
ラモーの「レ・パラダン」は1760年、作曲者77歳の時にパリで初演とのことである。武久源造の解説によると「大失敗」だったそうな。
物語は至極単純。年老いた求愛者に捕らわれの身となった恋人を騎士が助けに行くというものである。コメディ部分担当として侍女や老人の手下が出没して笑いを取る。
合唱を入れても歌唱の場面は少なく、器楽演奏がかなりを占めている。恐らくスペクタクルとしてバロックダンスや派手な場面転換が披露されたのだろう。同じバロックオペラと言っても、ヘンデル先生とは違ってじっくり聞かせるようなアリアは少ないし、あっても短い。
そういう点ではバレエ団が上演するのには打ってつけの作品とは言える。
ただし、天野寿彦がコンマスのオーケストラは当時のヴェルサイユ・ピッチ使用だけど、踊りの方は後の時代のクラシック・バレエの振付である。
主役の騎士は青木洋也で、体格もいいので騎士役にピッタリと言いたいところだが、歌い始めたところを聞いた時「これってテノール向けの役か?」と驚いてしまった。カウンターテナーが歌うにしては低過ぎだし、でも高音の部分もあるし……という調子で、歌うのが大変だったろう。これを完全に歌えるったら裏声も使えるハイテナー、みたいな歌手でないと無理なんでは? 当時はそんな歌手がいたのかしらん。
手下オルカン役の小林優というバリトンがお笑い担当ということもあって、聞かせどころ見せどころ満載でかなり目立っていた。同じバリトンの春日保人は役柄上(好色なじーさんですよ^_^;)やや不利だったようで
客はバレエ関係者が多いため、場面ごとの拍手は歌手ではなくてダンサーに送られていた。ダンサーの方々も衣装をとっかえひっかえ頻繁に登場して大変だ。
作品自体がもともとそういう構造ではあるが、バレエ・サイドから捉えたバロック・オペラというものを鑑賞したという気分である。
なお、来年は同じくラモーの「プラテー」の再演とのことだ。(前回の公演の感想はこちら)
会場は典型的多目的ホールで、確か以前コント集団ザ・ニュースペーパーの公演で来たことがある。金管やパーカッションを入れても、古楽の演奏には音響的に全く向いていないのが残念だった。
私はチケットぴあでチケットを購入したのだが、サイド席で私のいる列だけが端まで客が座っていた。おそらくその列の客は皆「非・関係者」でぴあから入手したんだろう。他の列は一人二人しか座ってないのに……(・へ・) 座席の売り方をも少し考えて欲しいもんである。
ついでにもう一つ。字幕の日本語が全体的に変だった。「屈辱する」なんて日本語はないだろう。「侮辱」の間違いか
「レ・パラダン」は過去にパリ・シャトレ座の来日公演があった。なんとW・クリスティ&レザール・フロリサンが音楽担当だったのだ(!o!)
しかし、この感想を読んでいただければ分かる通り、音楽を聞いているどころではなかったのである。目まぐるしい映像に全裸ダンサーズの出没……すごいもんだー。
そのため賛否両論甚だしかった。
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