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2014年5月17日 (土)

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2014 リチェルカール・コンソート

140517
会場:よみうりホール、東京国際フォーラム・ホールD7
2014年5月3~5日

今年のLFJは10回記念ということで、10人の作曲家とその「お友達」一人ずつという特集だった。バロック系はヴィヴァルディ(&バッハ)で、しかも純正古楽団体はリチェルカール・コンソートのみ。まあ、毎年古楽はこんなもんだろう。でも、ラッスス&パレストリーナぐらいあってもいいと思うが(一体誰が聞くんだ)。
彼らは3日間とも昼間に、異なったプログラムをやったので、結局毎日出動する羽目になった。

毎年来日の度に編成が違う彼ら、今回はP・ピエルロ(ガンバ)、フランソワ・ゲリエ(チェンバロ)、マルク・アンタイ(トラヴェルソ)、ルイス=オタビオ・サントス(ヴァイオリン)というアンサンブル体制であった。サントスという人は最近の彼らの録音ではヴァイオリンのトップを担当しているもよう。外見はジョージ・クルーニーを細面にしたような印象だ(特に眉のあたりが似ている)。


★5月3日(土)よみうりホール

この日は全ヴィヴァルディ・プログラム。冒頭のトリオ・ソナタRV67は一瞬、クープランとか思っちゃったぐらいにフランス味が濃い味付けとなっていた。チェロでなくてガンバだし、トラヴェルソが入っているせいか。
後の曲も典雅な成分が多い演奏で、近年のイタリア過激派を愛好している人には物足りなく聞こえたかもしれない。

アンタイは「忠実な羊飼い」で妙技を聞かせたが、これって偽作ということに確定したんじゃなかったっけ? プログラムの紙にはヴィヴァルディ作として載っていた。

会場は千人強収容の多目的ホールで残響が少なく、あまり音楽、特に古楽には向いていない。そのせいかピエルロがガンバで弾いたチェロ・ソナタは全く冴えない音だし、そもそもよく聞こえなかった。
ラストの「ラ・フォリア」もパンチが欠けた演奏となった。別会場と比べると、どうやら低音がほとんど聞こえてなかったようだ(少なくとも私の席では)。
チケット完売のはずだったが、2階席では空席が結構あった。何者かが買い占めてたのか?

カーテンコールでゲリエが花束を貰っておしまいとなった。


★5月4日(日)ホールD7

会場は221席という小ぶりで、ちゃんと傾斜が付いている。とはいっても、音楽向きではないのは同じで、ほとんど残響がなく、どうも壁が雑音を吸収する仕組みなんでは?と思えるほどだった。そう感じたのも、開演直前の客席が、完全にシンと静まっていたから。普段のコンサートだとそんなことは滅多にない。
昨日はさすがに子ども連れが何組かいたが、この日は大人ばかりだった。

今度はオール・バッハ--というか「音楽の捧げもの」全曲演奏だ。
テンポはクイケン・アンサンブルとアンサンブル・アウローラ(非常に速い!)の録音の中間ぐらいか。
ゲリエが最初の「3声のリチェルカーレ」を弾き始めた途端、昨日はチェンバロの低音が全く聞こえてなかったのに気付いた。トホホである。さすがに小さい会場なので、ガンバもよく聞こえた。

全体的には、派手でも地味でもなく退屈でもない、一種奥ゆかしさと粋が感じられる演奏だった。
興味深かったのは、確かゲリエが「6声のリチェルカーレ」を弾き終わった後、チェンバロの弦の鳴りが完全に止まるまで、他の3人がじっと待っていたことである。止まってから、おもむろに楽譜をめくって楽器を構えたのだった。残響の終わるまでが曲であると考えているようだ。
もっとも、私は後ろの方の列だったのでその残響音はほとんど聞こえなかったのだが。

トリオ・ソナタでのアンタイのコロコロ転がる笛の音に、つくづく「ああ、もし近江楽堂で彼の演奏を聞けるなら一万円払ってもいい」などと思ってしまうのであった。


★5月5日(月)ホールD7

U岡氏のブログには「時間に大らかな性格は相変わらずで(笑)」とあったが、確かに5分遅れで始まった。LFJでは5分でも大変だ~。

この日はヴィヴァルディとバッハの曲を交互に組んだ内容だった。
ヴィヴァルディのトリオ・ソナタと「忠実な羊飼い」は一日目と同じ。バッハ作品については、プログラムには「トリオ・ソナタBWV1029」となっていたが、ガンバ・ソナタに変更された。
昨日がチェンバロのゲリエを引き立てるようになっていたので、今日はピエルロとアンタイの職人芸的演奏を味わう構成のようだった。

ラストは昨日と同じ「音楽の捧げもの」からのトリオ・ソナタだったが、4人の演奏は全くの完璧なアンサンブルを成し、誰かが突出したり引き下がっていたりせず、対等で瑕疵もなく余計なものが何一つない完全な音宇宙を作り上げていた。私は恍惚として聞き入った。こんな奇跡のような時間は滅多にあるものではない。

会場は昨日同じで列も同じ後方だったが、左右に動いただけでだいぶ音の聞こえ方が違ってしまった。やはり音楽専門ホールだとどこの席でも同じように聞こえるようになっているのだと感じた。

さらに近くにいた若い女性がなんと曲間とはいえ演奏中にカシャカシャと写真を撮ったのには驚いた(!o!) 明らかにゲリエを狙っていたようだ。(もちろん撮影は禁止になっている)
彼女は途中で何度もバックを落とし、厚底サンダルを座席の仕切り板にガタガタぶち当てては雑音を発したのだった。周囲が静かだから余計に響くんである。
もっとも、音が響くのは東京国際フォーラムが「安普請」のせいもある。普通のホールだったら、バッグ落としただけでうるさくはならないだろう。


グッズ売り場や屋台周辺をぶらついてみたが、なんだか以前より人が少ないような気がした。もっとも、公式発表では去年よりも多いということだから、丸の内や大手町に分散したのだろうか?
来年のLFJについては結局発表なし。上記リンクのU岡氏のブログに「来年のこの音楽祭、噂では我々を喜ばせてくれる特集との事で大いに期待出来ますのでお楽しみに」とある。ということは楽器別特集かな(?_?)
まあ、古楽系のプログラムがあれば文句はありませんよ、ハイ。


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