古楽(2013~2016年の記事)

2015年12月31日 (木)

2015年を振り返ってみましたよ

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★古楽コンサート部門
「夏の夜のダルカディア」(アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア)
誰もよく知らない作曲家シリーズをこれからもお願いしたい。

J.S.バッハ「フーガの技法」(ザ・ロイヤルコンソート)

「コレッリ!!」(寺神戸亮&チョー・ソンヨン)
以前にも聞いたことはあったが、小さな会場で間近に見ると「フォリア」を弾く寺神戸亮の背後からはメ~ラメラとコレッリ魂が燃え上がっていた。涙目になってしまった。
当然のことではあるが、音楽のもたらす感動というのは会場の規模とか客の数とか、そういうもんには何にも関係ないなあと、ヒシと感じた。

「室内楽の夕べ フランスとドイツの作品を集めて」
「室内楽の夕べ ダブルリード楽器の饗宴」
この二つとも木の器主催。前者は3人の全く対等にして多彩なアンサンブルに感動。後者については、やはりオーボエ二本によるゼレンカのソナタ。もう二度とナマで聴く機会はあるまいよ。
ただ、残念なのは客が少ないこと。来年はもっと増えて欲しいなあ(*^_^*)

「オルフェ 18世紀ベルサイユ宮殿にて王に捧げられた音楽」(高橋美千子)
2016年は美千子萌え~になりそう。

ヘンデル オペラ「フラーヴィオ」(日本ヘンデル協会)
ヘンリー・パーセル「妖精の女王」(北とぴあ国際音楽祭)
やはりオペラは歌手が生きてナンボと感じた。とはいえ、バロックオペラを5本も見られて(聞けて)幸運な年でしたよ

*コンサートに関する事件としては、「親密な語らい」(前田りり子&佐野健二)中の地震だろう。
揺れには負けぬが、緊急防災放送には負けた_| ̄|○


★録音部門
古楽系
*「ドレスデン宮廷の室内楽作品集」(ヨハネス・プラムゾーラー&アンサンブル・ディドロ)
新進気鋭のヴァイオリニストによるヘンデル、ファッシュ、フックスなど。一人だけ突出したりせずにアンサンブルの調和のツボを押さえているのも好感。

*「パッヘルベルとバッハ」(ザ・バッハ・プレイヤーズ)
先輩パッヘルベルと後輩バッハの美しい(?)絆を抽出する好企画盤。特にBWV4が素晴らしい。来日してくれんかなー。

*「名器「グライフ」によるバッハとヴァイスの音楽」(佐藤豊彦)
もはや枯淡の域である。

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ロック・ポップス系
*「Tint」(大貫妙子&小松亮太)
歌唱・演奏はもちろん、選曲、曲順、アレンジ、録音、さらにパッケージ・デザインまで完璧に統一された美意識に貫かれている。一曲ごとの配信が普通という時代に、このベテランの意地みたいのには感嘆する。

*「カヴァード」(ロバート・グラスパー)
今の音楽状況のキーマンの一人。ジャズは守備範囲外だが、完成度高く聞かせるものがある。

*「オーケストリオン」(パット・メセニー)
録音自体は数年前に出ていてこんなものかと思ってたが、今年になって演奏の映像が出て認識を改めた。様々なアコースティック楽器に自分一人が弾いたフレーズをループさせ、どんどん変化させていく。古びた教会で、触りもしない楽器が演奏している様は懐かしい幽霊たちと共演しているようでなぜか郷愁を感じさせる。

*「アイ・ワズント・ボーン・トゥ・ルーズ・ユー」(スワーヴドライヴァー) ←忘れてて後から追加
昔よく聞いたバンドが、なんと17年ぶりに復活だい 元祖シューゲイザーということらしいが、マイブラの新盤がどうも今イチだった人間には、このパワーアップは嬉しい。


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2015年12月29日 (火)

「バッハのモテット」:燃えるバッハ

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クリスマスコンサート2015
演奏:ラ・フォンテヴェルデ
会場:ハクジュホール
2015年12月18日

最近はモンテヴェルディの全曲演奏公演を続けているラ・フォンテヴェルデ。イタリアのマドリガーレが専門ではあるが、今回はクリスマスコンサートということで、取り上げたのはバッハのモテットだった。

この曲だとやはり多人数の合唱がまず最初に頭に浮かぶが、彼らは当然ながら一人一声部での演奏である。
歌手は合計8人で、鍵盤・上尾直毅、チェロ・鈴木秀美が参加。

4曲のモテットは通常の大編成のものとは全く異なる表情を見せていたのは言うまでもない。これが同じ曲か(!o!)ってなぐらいに、表情に陰影あり、何やら情念が色濃く迫ってくる。謹厳実直な宗教曲、というイメージからかけ離れた別の一面を見せて(聞かせて)くれたのだった。
しかし一方で、各声部の横のバランスが崩れてバラバラに暴走しそうな危うさも感じたのも事実である。難曲だというし、実力派の彼らでもそうなってしまうのか……などと思った。

合間にナオキ氏のトッカータと、ヒデミ氏の無伴奏チェロが入った。
ナオキ氏はトッカータでもモテットでも、オルガンの上にチェンバロ載せて双方を同じ曲中で併用。それも頻繁に交代で--こういうのって珍しいような。
オルガンは以前のコンサートでも使っていたふいご式のものだった。もちろんふいご係のオヂサンも同じ人だ。

以前にこのグループが同じ会場でやった時はほぼ満員状態が続いていたと思うんだけど……空席が結構あった。バッハ先生じゃ地味でダメなのかしらん(^_^メ)


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2015年12月28日 (月)

ヘンリー・パーセル「妖精の女王」:古楽の女王は留袖で三々九度

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北とぴあ国際音楽祭
原作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:宮城聡
指揮:寺神戸亮
出演:レ・ボレアード&SPAC
2015年12月11&13日

今年度、最大の期待はこの公演であ~る。事前にSPAC単独の『真夏の夜の夢』まで見に行っちゃったりして(*^^)v ただし、こちらは野田秀樹が潤色したヴァージョンだったけど。

今回はさすがに原作に沿って演じるんだろうなあと思ってたが、新聞紙を使った舞台装置や衣装はそのままだった。ただし、森は照明でモノクロではなく色彩豊かな表情を見せている。
「セミ・ステージ形式」ということで、ステージの上にオーケストラが乗り、さらにその上に高いもう一つのステージを組んでそちらが「森」となっている。

パンフの解説を読んで「『妖精の女王』の決定版というのは存在しない」というのを初めて知った。上演する度に書き換えたり追加削除したり、組み合わせたりするものなのだという。
従って、かつてBS放送でやったグラインドボーン音楽祭ヴァージョンは、シェイクスピアの戯曲を若干省略していたが、ほぼもれなく芝居部分が入っていて(従って上演時間は非常に長い)そんなものかと思って見てた。しかし、そういう演出をしていたわけだ。

北とぴあヴァージョンは芝居の部分は簡略化され、さらにドタバタ度が上がっているようだった。登場人物の鬱屈度が大きい野田版を見ていてた目には、演じている役者は同じでももうおマヌケ度アップ 特に男性陣はおバカとしか言いようがない言動だ。
なにせ、冒頭から寺神戸亮がいよいよ開始と指揮棒をサッと振り上げた瞬間に、四人の若い恋人たちがオーケストラの前へドドーッとなだれ込んでくるのである。後は推して知るべし(^O^;)

その後、芝居の相談をする職人たちも同じく「下」に登場。「上」の森では妖精たちが楽しく遊んでいる。合間には詩人が登場する短いコントのような寸劇が挟まれる。人間たちが森へ上がって行って、騒動が起こるという次第だ。
オベロンが大木に化していたり、恋人たちが棒(樹)をよじのぼるのはSPAC版と同じである。

ここで妖精役の歌手たちもセリフを喋るのを聞いて、当然のことだけど同じ声を出すと言っても歌手と役者じゃ全然違うというのを改めて実感した。歌手は歌えばホール全体に届くような声を出せるだろうがセリフでは難しい。ソプラノの広瀬奈緒はセリフが多くてご苦労さんでしたm(__)m
一方、昨今の芝居は大劇場ではマイクを使うのが普通となっている。音楽にも演劇にも向いていない北とぴあのようなホールで、あれだけ生声を届かせられるSPAC陣はやはり役者やのうと感じたのであった。

物語が進行するにつれて段々と芝居から音楽の比重が増えてくる。
オベロンとタイテーニアの和解の後、森と人間の世界が逆転して、「上」が人間界となって婚礼の儀が行われる。
お祝いに来た女神のジュノー(波多野睦美)が、妖精パックの押す台車(荷物運びによく使われるヤツ)に乗って現れたのには笑ってしまった。しかも、帰りは自分で押して戻るとゆう……(^o^;)

ここで劇場のスタッフと何やら話していたオベロンが指揮の寺神戸亮に近寄り、「折角のエマ・カークビーさんがいらしてんだからここで一曲歌ってもらいましょうよ。お客さんも期待してますよ、ね、ね」などと声をかけると、エマが登場して「嘆きの歌」を歌うのであったよ(!o!)
彼女は中盤から妖精の合唱に加わったり、ソロを歌ったりしていたが、正直なところ歳のせいか声に勢いがあまりなかった。しかし、銀色のほつれ髪に黒いショールを羽織ってヨロヨロと現われた彼女は、婚礼には全くふさわしくない暗い内容の歌を熱唱した。でもって、寺神戸氏の独奏する泣かせのヴァイオリンがこれまた嘆き節を盛り上げる。
なんでこんな暗い歌を……と思うが、嬉し楽しの婚礼と対比させるように元々ここで挿入される曲なのだという。
あれ、そうだったのか すっかり忘れてました(~_~;) ともあれ、歳は取ってもやっぱりエマ・カークビー、彼女の威光が劇場をヒタヒタと満たしたのであった。

妖精だった歌手たちは一転、婚礼の招待客に。ガイジン勢は紋付き袴、日本人歌手はよくあるフォーマルドレスで登場。テノールのケヴィン・スケルトンはその格好でそこここの棒をよじ登りながら「中国人の男の歌」を歌っちゃって大したもんである。(彼はダンスも得意技とのこと)
そして、留袖姿のエマと波多野睦美が二組のカップルの盃に三々九度のお神酒を注ぐという驚きのパフォーマンスまで こりもうゃ二度と見られません(キッパリ)

かくして人間と妖精、現実とファンタジーの境が融解し、何の苦しみも悩みも屈託もない幸福な世界が出現する。数百年も前に異国で人々が楽しんだと同様に、この時も劇場の客はそのマジックを楽しんだに違いない。

寺神戸亮は途中演奏しながら、クマのお面付けたり色々と指揮の合間に芝居絡んでましたな。器楽は管楽器が迫力あった。チェンバロは上尾直毅で、今回もギター抱えて二刀流だった。
テオルボの高本一郎の椅子の横にマイクがある写真をアップしてた人がいた。録音用?それともやっぱりPAシステム使ってたのか(?_?)
NHKで収録放送してくれないかしらん。過去の北とぴあ音楽祭で色々と素晴らしいステージがあったけど、一度もそういうことはなかった。音楽祭の方針なのか

歌手陣では波多野睦美が時折エマに寄り添うようにしながらもさすがの貫禄を見せていた。大山大輔というバスが、「詩人」や「結婚の神」なども演じてやたらと達者だなあと感心していたら、オペラとかミュージカルもやっている人なのね。納得です。
ダンスも見せたK・スケルトンに比べて、もう一人のガイジン組CTヒュンター・ファンデヴェンの方は冴えず。そういや出ていたなあぐらいの印象しか残らなかった。
CTと言えば、中島俊晴が大柄なオネエキャラで寸劇にも登場してキョーレツだった。

演出については、芝居部分が出しゃばらず歌手たちを引き立てるようになっていたのがよかった。演出があまりに突出してしまうと、そちらに気を取られて何を見に(聞きに)きたのか分からなくなってしまうのでね。

来年はロベルタ・マメリ参加でモーツァルトですか……。私は守備範囲外なので、1回休み
また宮城聡と組んで何かやって欲しいです。
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←照明のマジックがなくなれば、意外に素っ気ない装置だった。

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2015年12月12日 (土)

「舞曲は踊る 2」:踊る国王に聴く臣民

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没後300年ルイ14世へのオマージュ
製作・監修:浜中康子
会場:紀尾井ホール
2015年12月6日

バロックダンスを中心とし、朝岡聡が語りを務める公演。「2」とあるからには、「1」もあったはずだが、その時は他の公演と3連チャンになってしまうので行かなかったのであった。
似たような趣向、出演者のコンサートは過去に「バロック音楽とダンスで楽しむクリスマス」なんてのがありましたな。

今回は没後300年を記念してルイ14世尽くしだった。
作曲家はリュリ、クープラン、カンプラ、ルベルなど。ほとんどは当時の舞踏譜による振付である。

一番の見どころは、10代の国王が踊った「夜のバレエ」だろう。台本やカラーのコスチューム図が残されているが、音楽については第1ヴァイオリンのパート譜のみ。舞踏譜に至ってはこの時代にはまだ存在してないということだそうだ。
で、上尾直毅がアンサンブル用に曲をアレンジし、浜中康子ほか3人でダンスを復元したという。

しかし、当時12時間にわたって行われたイベントだというのはすごい。その中から国王が踊った4曲とリュリも踊った1曲が披露された。豪華な衣装も目を奪った。「情熱」というのは真っ赤な衣装で、派手の極み(!o!) ラストはもちろん、国王による金色に輝く「アポロン」である。
リュリの作曲による文字通り9人で踊った「9人のダンサーのバレエ」も迫力だった。

その他、イタリアの喜劇コメディア・デラルテを模したコミカルなものもあれば、スペイン調にカスタネットを鳴らしつつ踊る「フォリア」(曲はリュリとマレのもの)もあった。

面白かったのは、新実徳英という作曲家に委嘱したオリジナル曲で、踊りの方はクラシックバレエや社交ダンス、モダンダンスも含めて入り乱れる。バロックダンスがこんなに現代曲にピッタリ合うとはビックリした(この時はモダン楽器による演奏)

アンサンブルを支えるは上尾氏(ミュゼット、バロックギターも披露)の他、若松夏美、高田あずみ、平尾雅子、三宮正満などお馴染みの面々。フルートの前田りり子はクープランの「恋のうぐいす」を披露した。以前、近江楽堂で聞いた時とちょっと趣が違って聞こえたのは、会場のせいかしらん。

クリスマスらしい華やかな企画だった。私も国王の臣民の一人になった気分(*^_^*)
3時間近くかかったのは、曲数が多いからもあるだろうが、朝岡氏の語りが結構長かったような気がする。

紀尾井ホールは古楽系のコンサートがめっきり少なくなったせいで、1年に一度行くか行かないかになってしまった。座席が後ろ過ぎてちょっと失敗だった。
向かいにあるホテルニューオータニのクリスマスツリーの電飾がとてもキレイだったです(^^)


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2015年11月30日 (月)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 12月版

またも一年が去りゆくのであった(T_T)/~~~

*6日(日)舞曲は踊る 2 没後300年ルイ14世へのオマージュ(浜中康子ほか)*11日(金)・13日(日)パーセル 妖精の女王(北とぴあ国際音楽祭)
いよいよ来ました(*^o^*)楽しみ~♪
*18日(金)クリスマスコンサート バッハのモテット(ラ・フォンテヴェルデ)
*25日(金)木の器クリスマスコンサート(鈴木美紀子ほか)

他にはこんなのも。
*5日(土)ケルティック・クリスマス(アルタンほか)
行こうか迷ってるうちにこんな目前に……。
*6日(日)ザ・ブリューゲルバンド ヒカリエ楽団
なんと、ヒカリエ店内を練り歩きとな! もちろん無料です。
*13日(日)テレマン ファンタジーの世界(前田りり子)
*15日(火)バッハ ヴィオラ・ダ・ガンバソナタ全曲(櫻井茂+曽根麻矢子)
*16日(水)エマ・カークビーのクリスマス
今回はパスするので、行った方はぜひご感想を!
*  〃   聖夜に響くノエルの歌声(村松稔之)
*21日(月)夜のヴェネツィア…(アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア)
ガルッピはちょっと私には新し過ぎ(^^;)なんでパスします。
*22日(火)・23日(水)初期シェーカー聖歌(ウースター・グループ)
ウースター・グループは米国の前衛劇団。それが聖歌のレコードをまるごと「上演」するというのは(?_?) 興味がわくが残念ながら2日間とも行けませぬ。
*27日(日)アンサンブル・ムジカ・パレッテ
まだ、チケット買ってない

サイドバーの「古楽系コンサート情報」もご覧ください。随時更新で、今のところ来年の1月まで見られます。

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2015年11月22日 (日)

「室内楽の夕べ ダブルリード楽器の饗宴」:縦笛神降臨

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主催:木の器
会場:近江楽堂
2015年11月17日

今宵は縦笛祭りかっ(☆o◎;)と思わず言いたくなる編成のコンサートだ。
オーボエ×2本の他に、リコーダー、ファゴット、チェンバロという布陣である。こりゃ珍しい。

オーボエ担当はお馴染み三宮正満とトーマス・メラナー。そう、あの「涙のオーボエ」事件のメラナー氏である フライブルク・バロック・オーケストラの一員としても来日してましたな。

そしてもう一つのダブルリードであるファゴット奏者は鈴木禎という人。経歴のところに「『伊藤家の食卓』に空缶楽器奏者として出演」とある。空缶楽器……て何(?_?)
リコーダーと鍵盤は定例メンバーの宇治川朝政&福間彩だ。

この編成の曲というのはほとんどないので、他の楽器のための曲を編曲したということだった。
まずは小手先調べというわけではないだろうけど、宇治川氏もオーボエを吹いて、リュリの短い器楽曲から開始。
ボワモルティエの協奏曲、ルイエのリコーダーソナタと続く。後者は宇治川+福田ペア二人だけのソナタ。わざとさわやかな曲を選んだということだった。その理由は、次の曲が濃いせいだからである。

その濃くて熱い曲とはゼレンカのソナタだった。声楽曲の方で有名なゼレンカだが、当時彼がいた宮廷には優れたオーボエ奏者が二人いて、彼らのために書いた曲なのだという。(三宮氏談)
リコーダーが抜けて4人での演奏で、なるほど神技オーボエが炸裂という曲だった。オーボエ二本なので神技も二乗である。4つの楽章とも速いさらに長い 
三宮が突撃すればメラナーも負けじと肉迫という感じ。さらに二本に挟まれたファゴットも黙っちゃいねえ~<`ヘ´>とばかりに吹きまくりだ。す、すごい。
ゼレンカのソナタ自体、生で聞けることは滅多にない--というか、録音さえも少ないのでは? 加えて、目の前でバロック・オーボエ二本炸裂というのはさらに聞ける機会はさらに少ない。もう今後、耳にすることは二度とないだろうってなぐらいだ。

怒涛のような縦笛アンサンブルが終了すると、会場からはホ~~ッとまるで自分で吹いていたかのようなため息がもれたのであった。

休憩をはさんで次はリコーダーが中心のヴィヴァルディの協奏曲。そして、オーボエ主体のヤニチュのソナタと続いた。こちらは時代的に古典派に入るような人なので、いかにも典雅かつのんびりした印象のリラックスした曲だった。

そして、テレマンの四重奏曲で終了。本来はフルート二本のところをオーボエに変えたとのこと。

アンコールの二曲目として、シャルパンティエのテ・デウムから短い曲をやったが、なんと宇治川氏はオーボエ→ソプラノリコーダー→ソプラニーノリコーダー(だよね?)と、3本も持ち替えて吹いたのであった。アッパレである。

ということで、神技の顕現を目撃できて超が付くぐらい満足できたのだった。しかし、他の古楽系コンサートと重なったせいか、やはり満員とはいかないのが残念であったよ。

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2015年11月 7日 (土)

福沢宏ヴィオラ・ダ・ガンバ リサイタル「マラン・マレ ヴィオル曲集第3巻」:リュートの行方

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会場:淀橋教会小原記念聖堂
2015年10月22日

同タイトルのCD発売記念コンサート。
共演はもう一人のガンバ武澤秀平、リュート野入志津子、チェンバロ山縣万里という顔ぶれだった。

過去に、この会場でアンサンブル公演を聞いた時、やはりリュートは同じく野入女史だったが音がほとんど聞こえなかったことがあった。それで今回はリュート寄りの場所に席を取ってみた。

曲集第三巻はマレ55歳の時に出されたものだという。まさに円熟期の作品。この晩の演奏もそれにふさわしいものだった。
通底担当の武澤氏との師弟共演も、当然ながら息がピッタリ。他の共演者たちも含めて一体となって渋~いマレの世界を作り上げていた。

ただ、席の位置にもかかわらずリュートの音は聞こえづらかった(~_~;) 会場の特性もあるのかね。今度は真ん中あたりを狙ってみるか。

ところで、開場前に整理券を配っていたのを直前になって気付いて、慌てて貰いに行ったのだけど、いざ入場の時はその番号をチェックしなかった(@_@;) なんなんだよ……

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2015年11月 1日 (日)

「イタリア歌曲集 優しい森よ」:なぜか回想モードに

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歌曲の変容シリーズ第10回
演奏:波多野睦美ほか
会場:王子ホール
2015年10月20日

同名のCDに基づいたコンサート。
私は門外漢なので全く知らなかったのだが、「イタリア歌曲集」というのは声楽家を目指す人にはよく知られた楽譜集らしい。17、18世紀のアリアや歌曲をピアノ伴奏で歌えるように編曲したものとか。
これはそこでお馴染みの曲をオリジナルで歌うというものである。

前半は初期バロック、後半は中・後期バロックの曲、と分けてを取り上げていた。
前半ではやはりモンテヴェルディの「アリアンナの嘆き」が力唱というべき。歌の内容もあいまって、怒涛のように激情が伝わってくる。
チェスティのオペラ『オロンテーア』からの曲もあって、何気に懐かしい。今を去ること××年前、国立音大でこのオペラを上演して、その時に波多野女史は「男装した女奴隷」の役をやってたのを見たのが初めてだったと思う。(この日取り上げた「あのひとに」という曲はその時には歌ってないが)

後半はスカルラッティ祭り--というほどではないけど、A・スカルラッティの曲が大半だった。そして、ヘンデル定番「泣かせてください」で締め。
薄青緑のドレスだったのを休憩後、真紅のドレスで登場した時は会場がざわめいたでしたよ

波多野女史は昔とかなり歌唱スタイルが違ってきたなあとしみじみ感じた。よりドラマチック度が増してきている。分岐点は、やはりR・マメリと共演した頃か。
ただ、この日はちょっと喉の調子が万全ではない(?_?)という印象も受けた。

通奏低音は西山まりえ(ハープ、チェンバロ)と黒一点の懸田貴嗣(チェロ)で、ごくろーさんでした。
ヴァイオリンの川久保洋子中心の弦楽隊も着実な演奏だった。


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2015年10月31日 (土)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 11月版

粛々と冬が近づいてきます

*17日(火)室内楽の夕べ ダブルリード楽器の饗宴(木の器)
オーボエ、ファゴット、リコーダー夢の共演。縦笛ファンは是非どうぞ。目指せ近江楽堂満員。

なんと今月チケット獲得しているのはこれだけ(!o!) 芝居数本の予定を入れちゃったもんで……
他にはこんなのもあり。

*4日(水)マラン・マレ連続演奏会(櫻井茂+桒形亜樹子)
*14日(土)バロック音楽のひととき(大塚直哉)
チェンバロ演奏とお話で千円ナリは安い。羽村市近隣のバロック・ファンは参集すべし。
*15日(日)ヘンデル メサイア(渡邊順生)
*17日(火)モンセラートの朱い本(ラ・ヴォーチェ・オルフィカ)
*21日(土)華麗なるバロック・オペラ(ジョン・エルウィスほか)
*  〃   D・スカルラッティ 悲しみの聖母(エクス・ノーヴォ)
*27日(金)タブラトゥーラ
*28日(土)ヴェルサイユ楽派、栄光の始まり(アトナリテ・クール)
*  〃   ドイツ・バロック 華やかなるフィグレーション(菊池かなえ&ミケーレ・ベネッツィ)

北とぴあ国際音楽祭開始ですよ。
28日の「ららら♪クラシック」はパイプオルガン特集。また、29日にはNHK-BSで「アルチーナ」の放送予定あり。これは録画保存案件ですね。

サイドバーの「古楽系コンサート情報」もご覧ください。随時更新で、今のところ来年の1月まで見られます。

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MUSEパイプオルガン特別講座 第2回 「オルガンの歴史、時代と楽器と作品」:素人はオルガンのストップに頭ぶつけて玉砕

講師:松井直美、梅干野安未
会場:所沢ミューズ キューブホール
2015年10月18日

所沢でパイプオルガンの講座がある、筆記具持参ということで、かなり勉強になりそうということで、第1回目は行ってないのだが、あえて参加してみることにした。歴史や楽器についてよく知らないので知識を深めたいというのもあった。

市民講座みたいな内容かと思ってたのだが、実際に行ってみたら全く違った(!o!)
ミューズでは以前、実際にオルガンを演奏する人に対して連続講習会みたいのをやっていて、要望があったのでその講義部分だけもう一度再開することにしたのだという。

で、配られた資料を見るとトーシロにはほとんど分からないような詳しく濃い内容で、思わず冷汗がタラ~リと流れるのであった。
しかも、休憩10分入れて3時間強と、長さの方もかなりなもんだ。
それをスクリーンにオルガンや教会の写真などを映し、CDもちょこっと流しながら講師二人が話すという次第である。

国別に時代ごとに有名なオルガンやビルダーを辿っていく。私はここで、ストップというのは鍵盤ごとにあるのだと初めて知った
……(>_<)キャーッ、無知な私を許して。

イタリア、スペイン、フランスと進んできて、私はここでかの国ではフランス・バロックとは言わず「フランス古典音楽」と呼ぶのだと初めて知った
……(>O<)ウギャーッ、無知な私を許して。

しかし、フランスを時代ごとに分けて詳しくやり過ぎたのか、時間が足りなくなって肝心のドイツが駆け足になってしまったのは残念無念である。
オランダでは北部がカルヴァン派のプロテスタントが主流だったので、オルガンは教会ではなく市の所有するものだというのは初めて知った
……ウ(以下略)

とにかく、オルガンが非常に複雑で、国・時代どころか個々の楽器ごとに全く違うというのだけは理解できた。人間の歌手の声が皆違う以上に異なると言ってよい。

かように高度な内容だったが、最後の質問コーナーで初歩的な基本事項を質問してた人がいたので、シロートは私だけではなかったと安心したのであったホッ

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