「ブランカニエベス」:白雪姫の黒い夜
監督:パブロ・ベルヘル
出演:マリベル・ベルドゥ、マカレナ・ガルシア
スペイン・フランス2012年
『アーティスト』同様、モノクロ&サイレントの新作。しかし、その内容は極めてダークである。
舞台は1920年代のスペインで闘牛士業界(?)で、ストーリーは「白雪姫」を下敷きにしている。
名闘牛士の娘が産まれた早々に母を亡くし、その後に来た継母にいぢめられ、殺されそうになる。記憶喪失状態になって逃げた先が、各地をドサ回りをする小人の闘牛士団という次第。
装丁やデザインに極めて凝った幻想小説系の書物を繰っているというイメージである。見ている間、モノクロでも(いや、モノクロゆえか?)あまりに「濃ゆい」ので息が詰まってくるような感覚にとらわれた。
この息詰まるような美意識に乗れない人間は映画内からはじかれてしまうことだろう。
しかも、予告では結構時間を割いていた女闘牛士の場面は、なかなか出て来ないで後半にだいぶ入ってから登場するのだった。それまでの「継子いじめ」の部分がかなり長くて、それだけでもイヤ~ン(+_+)な気分が横溢だ。
そのように全編濃密でダークなのに、結末はそっけなく観客がボーッとしていて体勢を立て直す前に終了してしまう。ただし皮肉で残酷で救い難い結末である。
あのラストの「涙」の意味については、見た人それぞれの解釈が分かれるだろう。
ただ、分からないのは継母の意図である。彼女は何をしたかったのか? 財産だけが目当てだったのかね。それだったら、マスコミに出たりしないはず。若さと美か?
自らが闘牛士になれない女として目指すのは、当然最高の闘牛士の妻になることであろう。最初の夫に飽きたら、次々と若い闘牛士をゲットしていくしかない。さもなくば雑誌(マスコミ、世間)の注目を維持するのは難しい。しかし、彼女はそうはしないのである。
ヒロイン役は子役と大きくなってからのマカレナ・ガルシア、共に美人です それ以外に注目はなんといっても雄鶏のレオ(でいいんだよね?)である。鳥類の演技としてはヒチコックの『鳥』以来の名演といっても過言ではあるまい。
【関連リンク】
《Music for a while》より「Blancanieves ケレンミとスタイルのよさで魅せる無声映画」
暗黒度:10点
後味度:6点
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