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2014年4月29日 (火)

「ナイン・ドラゴンズ」上・下

140429
著者:マイクル・コナリー
講談社文庫2014年

刑事ハリー・ボッシュを主人公とするシリーズとしては久し振りな感がある。さらに前作の『死角 オーバールック』は様々な作家の作品を集めたシリーズか何かの一冊とあって、エンタメ色が強く一冊本で長さも短い(^^; あれは番外編と言っていいだろう。

本の帯には「ボッシュvs中国系犯罪組織!」と書いてある。今回はチャイニーズ・マフィアものかーと思いつつ、マフィア系の話はあんまり好きじゃないんでそれほど期待せずに読み始めた。
かつてちょこっとだけシリーズに登場したことがある中国系酒屋の老店主が、店で射殺されて発見というのが発端となる。中国系マフィアとの関わりをを捜査し、容疑者を特定したところでボッシュの元に、香港で暮らしている娘が誘拐されたという脅迫が届く。

上巻の中盤あたりで予想外の事件が起こり、あっと驚かされる。そしてさらに終盤では全てがひっくり返るような怒涛の展開となる。
常に正義の側に立つと自認する孤高のヒーローが家族を守るべく立ち上がる、というのはよくある設定だが、この作品では「守るべき家族を持つ」という負債が自らに最後にドッと押し寄せるのだった。
その原因の一端にボッシュが抱くある種の偏見(その何割かは読者も共有しているはず)にあることも、さりげなく描かれている。
それと、娘の年齢の設定もうまい。10歳ほどの子どもでもなく、16歳ほどに成長もしていないのだ。

これらのことは地の文には明確に述べられてはいない。従って、表層的には単にチャイニーズ・マフィアとドンパチする活劇のように読むこともできる。
しかし、ここに描かれているのは失墜する英雄であり、この後も長く彼の前に伸びゆく昏い影なのだった。

さて、この話の設定はリーアム・ニーソン主演の大ヒット映画『96時間』に似ているような気も……。もっとも私はこの映画を見ていないんで不明である。
映画の方の公開が一年早いので、ヒントにしたのかもしれない。

ボッシュはもいい年齢のはずだが、定年はいつなのだろうか? イアン・ランキン作のリーバス警部シリーズでは、似たような境遇の主人公は定年退職で終了してしまった。人物に歳を取らせないという手法もあるが……(^^?)

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