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2014年8月21日 (木)

「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」:分岐点の人々

監督:ピーター・ランデズマン
出演:ジェームズ・バッジ・デール
米国2013年

ケネディ暗殺ネタの映画となると、陰謀論とか真犯人は他にいるなどとその真相を探るというような内容を思い浮かべるが、これは完全に別の視点から捉えたものだ。
暗殺後の4日間、その死の影響を期せずしてこうむった平凡な人々を群像劇として描いている。

大統領の姿を8ミリで撮っておこう(^・^)ワクワクのはずが一転「決定的瞬間」を撮影してしまった服飾業者、ケネディが運び込まれた病院のスタッフ、犯人のオズワルドに接触していながら看過してしまったFBI支局員、さらにオズワルドの家族……。

これらがドキュメンタリー・タッチで淡々と続く。
知らなかったエピソードも多数。ジャクリーン夫人は吹き飛んだ夫の「頭蓋骨」(とセリフにあるが、実際は脳ミソの一部であろう)を大切に手に持って、病院の手術室まで運んできたとか。大統領専用機が狭くて中に棺を入れられず、仕切りの壁をブチ壊したとか。地元のダラス警察とシークレット・サービスの縄張り争い勃発。もはや大統領夫人でないジャッキーをSSが警護するべきかどうか当惑。お宝8ミリ映像を求めてメディアが撮影者に殺到……。

しかし、最も重心を置いて描かれているのは、オズワルドの兄である。平凡な勤め人だったのが事件後は状況一変、警官からは名前を変えて他所の土地へ移るように勧められる。それからまた、母親がキョーレツな猛母というか毒母なのだ。思わず逃げ出したくなるくらい。

オズワルドが移送時に撃たれて担ぎ込まれたのは大統領と同じ病院(「パークランド」とは病院の名前)だった!というのが驚き、というか皮肉というか。彼は同じ手術室に運び込まれ、手当てを受け、そして死ぬ--。
その後、大統領と犯人の葬儀が同じ日に行われるのを、交互に描いていく。これまた偶然に、オズワルドにも幼い二人の娘がいるのだった。
荘厳で全国が見守る大統領の葬儀に対し、オズワルドの方は聖職者も来ず、粗末な棺を運ぶ者さえもいない。兄が、取材に墓地まで来ている記者たちに頼み込む始末である。荒涼とした墓地で、スコップで土をかける彼の孤独な姿は印象的である。

この究極の対比に、見る者は何かを感じずにはいられないだろう。同じ歴史の分岐点に立ちながら、その流れは名もなき人々を飲み込んでいく。

正直、見るまではそれほど期待していなかった作品だが、正反対の方向に期待を裏切ってくれてヨカッタ

地味な作品の割には何人も名優が出演しているのも特徴だ。
ジャッキーから脳ミソを渡されても動じずに対処したベテラン看護婦長役のマーシャ・ゲイ・ハーデン、8ミリのせいで渦中の人になってしまい動転する服飾業者はポール・ジアマッティ、いずれも実力を感じさせる演技である。
毒母のジャッキー・ウィーバーはキョーレツの一言だが、寡黙な兄役のジェームズ・バッジ・デールも好演だろう。
他にビリー・ボブ・ソーントン、ジャッキー・アール・ヘイリー、ザック・エフロンなど。


大統領度:5点
庶民度:9点

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