「ギリシャ悲劇 王女メディアの物語」:歌のないオペラ
演出・出演ほか:たいらじょう
演奏:セバスティアン・マルク&アンサンブル・レ・ナシオン
会場:東京文化会館小ホール
2014年2月1日
たいらじょうという人は人形を操りながら一人芝居をしているとのことである。エウリピデス原作の「メディア」というより、共演するアンサンブルに惹かれて行ってみた。
面白いのは人形や舞台装置をすべて段ボールで作っていることだ(!o!) 当日は撮影禁止だったので、梅岡氏のブログをご覧下せえ。とても段ボールとは思えず、その造形は驚異的である。
特にヒロインであるメディアはそれほど素材を使ってないのに、何やら女王然とした威厳が漂ってくる。
休憩を入れてなんと3時間 この長丁場を一人(と黒子3人)で演じるのは大変だ。
見終わった後の感想は--歌のないバロック・オペラだということである。ギリシャ古典を題材にしているし、人形たちの所作はバロック・オペラを想起させるものである。歌うはずのない人形から歌が聞こえるような気がする。
それは総勢8人のアンサンブルの功績もあるだろう。曲の構成はバロックの様々な作曲家の作品を少しずつつなぎ合わせている。冒頭と最後のテーマ曲はリコーダーの音も鮮やかなテレマンの協奏曲だし、その後シャルパンティエ、ヴィヴァルディ、ラモー、パーセル、リュリなど、なんとバッハも一曲だけ登場していた。
「ラ・フォリア」(ヴィヴァルディ版)は非常に怖かったし、メディアの心象を描くN・マテイスのアリアには泣けた(ToT)
終盤のイアソンがメディアの部屋を覗く場面は、ドアを開けたらなんと妻はモンスターになっていた(龍と合体だ)……これまた恐ろしくてビックリ。この場面ではやはりヴィヴァルディの「夜」が使用されてた。
各場面にピッタリの音楽を選んでいたのは監修のS・マルクと宇治川朝政・福間彩ペアだろう。
実際の演奏も大いに聞きごたえあるものだった。できれば、同じメンバーでステージに上がってコンサートやって欲しいくらい。
マルク氏はフルートやパーカッションも担当しつつ、宇治川氏と共に高技術なリコーダーを披露してくれたし、宮崎容子を始めとする弦楽陣も感情の波を的確に表現。また、チェロ懸田貴嗣ほかの通底部隊も音楽をガッシリと支えていた。
ただ、問題は一人芝居で多数の人物を演じて人形を操っているので、せわしなく大変そうで、見ている側が段々と苦しい気分になってしまうことである セリフの間違いや音楽の出のフライングなどもあった。
これは仕方ないことですかね。とはいえ、また見てみたいとも思う。
座席は真ん中あたりにしたのだが、文化会館小ホールというといつも音楽系ばかりだから気にならなかったが、段差がないのでステージ上が見にくい(+_+)
後ろの方の段差がある席を選べばよかったと後悔した。
ところで、小ホールの入り口前のスロープは全くもってバリアフリーではない。角度が急なので、年配の足の悪い女性が手すりにつかまりながら必死に上っていた。
東京を代表するようなホールなんだからなんとかしてくれい
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