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2014年6月29日 (日)

「ある過去の行方」:人生、表あり裏あり

140629
監督:アスガー・ファルハディ
出演:ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム
フランス・イタリア2013年

今や「次作が最も気になる監督」の一人として注目のファルハディの新作は、故国を離れたフランスを舞台にしている。やはり複雑な思惑を抱えた男女の物語だ。
セリフだけでその複雑な設定を分からせる手腕はお見事。もっとも、それだけにボーッとして見ていると何がなんだか分からなくなる危険性もありだ。

「表」の物語をたどれば、こうだ。ヒロインのマリーは若い頃に結婚した前夫との間に二人の娘がいて、今はイラン人の夫サミールと別居状態である。彼女が現在付き合っている恋人と結婚するために、サミールが離婚届にサインしにイランから戻ってくる。
しかし、恋人の男には実は妻がいることか判明する。

相手を次々と変え、子どもの反対を押し切って男と再婚を図り、さらに男の妻の自殺に関わっているか疑わしいマリーは計算高いイヤな女に思える。
しかも、彼女の娘たちはサミールの方を慕っているのだ。ただし、恋人の息子はマリーになついているようである。

しかし、そのままマリーを悪女として受け取ってよいものだろうか? すべての出来事には裏があるようにも見える。見た通りのものは何一つない。
恋人の男と入院中の妻は以前から関係が悪化していた? 果たしてメールを妻は読んだのか読んでないのか。マリーはまだサミールに気があるのか。
長女が頑固に再婚に反対するのは男が手を出したのではないか? サミール(と観客)はそれを一番に想像して遠回しに彼女に尋ねるのだが、キッパリと否定する。しかし、男との二人きりの場面では彼の態度は限りなく怪しい。そもそも妻とマリーと長女はかなり似ているのだが。
語られてないことは山ほどあるようだ。

ファルハディ監督の作品は前々作前作と描かれる関係はますます複雑になり、それだけ晦渋さも増しているようだ。見ているとくたびれてくる感がある。
劇伴音楽もないし、このまま行くとM・ハネケの域に近くなりそうだがあのイヤミさはない。相変わらず子供の描き方はうまい。

この監督のさかしげな部分を嫌う人も多いようである。まあそれは好みとしか言いようがないだろう。
新聞に載ってたインタビューによると、またイランに戻って映画を撮るそうだ。『別離』は一時製作許可を取り消されたりしたが、アカデミー賞を受賞したら政府は態度を180度変えたという。どこの国もお上ってのは同じですな(^・^)

ベレニス・ベジョはカンヌで女優賞を晴れて受賞。イライラした葛藤を常に抱える女を好演しております。長女役のポリーヌ・ビュルレは超美少女。これからが楽しみでやんす。


表度:6点
裏度:9点


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コメント

この映画、ハネケの「隠された記憶」にどこか似た匂いがするなあ、と思いました。意外な人物が関わってる事件・過去がだんだん明るみになるような展開で。でも、主人公(いったい誰が本当の主人公なのかも微妙ですが)や登場人物の属する階層がプチブルやインテリばかりのハネケ作品とは異なり下層の移民なので観客の同情を買う設定が巧い。いやな女役はベジョに任せて、男性陣は得してる。そして、ラヒム君のキュートさにとろけてしまいました!

投稿: レイネ | 2014年7月 1日 (火) 04時55分

日本だとあまり観客の同情はかってないようです(^^;)
家族のあり方が日本人の想像のはるか彼方だからでしょう。
それにシングルマザー(まだ離婚していないとはいえ)で、市街地に庭付きの家を持っている(賃貸かも知れないが)というのは、日本だとかなり収入が多くないと無理、というのもあるかも。

投稿: さわやか革命 | 2014年7月 2日 (水) 06時36分

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